https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed1950/12/2/12_2_68/_pdf/-char/ja
顔面の感覚は三叉神経の支配をうけるから,
顔面の疼痛は特発性,或は症候性の三叉神経痛と称することができる。
特発性のものは三十歳以後の年齢で, 血圧の高いものに多いが,
症候性のものはあらゆる年齢に来る。
疼痛の範囲は特発性のものは多くは片側, 症候性のものは屡々両側,
疼痛の性質は特発性のものは発作的で間歇があり 知覚障碍を伴なわないが,
症候性のものでは 疼痛は持続的で知覚障碍を伴なう。
特発性三叉神経痛の原因は明かでないが, ガツセル氏神経節 及び神経節後線維が傷害される。
症候性のものは急性,或は慢性伝染病,新陳代謝障碍,内分泌障碍,中毒,歯牙或は顎部の疾患, 副鼻腔の炎衝,
頭蓋底の炎衝, 新生物等によつて神経節前神経が侵されて起る。
特発性神経痛の場合, 疼痛発作は突然に起り,劇しい疼痛を顔面, 即ち頬部,顎 部,或は前頭 部に訴える。
発作は屡々咀嚼, 談話, 振動, 洗面, 寒冷なる空気等が誘因となる。
患者の顔面は潮紅し,落涙流涎等を来す。
初期には間歇時は永いが,次第に短くなり遂には疼痛は持続的になる。
第一例
婦人,年齢は五十七才。 診断,三叉神経痛。
今より三十年前,当時大阪大学外科にヘルテルという独乙人の教授がおられて
三叉神経痛の治療を得意とせられることが評判となっていた。
この婦人も同教授の診察をうけ三叉神経痛と診断せ られたが,
同教授の治療はガツセル神経節を剔出することであったから,
婦人は手術に怖れをなして小生の所えこられたのであるが,
当時は自分も未だ経験も浅く自信がなかったか ら, いろいろ参考書を探がして,
たまたま龔廷賢の寿世保元の頭痛門に記載せる処方, 清上蠲痛湯を試みに投与した。
寿世保元は龔廷賢が万病回春を撰述してから,三十年を経て
その間に得た豊富な臨床経験を基礎として書き改めた書物であるから,
臨床的に高く評価 されるべき書物である。
この書に記載せる清上蠲痛湯を与えるには与えたものの,何の自信 もなかったから,
不安と万一の僥倖を期待して反応如何にと結果を待つていた所, 如何なる幸運か,
この処方の服用一日で疼痛は半滅 し, 三日目には疼痛は十分の一に軽減し,
発作回数も著しく減少し,約一 ヵ月の服用で完全に治癒 した。
第二例, 三十五才の婦人,■ 。
この婦人は感冒のあと,発熱,咽痛,略痰,咳 嗽等はなくな り,食欲も平常通 りとなったのであるが,
右側顔面に前頭部から頬部にかけて,鳥渡した刺戟によつて痙攣性の劇しい疼痛が間歇的に起つて,
そのため気分は憂欝,不眠,食欲不振を訴えた。之も前例に傚って清上蠲痛湯に加減して授与,
約七日にして全治。 之に類似の患者五十才の男と,四 十七才の婦人との二例があるが略す。
第三例, 七十四才の婦人。■ 。
この婦人は約二 ヵ月前より右半側の顔面の疼痛に苦しみ次第に増悪する由を,
長男の嫁が容態を委 しく述べて投薬を乞う。 よつて三叉神経痛として清上蠲痛湯を与 えたが,
三日間服用 しても無効。 よつて来診せしめて精細に診察したところ,
疹痛は間歇,発作的でなく,持続性であり,右側上顎 部に腫脹と軽度の暗紫色の着色があ り,
上顎骨の炎症なんらかと思つて, 張路玉の医通の歯門に記載されている茵陳散を湯液として与えた。
茵陳散は顎骨の骨膜炎,骨髄炎等に著効のある処方であるから,
大なる期待をもって与えたのであるが,之も亦無効。
よつて外科の専門医の診察をうけさせた所が,上顎骨の癌の疑ありとて,入院 して手術うけ目下静養中。
処 方
A : 清上蠲痛湯, 寿世保元方。
一切の頭痛の主方。左右偏正新久を問わずみな効す。
