呼吸に絶え間は無いが、同じ呼吸は二度ない。
吐く息の終わる処に、吸う息の始まりがある。
吸う息が起こる時は、吐いた息は滅している。
今の"い"が滅さなければ、"ま"は始まらない。
今の"ま"が起る処は、既に"い"は滅している。
新たな一念が生じる処、前の一念は既に無い。
思考、感情も、念念新たに生じて滅してゆく。
喜怒哀楽の情も思考も、常に新たに起滅する。
一切は縁起生ゆえ、自立自存の実体を認めず。
今日只今は前後を際断した、一得一失の一つ。
一得一失の処は、二見の分別比較が立たない。
二つの事実を並べ、同時に見る事はできない。
比較は、記憶に住す我の懐の観念に過ぎない。
想いも縁起生ゆえに、我を立てる以前の事実。
未だ想いを認めぬ処は、善悪是非の二見なし。
標準の立たぬ処に分別比較なく、一切は事実。
想いを対象として認める以前は、我も立たず。
我を立て、念をやり繰りしても埒は明かない。
自らの影を追うが如き処に、決着は付かない。
事実は前後際断、一切は結果として生じ滅す。
認める対象の立たぬ処に実体なく、一切皆空。
何かであろうあるまいと計らうは、顛倒夢想。
事実に二見なく、標準の立たぬ処に我は不生。
故に、「至道無難 唯嫌揀択」 と三祖は示す。
今日の縁: 『 信心銘 』
http://www.shomonji.or.jp/zazen/shinjinmei.pdf