「坂本正直―平和への祈り―」という展覧会が5月15日、宮崎市船塚の宮崎県立美術館県民ギャラリーⅠ、Ⅱで始まりました。
坂本さんは1914年宮崎市に生まれ、旧制宮崎中学校卒。中国大陸や台湾へ応召。復員後は、宮崎県の中学校の教師をしながらモダンアート協会展などに出品。宮崎県文化賞、宮日美展無鑑査など。宮崎を拠点に旺盛な絵画制作を重ね、2011年97歳で死去。生涯にわたって描き続けてきた最大のテーマが「自らの戦争の意味を問い続けること」。坂本さんは馬や樹木などを含め古里の素朴でおおらかな自然や人々、その生活を愛しましたが、その坂本さんが赴いた戦場での過酷な状況と、異常が次第に日常化する怖さ。自分への問いかけや、鎮魂の思い。ライフワークとして取り組んだ「クリークの月」「戦争-人間が人間を」「手榴弾-めしを食いつつながめていた」などの厳しい戦争シリーズを中心に多くの作品を残しました。
会場にはこれら大作のほか、抽象的な馬のシリーズや自画像、経典を求めて旅をした三蔵法師シリーズ、教職時代の子どもたちの手紙、坂本さんを撮った写真作品などの資料などが会場にずらりと並び、魂に迫る深い思いがあふれる展覧会となっています。
実際、戦争の中に身を投じ重く厳しい記憶の層となって私たちの前に現前する作品たち。坂本さんが生きていれば、今の時代の状況をどう感じるでしょうか。「平和」の意味を問う展覧会として、また、坂本さんが心をくだいていた人権、差別などの課題がなお山積する現在、多くの人に見てもらいたい展覧会と思います。 あっけらかんとした人間性に富んだ明るい性格、笑顔。坂本さんの人柄を知る筆者にとっては、また違った懐かしさを覚えますが、これらの作品はある意味時代を知る、後世に伝えるべき貴重な作品群と言えます。これらの作品が散逸することなく残る工夫をみんなで考えてほしいと願っています。
展覧会会期は5月26日まで。この間、関連イベントとして▽総合工作芸術家 だるま森+えりこによるヘンテコARTな2日間・5/18(土)14:30-15:30人形ART「だるま森の音語りライブ-カリカリ砂漠の夜は更けて」(同館アートホール)・5/19(日)13:00-17:00「だるま森のヘンテコお伽小屋」で楽器づくりと人形劇(総合文化公園)▽5/25(土)11:00-12:19映画「ちづる」、13:00-14:41映画「蟻の兵隊」上映(アートホール)があります。
始まった展覧会会場
「坂本正直-平和への祈り-」展ポスター