常帰 酒洗一銭 , 川芎 一銭 , 白芷 一銭 , 細辛 三分, 羌活 一銭, 独活 一銭, 防風 一銭, 菊花 五分, 蔓荊子 五分,
蒼朮 一銭, 黃芩 一銭五分, 麦門冬 一銭, 生甘草 三分, 右を〓いて一剤となし,生姜をいれ煎じて服せ。
加減法
1. 左辺痛むものは紅花 七分, 柴胡 一銭, 草竜胆 酒洗七分, 生地黄 一銭を加えよ。
2. 右辺痛むものは 黄〓一銭, 乾葛八分を加えよ。
3. 正額上眉稜骨の痛甚しきものは食積疾壅なり。 天麻五分, 半夏一銭, 山査 一銭, 枳実 一銭を用いよ。
4. 頭頂に当つて痛むものは 藁本一銭, 大黄一銭酒洗を加えよ。
5. 風が脳髄に入って痛むものは麦門冬一銭, 蒼耳子一銭, 木瓜, 荊芥 各五分を加え よ。
6. 気血両虚して常に自汗あるときは黄耆一銭五分, 人参, 白芍, 生地黄各一銭を加えよ。
https://www.kotaro.co.jp/kampo/explain/seizyokentsu-exp.html
B: 菌陳散, 張路玉医通方。
歯齦が赤腫して疼痛するを,及び骨槽風熱(顎骨カリエス)を治す。
菌陳, 連翹, 荊芥, 麻黄, 升麻, 羌活, 薄荷, 姜蚕 各五銭, 細辛 二銭半,大黄, 牽牛頭末 各一両
を散となし,毎服三銭を先ず水一〓を以て煎沸し薬を入れて攪わし急いで傾けていだし,
食後に滓に和し熱服せよ。
この菌陳散は医通の歯門に掲載されている処方で,歯痛と顎骨の炎衝に有効なりとしている。
浅田栗園先生は特に顎骨炎に対する効果を賞用しているが,
歯は顎骨内に填充されている器管であり,疼痛は何れも三叉神経の支配によるものであるから,
顎骨カリエス, 歯髄炎, 歯根膜炎, 歯根膜下膿瘍の他, 副鼻洞炎にも有効である。
但し歯牙痛の実証なるものには矢張り 寿世保元の加味清胃散を,
虚証にて歯根動揺し疹痛するときは補中益気湯に 熟地黄, 牡丹皮, 自茯苓, 白芍薬を加えて与えるとよい。
http://www.ikkando.com/bunken/futugo/futugo-50.htm
C: 加味清胃散, 寿世保元方。
一切の牙歯腫痛はみな胃経の火盛に属す。
多くは是れ辛熱厚味,及び温暖の薬を服すること過多,以て胃熱を致し上下の牙は痛み頭脳に牽引し,
面は熱しその歯は冷を喜び熱を悪むものを治す。
当帰尾 生地黄 牡丹皮 升麻 黄連 防風 荊芥 軟石膏 各等分, 右を〓 き水煎 して服せ。
加減法
もし顴額にあたって半辺痛むものは 防風, 白芷, 羌活, 細辛を加えよ。
もし牙齦脱して血の出ずるものは 扁柏葉, 黄苓, 荊芥, 梔子を加えよ。
もし虚損の人が牙歯するものは 黄柏, 知母, 人参, 甘草を加えよ。
もし満口浮いて而も痛み力して嚼むこと能わざるものは 連翹, 玄参, 芍薬を加えよ。
小児の牙疳(水癌)のときは乳母が本湯に 天花粉, 玄参,白〓を加えて服せ。
醇酒厚味のため唇歯が痛をなし,或は歯齦潰燗し, 頭面頸項に連つて痛をなすものは,
並びに犀角, 連翹, 甘草を加えよ。
胃寒して歯痛するには草豆蒄, 細辛, 防風, 羊脛骨灰を加えて,牡丹皮を去れ。
http://www.toriiyakkyoku.jp/wp/index.php/archives/3464
http://youjyodo.cocolog-nifty.com/kimagure/2008/11/----6212.html
http://youjyodo.cocolog-nifty.com/kimagure/2020/01/post-74621b.html
「 牙槽脓肿脓液排出中药治疗方法 」
https://kknews.cc/health/38mryj8.html
参考:https://wenku.baidu.com/view/3bcf85ea1b37f111f18583d049649b6648d709a7.html?rec_flag=default