よしもなき かろきをみなと あなどりて 月をとらむと ちへのあやまち
*「よしなし(由無し)」は「理由がない」とか「方法がない」とか「つまらない」とかいう意味の古語ですね。似たような言葉に「やくなし(益無し)」とか「かたなし(形無し)」があるので、ついでに覚えておきましょう。意味はそれぞれ調べてください。
つまらない軽い女だと侮って、あの月をとろうとして、千重も過ちをかさねたことだ。
人間世界の誤った常識として、美人は馬鹿だというものがありました。美しい女性は、性格が悪いという感じですね。それにはいろいろな人間の愚かな心理があるのですが。
要するに、美人が馬鹿でなければ手が出せないと思っている馬鹿な男が、無理矢理理屈を曲げて、美人は馬鹿だということにしてきたのです。
それなら、自分が適当に遊べるものにできる。
また、愚かな女性が他人の美を盗んで、すごい美人になった例を見て、そう思い込む場合もありました。未熟な女性はやさしさなどまだわからず、人にエゴを押し付けがちですから、きれいな顔をかぶってそんな態度をすると、それを見た人が美人は馬鹿だと思い込むのも当然のことでした。
しかしそれは間違った常識です。神の理では、美しい人ほど賢く、心も美しいのです。心の真実が現れたものが、その人の姿であるのです。
馬鹿な人間はそれを無理矢理人から盗み、自分を美しくしてきたのです。
何度も言っていることですがね、何度も言うことが大事なのだ。人間は逃げることのできない真実をそうして思い知る。
人から姿を盗んで自分を美しくすることは、神の心を盗むことにも等しい。とてもやさしげな姿をしている人が、あまりにひどいことをしているという姿を人に見せていると、愛は人を馬鹿にしているという印象を世間にばらまくことになる。それは神の愛に対する誤解を世界にふりまくことでもあるのです。
馬鹿はここを十分に思い知らねばなりません。美しくなりたい気持ちはわかりますがね、勉強もしないで美しくなろうとするなどは、あつかましいにもほどがある。
傲慢を抑え、つらいことをがまんし、人に頭を下げて、人に従ってゆく修行をなさい。そういうことを学ばないから、人を馬鹿にして、つらいことになるのです。
美しい人はみな、十分にそんな修行を積んでいるのです。