例えば、レジの金額が合わない責任の押し付け。ノルマを課せられ、売れ残りを買い取らされる「自腹営業」。備品を壊したという理由で過大な賠償請求。契約すら無視して長時間拘束のシフトを組み、試験前でも休めないなど学業に支障をきたし大学中退を余儀なくされた学生。「辞めるなら求人広告料を請求する」「まず研修費用を払ってからやめろ」などと脅されるため、バイトを「辞めたいのに辞めさせてくれない」といった相談も数多く寄せられる。
塾講師や家庭教師のバイトは、授業時間と時給を比べれば、他のバイトより賃金が高く見える。しかし授業の準備、待機、研修、報告日報、保護者への連絡などに費やす拘束時間で換算すれば最低賃金を下回るケースも散見できる。教材費や、自分の携帯電話からの保護者に対する営業やクレーム対応などの通信費も自己負担にされる構造だ。
大手学習塾では、1コマに教科や学年の違う生徒を詰め込み、同時に教えさせるという“荒行”を押しつける。講師は準備などに2倍の労力がかかるので、労働者は割にあわないが塾にとってのうま味は増す。
抗議しても「みんな生徒のためを思って働いているのに、お前は金のことしか頭にないのか」と、生徒への“愛”や“奉仕”を説く。これは、やりがい搾取だ。
学生たちは気楽に自由にバイト先を渡り歩くイメージを持たれがちだが、実際は簡単には辞めさせてもらえず、辞められたとしても新たな就職先はそう簡単には見つからない。
「ブラックバイト」に喰い潰される|首都圏青年ユニオン事務局次長・神部紅さん