人の世は、滞在期間の定め無き、今日一日の旅の宿

 時 人を待たず、光陰 惜しむべし
 古より有道の人、国城 男女 七宝 百物を 惜しまず
 唯 光陰のみ、之を惜しむ

仏の処・魔の処

2012-11-06 | 日記


何かを、もらった、してもらった。

それを縁に、感謝の気持ちが起こった。

何かを、もらえなかった、してもらえなかった。

それを縁に、不満の気持ちが起こった。

感謝は幸福感を与え、不満は苦痛の種となる。

幸福感をもたらすものが、価値あるものとなり、

苦痛をもたらすものは、避けられるものとなる。

感謝や不満が起こる依り処は、別々の心ではない。

一つの心の模様が、縁に依って移ろうだけなのだ。

固有の実体のない心は、空模様の様に移ろいゆく。

空模様に善悪がない様に、心に貼るラベルはない。

生得的な「私」の心、と言うものなど見当たらない。

もとより、固有の実体を持たないのが、心である。

生まれた時を知らぬ様に、死んだ時を知り得ない。

生と死の狭間の時のなかで、全ては移ろってゆく。

心は、縁に依り起滅し移ろう、縁生のものである。

無い処に何かを求め探しても、時間の浪費となる。

移ろう処に、変わらぬものを探しても無益である。

諸行の無常を覚了する処が、移ろわない処である。

雲は移ろっても、空は去らない様に、無心は不動。

移ろうものが、移ろうままの如く在る処が、無心。

感謝を眺める我を縁に、不満を眺める我が起こる。

魔の処を去るが如く、仏の処も去るのが法に適う。

喜怒哀楽に優劣はなく、全て過ぎゆく一時のもの。

幸福感は怠惰な眠りを誘うが、苦痛は覚醒へ導く。

選り好みをして我を立てれば、自ら霊性を損なう。

善と名立たる善を為せば、不善の影が付きまとう。

善と名無き善たる事は、相対の影を宿していない。