人の世は、滞在期間の定め無き、今日一日の旅の宿

 時 人を待たず、光陰 惜しむべし
 古より有道の人、国城 男女 七宝 百物を 惜しまず
 唯 光陰のみ、之を惜しむ

唯仏与仏

2019-07-31 | 日記


https://blog.goo.ne.jp/mumei_juku/e/ab242e4b230196138d81f6e0f76381bd

方剤:呉茱萸湯

2019-07-26 | 日記


次は呉茱萸湯ですね。
これも呉茱萸湯と名付けているのは昔からあるからですね。
呉茱萸湯の本当の主役は、一番大事な薬は人参なんですね。
でも、あたかもこの呉茱萸の作用、
少なくとも呉茱萸湯を飲みたくなるときの患者さんの訴え、
医者の側もとりさげたい主症状は、
呉茱萸に一番合致するので呉茱萸湯と言います。
主として胃の症状頭痛冷えです。

この三つを訴える人は
どちらかと言うとうつ傾向の人ですね。
外来で胃が痛い、冷える、頭痛がすると訴えると、
まずうつ傾向と思いますね。
うつ傾向の人の一番典型的なものは、本来は太陰の虚です。
更に言うと太陰の中で静かなうつは虚ですね。

見ただけで悲しくて、
本当にどうしようもないんだなと分かるうつは虚なんです。
ちなみにこの虚という意味は、その人の脾が他の人より弱い、
肺が同じ様に弱いと言う意味ですね。

原因はいろいろありますがね。
生まれつきそう言う場合もありますし、非常に衝撃的な事とか
いろいろな事が、いわゆる不因外因と言われる様な事が原因となって、
こう言うようにやられてしまう場合もあるんですが、
太陰の虚で脾虚が基本にある人は、気がめいる型です。
悲しいのが虚で気がめいるのが虚ですね。

もっと解りやすく言えば
脾虚の人は心の状態をあまり言わないんですね。
悲しいとも言わないし、気がめいるともあまり言わないんですね 
身体症状だけを訴えるんです。
要するに全体的に機能が落ちているので冷えるのです。
本来はこの三つの症状を生み出しているのは虚なんですが
表に出ている症状は冷え胃痛頭痛ですので、
温めて胃痛や頭痛を取る呉茱萸と言うのを配合してあるんです。

大棗,生姜は姜棗組と言って、いろいろな処方に入っていて、
ちょっとした補養薬ですね。
大棗・生姜が入っている理由は、前に言ったと思いますが、
大棗と言うのはなつめですね。
スナックバーなんかで出てくるやつですね。
あれから種を外したのをスライスにしたのが煎じ薬に入っています。
食べると甘くておいしいです。生薬だけの焼酎漬けを作るときも、
そのままだったらおいしくないので、大棗を入れて
一緒に焼酎漬けにしますが、大棗の甘味でおいしくなりますね。

漢方薬の作られた時代と言うのは前に言ったように、
食料が安定していなかった時代ですね。
栄養失調が一番基礎にあって、いろいろな病気が出てきた時代です。
だからいろいろな薬に一応ベースのところで
大棗生姜を入れると言うようなやり方があったのですね。だから、
本来は大棗生姜が原法に入っていない処方があります。

例えば四君子湯と言うのは、
本来の薬味に大棗生姜が入って六味になっているんですね。
六君子湯は大棗生姜が入っているために八味になっているんです。
それは姜棗組がベーシックなレベルで入っているんです。

でも西洋医学的な分析をすると、
確かに大棗生姜で、プロスタグランディンが、
それがどうなったこうなったといろいろな、
そういう報告を出していますね。
だからあながち意味はなくはないんです。

でもそれだけを頭に入れておけば
大棗生姜の入っている処方は、その二つを、
だまって取り除けば理解が簡単なんです。
大棗生姜の組み合わせで入っているときは、
その二味を取り除いて考えるのです。

生姜だけの場合はそれが意味がありますけどね。
そう考えると、呉茱萸湯は呉茱萸と人参だけなんです。そして、
要するに人参の作用で太陰の虚を持ち上げると言う事なんです。

ところが、煎じ薬の人参と紅参の話をすることになります。
紅参も正官庄さんの紅参と他の紅参があるんです。
右図のように大きく分けられますがそれぞれ作用が違ってくるんです。

一番基本は、脾を補ってやると何が出てくるかと言うと、
元気ですね。元気を持ち上げる作用です。
人間が生きている中心は、生命の源は気ですね。
でもこれは生命そのものですね。これがなかったら、
命は生まれてこなかったんですが、
でも生まれてきて毎日生きていると言うのは、
食べてエネルギーを補給していることなのです。

