まだ咲かぬ 花を待ちつつ 春あさき 野をひとりゆく 朝のしづけさ
*今週は3首ほど詠めました。ぎりぎりでね。日曜が来ても1首も詠めなかったときは、古い作品から掘り起こしてこなければと思っていましたが、月曜日になんとかそれらしいのができたので、そのうちのひとつをあげましょう。
花といえば普通桜のことですが、ここでの花はそれではなく、オランダミミナグサのことです。よく野道の隅になど咲く、なんということはない小さな花ですが、かのじょがとても好きでした。
写真の花は、まだ冷たい風に、閉じたままですが、春が深まってくれば、白くてとてもかわいい花を咲かせます。写真にとると、鮮やかな命を見せてくれて、とても美しい。野の隅に咲く何気ない花が、すばらしい命の光を見せてくれる。そんな小さな驚きを、かのじょは大事にしていた。
季節の神の約束の下で、必ずやってくる春を信じて、花はつぼみの中で小さな白い花を作り続けている。春は自然に来るのではない。花は自然に咲くのではない。あたたかな魂が、美しい約束を守るために、見えないところで常に努力しているのです。
すべての存在が、愛に濡れて、美しいおのれの真実を表現しようと、すばらしい努力をしている。この世界はそういう美しい自分自身たちの絶え間ない努力によってできているのです。
まだ咲かない花を待ちながら、春あさい野をひとりゆく、朝の静けさ。
冷たい風の中にも、かすかに季節の変化を感じて、季節の神のあたたかな愛を感じながら、ひとり散歩道を歩く時、美しい幸福が胸に満ちてきます。
わたしたちは愛されている。様々な愛に囲まれている。なんと恵まれていることだろう。
そう思うとき、わたしたちもまた、愛で、すべての幸福のために、美しい自分を表現していかなければと、思うのです。