みつかひと ならむおのれを 夢見ては しろきもの塗る 人の苦しさ
*「しろきもの」とはおしろいのことです。「みつかひ」は天使のことですね。
天使になるだろう自分を夢見ては、自分におしろいを塗る人の、苦しさであることよ。
実はこの最後の「人の苦しさ」というところを、「人の愚かさ」に変えようとしましたが、仲間に止められました。「愚かさ」では相手を切り捨てるようなきつさが出る。「苦しさ」としたほうが、かすかに愛がこもると。そうかもしれません。
馬鹿な人たちが天使になりたがるのは、自分が嫌だからです。自分はいやらしいことばかりしているいやなやつだから、もうすっかりとそれを天使と取り換えてしまいたい。美しい天使そのものに自分がなりたい。だがそのためにやることといえば、天使のように美しく生きることなどではなく、顔に白いものをぬるくらいのことなのだ。それだけのことで天使になろうとすることが、愚かなことくらい、馬鹿な人たちにもわかっているということでしょう。
わかっていながら、やめられない。どうしても自分が嫌だから、天使になりたいのだ。しかしそうやって自分から逃げている限り、その矛盾の苦しさは終わらない。いつまでも苦しみ続ける。それがわかっていながら、馬鹿なことをやめられないのは、やめればすべてを失うことがつらいからです。
今まで、白いものを塗った嘘で、得てきた幻の幸福を、すべて失うからなのです。
幻の幸福とはなんでしょう。盗んできた美貌だけではない。それから得た名声や、財力や、愛に似たつながり、馬鹿な人たちがいいと思い込んでいるすべてのもの。そんなものは、自分に目覚めてしまえば、ばかばかしいがらくたに等しいものなのだが、迷っている魂には宝のように大事なものに思えるのです。
だから馬鹿な人たちは、嘘をついたまま本当になりたがる。何も失わないまま、美貌の天使になりたがるのです。だがそれは不可能だ。
楽をして、嘘を保ったまま、自分を本当にすることなど、できないのですよ。自分を本当に美しいものにしたいのなら、半身をちぎるような覚悟で、嘘を脱ぎ捨てねばなりません。それができなければ、馬鹿な人たちは永遠に自己矛盾の地獄に苦しみ続ける。
わかっているのだ。それが間違っていることは。だがやめられない。すべてをあきらめることができない。その自分の愚かさが苦しい。
いつまでやっているつもりなのか。
もう少し 待てば天使に なれるのと いつまでもやる ばかなひとたち
やっぱりきついのが来ましたね。