でも食べたものの全てを、要するにいつも言っているように、
自然界の全ての気を取り入れて、
それを体全体にまわしているのが脾だから、
が衰えていて他の臓がやられていないので、
表向きは元気そうに見えるんです。でも本当の元気はないんですね。
強い症状は表にすぐは出さないんですが、だんだん
他の臓がヘタってくるんです。

その時にこの一番基本的なを補っていくのが
この人参の作用なんです。
まあ今日は八時になったのでここで終わりにしたいと思います。
この次は人参、コージン、この附近から講義を始めます。

第4回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda04.htm


https://www.kigusuri.com/kampo/kampo-care/003-3.html

方剤:桔梗湯

2019-07-26 | 日記


桔梗湯
漢方を考える意味で大切な処方です。それは桔梗湯の命名です。
後々の処方の命名は誇大広告みたいであまり当てにならないようです。
傷寒、金匱の命名は張仲景がつけたものではないだろうと思う。
その前に命名されたもののようです。

おそらく自分で考えた処方と思われるものは、薬味をそのまま羅列しています。
例えぱ、麻黄杏仁甘草石膏湯などのように。しかし麻黄湯は麻黄が主薬です。
桂枝湯は桂枝が主薬です。桔梗湯は桔梗が主薬のように見えるから桔梗湯です。
分量は桔梗2,甘草3で薬効は甘草です。

ふり出しとして使うなら甘草だけ10分ぐらい煮てそれを飲むと
ノドがガラガラになっているとき、それだけでも効きます。
しかし廿草だけなら本来は全身に効いてしまいます
桔梗はその薬効を上半身に導くのです。これを諸薬を上浮すると言います。
喉から器官の上部や口内や顔面に導くのです。
あたかも桔梗が作用する部位に効くから桔梗湯と言うのです。
声がかれている時桔梗湯をお湯で溶いて飲むとすぐ効きます。

僕の友人で東京の音楽大学のすぐ近くで開業している人がいたんですが、
歴代、あそこに行くと良いぞと言い伝えられていて、試験前になると
音楽大学の生徒が、続々桔梗湯をもらいに来たそうです。

西洋医学ではそんなに速効性がある薬は少ないあですが、
桔梗湯はかなり速効性があります。
甘草は強拍症状を緩和しますが、喉が完全にやられて、
強拍症状が過ぎて喉がカラカラになり
声が出なくなった
桔梗石膏の証になります。

石膏は陰を潤しますが、それを桔梗の作用で喉に集めるのです。
それを入れてある処方が小柴胡湯加桔梗石膏ですが、
急性期は葛根湯加桔梗石膏です。

小太郎さんに桔梗石膏があります。他に同じ処方名で
肺化膿症に効くと言われる桔梗湯という同名の処方がありますが、
後世の人がおそらく勘違いして、この桔梗湯の効能
肺化膿症と書いてある本があります。この二味の桔梗湯は
排膿作用は少しはありますが、肺化膿症に効く程ではないようです。

次回から7,8あるいは10処方ぐらいお話しします。できれば
それぐらい読んできてください。
私は主に書いてあるもの以外のことを説明します。
もう一つ別の資料(針 と漢方の統一理論)がありますが、追々説明します。
東洋医学の生理学、病理学、解剖学等の基本的な考え方、
エッセンスが書かれています。

第1回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda01.htm


https://shizennori.exblog.jp/7433200/

大黄甘草湯

2019-07-25 | 日記


大黄甘草湯
下剤は難しいのが多いのです。
調胃承気湯, 大承気湯, 麻子仁丸, 防已黄耆湯, 当帰芍薬散, 半夏厚朴湯など切りがありませんが、
一番の基本は大黄甘草湯です

大黄は大量であれば瀉薬となり、少量なら補薬となります。
寒,熱、上り下り(昇,降)は対立概念ですが、虚,実は対立概念ではありません。数直線上にあります。
古典には虚なるものは補し、実なるものは瀉すとだけ書かれています。逆かも知れない。

中医学は同じ言葉を使いますが、私のは中医学ではありません。
古方の考え方が主です。素問、霊枢、難経、神農本草、傷寒、金匱と素問、
霊枢のもとになっている大素をもとに考えます。
針の本は完全には残っていないが、針の理論はこれらの古典に生きています。

漢方では補と瀉はあたかも対立概念の様に言われますが、
針では対立概念ではないのです。
軽い刺激が補で、強い刺激が瀉と言う様に。

古方家は傷寒論に針の事が出てくるが、
あれは後からつけた紛い物だ等という人がいるが、
本当は針と漢方は一致しています。
張仲景は針と漢方を一致させてやっています。
針のことも少し出てくるが、主として湯液のことを書いているだけの事です。

