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これもあまり使わないんですが、大事なんですね。
何故あまり使わないかと言うと、それはさっぱりした病症があまりないという事です。
茵蔯蒿湯はかなり強い瀉薬だからです。単独に使い続けるとかなり危険です。
現実にずっと使っている人は、他の薬、例えば小柴胡湯等と一緒に使ったりします。
小柴胡湯と茵蔯蒿湯を併せて使うと、非常に強い胆管系の消炎作用になります。
それでもまだ、大柴胡湯よりマイルドかなと言う感じです。
茵蔯蒿湯は非常に強い利胆作用です。
利胆作用があると、肝だろうかと思ってしまいがちです。
胆は肝に属しています。しかし利胆作用は肝の作用ではないんです。
大抵の場合混乱していますね。帰経が書いてありますね。脾胃肝胆と。
一番先にあるのが主作用です。だから脾に主に作用します。
東洋医学的に肝胆が全身にどう作用しているか、
私もまだ完全に説明できないのですが、肝だったら解りやすいですね。
化学工場としての働き、あらゆるものを合成分解することです。
これは西洋医学の考え方と同じです。それともう一つ、
交感神経系としての働きが肝の作用にあります。そうするとなると、
胆汁分泌能は脾に属します。何故、 脾に属すかというと、
胆道が膵に開いているからです。胆汁と言うものは、
本質的には食物が腸管に入ってきた時に応じて出て来て、消化を助けるのです。
胆汁は本来消化に預かるのです。だから胆汁の色は黄色なのです。
胆道の胆汁分泌能がやられると、黄色になってくるのです。
脾の色は黄色だからです。茵蔯蒿湯はここに作用するのです。
この作用は経験的に、ウルソより間違いなく強いです。
結構、茵蔯蒿湯でなくて茵蔯五苓散として使っているのが多いです。
よく使っているのが原発性胆汁性肝硬変です。
大低あの病気は、診断がついてから何とかならないかと言って来ます。
北海道に戻って以来、ずっと診ている患者さんが何人もいますが、
いまだに一つも進行しないで皆元気に通ってきています。
こういう患者さんが年々少しずつ増えてきています。
ほとんど茵蔯五苓散を使っていますが、あまり黄疸なんかも出ていない場合は、
梔子柏皮湯を使っている人もいます。
この茵蔯蒿という非常に強い利胆作用のあるものと山梔子ですね。
山梔子もこれまた大変な薬ですね。
これも最初のうちで覚えておいてほしいのは、
漢方の中で副作用を出す数少ない薬の一つが、この山梔子です。
柴胡や黄連も黄芩と一緒になると副作用を出しやすいのですが、それと熟地黄です。
漢方の中でたった二つだけ中枢神経に影響を与える薬があります。
他の薬はほとんど影響を出さないのですが、その一つが実は山梔子で
もう一つは天麻です。この二つだけは脳に直接影響を与えます。
ほかの薬は中枢に作用するのは体からのフィードバックです。
天麻は中枢を抑制する作用ですが、山梔子は網内系を活性化するのです。
脳内のミクログリアなどを賦活することで、中枢神経に症状を出すことがあります。
天麻はうまく使えば使いやすいのですが、山梔子の中枢に対する作用は
邪魔になることが多いのです。
ミクログリアを刺激するのはあまり良いことではないのです。
たまにあります。お年寄りに山梔子の入った製剤を出すと良くあるのは、
幻覚が見え出すんですね。最近、「天井に蛇がとぐろを巻いているのが見える」等と
言い出したりしたことがあります。何人かいましたが、
山梔子の入らない処方に切り替えたらおさまりました。
結構あります。脳に対してもそうですから、いろいろ他の部分にも、
網内系を賦活するみたいな急迫反応を起こすことがあるのです。
それを見越して使う場合もあるのですが、
それを解っていないと大抵は患者さんの信用を失うことになります。
さりげなくいろいろなものに入っています。
実は加味逍遙散みたいなものに入っていますね。
もちろん、黄連解毒湯なんかも入っていますね。
あるいは温清飲なんかも入っていますね。
あと清肺湯や辛夷清肺湯にも入っています。
意外とさりげなく入っています。
ひどい時は飲んだ途端に、震えが止まらなくなったり、結構すごい症状を出します。
消炎作用として、どうしても急迫反応を起こしても使いたいときは、
もしかしたら強い反応が出ることもあるよと
患者さんに十分納得させて使うこともあります。
もしあまりひどい様だったら、連絡してくださいとか、
半分にして飲んでくださいと言うと、大抵は減量すると良いことがあります。
それを目的として出した場合は、減量したりするのは良いのですが、
目的としないで出した場合に、急迫反応が出たときは止めなければなりません。
その茵蔯蒿と山梔子に大黄が加わっています。
もちろん一応ターゲツトとしているのは、
肝のクツパー細胞等に働きかけて炎症を抑えることです。
それから胆汁がうっ帯していたらそれを取り除きます。大黄も強い薬です。
茵蔯蒿はそれ程でもないですが、大黄は山梔子のそういう作用を増強させます。
そんなに沢山使う薬ではありませんが、非常に大事な薬です。
腹証についてですが、これも繰り返しやってください。
強く押すと痛いです。強く押さないで下さい。
術者の気が高まってくると、胸脇苦満や心下痞があれば、
手掌を置くだけで患者さんは顔をしかめます。
あるなと思ってあらためて触ってみます。
そっと触ってそっと力を入れて行っても、
本当に胸脇苦満や心下痞があれば、必ず手で触ります。
そっと触るのが良いのですが、それが心もとない時は、左手掌を置いて、
そのうえを右手拳でトントンと軽く叩くと、デファンスが左手掌に触れます。
軽く叩くのですよ。強く叩くと誰でも痛がります。それが慣れてくると、
触るだけでも患者さんが顔をしかめますし、こちら側の手にも感じられます。
第2回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda02.htm
[参考]: 茵蔯蒿湯 , 茵蔯五苓散