明堂と言う本があったらしいが、残っている甲乙経というのはあやしい。
そんなことで針灸の本は完全には残っていません。

大黄甘草湯常用量の1/4、1/6で虚証の人に効く事があります
実証の人は、多い人では15gまで行くこともあります
これで補瀉と言うことが解っていただけたと思いますが、
大黄甘草湯は使いやすい処方です。

柴胡瀉薬の代表と言われますが、少量なら補中益気湯のように
全体として補薬になります。
その他ほとんどの薬にも同じ傾向があります。

虚,実は数直線上にあります。ただし作用部位は変わりません。
例えば、肝に作用するものが量を増やしたからと言って
脾に作用すると言う様なことはありません。

大黄甘草湯は是非使って見て下さい。意外に子供の便秘、特に
ちょうど離乳期に便秘になることが多いのですが、この時に使えます。

西洋医学では離乳期に使える下剤は少ない様です。

意外に漢方は子供に飲ませにくいと思っているお母さん方が多いのですが、
風邪等の時はただでさえ具合が悪いのに、においのある薬は飲ませにくいのです。
しかし、慢性疾患の場合、証があっていれば飲みやすいのです。

例えば治頭瘡一方は大人なら飲みにくいのですが、
乳児湿疹の子供はほとんど喜んで飲むことが多いのです。
治って来ると飲みたくなるようです。

大黄甘草湯はよく飲んでくれてよく効くので是非使って見て下さい。

その他急性疾患の場合、自家中毒五苓散ぐらいしか
なかなか飲んでもらえない。しかたなしに西洋薬を出すこともあります。

第1回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda01.htm


https://www.kigusuri.com/kampo/kampo-care/033-2.html

方剤:十味敗毒湯

2019-07-25 | 日記


次が十味敗毒湯です。
一応これは柴胡が入っている薬です。
皮膚科に用いる薬で柴胡が入っている薬は結構あるのです。
有名なものでは柴胡清肝湯、荊芥連翹湯です。
柴胡はそういうのにも入っていますけれども、これらは
もろもろの薬味の中のごく一部として入っています。

十味敗毒湯はそんなにたくさんない薬味の中の一部として
柴胡が入っているのです。
柴胡清肝湯や荊芥連翹湯の場合は柴胡が入っていても、
どちらかと言ったら主役ではないわけです。
一応、柴胡清肝湯などと書いてはありますけれども、
それは名前を付けた人の付け過ぎで、
そんなに柴胡が主役を成しているわけではないのです。

この十味敗毒湯は柴胡と書いていないけれど、
やはり柴胡の入っている薬だということですね。
だから何らかの意味で肝が絡む皮膚疾患なのです。
肝が絡むという言い方をするということは、
外因病ではないということなのです。

外因病の皮膚疾患はそんなにないのです。
外から入ってくるもので皮膚病に変わっていくのは、
ほとんど温清飲系統のことが多いのです。
他に黄耆等を主とした例えば桂枝加黄耆湯だとか、黄耆建中湯だとか、
そういうのを使う場合はあります。
あるいは薏苡仁等を含んだ製剤を使うことはあるのですが、
十味敗毒湯はまず外因病には使いません。

ただ外因病の皮膚疾患に関して言えば、
黄連解毒湯や温清飲が合う例を除けば、はっきり言って
西洋医学の皮膚科の方が上手です。外因病であれば
短期間に上手にステロイドを使った方が早くよく治ります。
外からのものですからね。短期間だったら
ステロイドの副作用もほとんど受けることはありません。必ずしも、
だらだら時間をかけて漢方治療するのがいいとは私は思いません。

でも皮膚疾患に関して言えば、患者さん自身が
外因病か内因病か分からないで来る方の方が多いのです。
というより始めからそういう概念がなくて、
とにかく皮膚に何かできていると言って来ます。
それこそ接触性皮膚炎とかそういうのを除けば、
自然に出てきた皮膚疾患は全部内因病です。
当たり前のことです。

これは先ほど内因病の話をしたように、
例えば膝関節症、あるいは五十肩というのは整形の病気だなんて
大部分の人が思っているけれど、これは立派な内科の病気ですね。
整形は外科でしょう。
外傷で肩を骨折したとか膝を稔挫したというのだったら、
これは整形の病気です。
何もしないのに自然に出てくる膝関節症や五十肩というのは
立派に内科でしょう。中から出てくる内因病なのです。

皮膚疾患もそうでしょう。
明らかにこれを食べると自分は蕁麻疹が出るのだというなら、
これは外因病なのです。
有害物質など、そういうものを食べたら
誰だってやられるでしょうという物を食べてやられるのも、
これも外因病です。
でもごく普通にやっていて、たとえ食べ物でやられるのだとしても、
ほかの人は大丈夫なのに自分にはおかしくなるのだとなると、
これはやはり内因病に近くなるのです。
そして食べ物にも何も関係なしに、
何か分からないけどとにかく出てくるといったら、
これはもう完全な内因病です。

その中で、
が争っている状態のときに十味敗毒湯になるのですが、
実際はこれをとらえるのは難しいのです。
脈なんかでとらえる方法もあるのですが、実はまだ私も、
皮膚疾患に関しては完全につかみ切れない面があるのです。

脈診、舌診とかいろいろ言いますが、なぜか皮膚疾患に関しては
皮膚の視診が大切です。皮膚の視診というのは
望診ではなく皮膚の切診ですね。じっと見るというのは切診なのです。
皮膚を視診することの方が大切です。皮膚に何かが出ていて、
例えば十味敗毒湯の人だったら必ず肝の脈証が出ているかというと、
意外と出ないときの方が多いのですね。皮膚疾患はなぜかそうなのです。
一番体の表面で反応して、処理してしまうので、
脈に影響を与えにくいのかもしれません。
皮膚疾患に関してだけは脈診をあまりやることがないですね。
皮膚の見た目でほとんど診断します。

ただ柴胡が入っている意味というのは、
本質的には内因病であるぞということです。そして多分、
この付近()が問題になっているのだというのを意識すれば
いいというだけで、柴胡が入っているからにはまず
外因病には使わない薬だなと思っていればいいのですね。

十味敗毒湯の湿疹の特徴というのは、慢性の湿疹でありながら、
拡大するとこういう感じでアイランド状を呈します。
アイランド状をしている発疹の間に完全に健常部分があるのですね。
これが十味敗毒湯の特徴なのです。
これはあまり書いてある本が無いのですが、誰かの本に
同じ事がかいてありましたね。
やはり見る人は見るのだなと思いました。

ただしこれは、尋常性乾癬のようなものではないのです。
あくまで湿疹的な出方です。
尋常性乾癬になるとまたちょっと違う処方になってきます。
あれはかなり遺伝要素があります。
十味敗毒湯は、やはり普通の慢性の湿疹みたいな状態や、
あるいはアトビー等でも必ず健常部分があるものに使います。

こういうように見えても、発疹の間の部分が
健常ではないなと思われるときは十味敗毒湯ではないのです。
面状になっているときは先程言った、
柴胡清肝湯荊芥連翹湯が基本になることが多いですね。

この十味敗毒湯単独で良くなる場合もありますが、あとはいろいろな
皮膚病薬をどう加えていくかという問題になってきますね。 例えば
1つ1つの発疹が非常にじゅくじゅくしているときは
消風散を加える場合があります。
理の働きが悪いなと思うときは黄耆を加えて、外からの何か
入ってくるものでやられているなというときは薏苡仁を加えます。

薏苡仁は、最近はもうほとんどエキスでは使わないですね。
薏苡仁エキスは、生の薏苡仁はどうしても服めないとか、
薏苡仁を炊いている時間がないという人に仕方なしに出すぐらいです。
ほとんどの場合、生薬で出して煮てもらいます。そして例えば
発散させたいときには蘇葉とか、薄荷を加えていくといいわけです。

十味敗毒湯は、上記のように
アイランド状を呈しその間に健常部分を残すのが特徴です。
当然腹力は中位であろうと思われますが、腹診もほとんど関係ないのです。

東洋医学の世界では、皮膚科だけは
独自に皮膚東洋医学会という別のグループを作ってやっています。
日本東洋医学会とは別の学会でやっているのは、皮膚科は本来、
全部皮膚表面を見るので診断してしまうからです。
意外とツムラさんのエキス剤の漢方を多く使っていると思いますね。

例えば普通に言うような舌診だとか脈診だとか、
余計な事をいろいろする必要がないですし、発疹だけを診て
何を使うかというのが決まりますから、使いやすいのです。
皮膚科の毎日の診療で、アンダームを使うとか、何か消炎剤を使うのと
全く同じレベルでできるわけです。
抗ヒスタミン剤を使うか、ステロイドを使うかというレベルで、
漢方薬でも何を使うかを決められるのです。

何か全く別世界で一所懸命やっているみたいです。
皮膚疾患は皮膚を見ながら覚えていくしかないのです。
十味敗毒湯はこういう薬ですね。

腹力は中位なんて書いていますけど、
これは腹診をやっているという意味ではないのです。
腹力は中位というのは体力も中等度で、柴胡が入っている薬だから
あまり弱っている人には使えないという意味です。でもどうでしょうか、
皮膚科は意外とすまして使っているかもしれないですね。

第18回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda18.htm


https://www.kigusuri.com/kampo/kampo-care/019-16.html