物欲王

思い付くまま、気の向くまま、物欲を満そう

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散るぞ悲しき

2007-01-08 22:34:59 | 
遅ればせながら話題の本ということで『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』を読んでみました。

この本は、太平洋戦争末期に硫黄島に着任し、圧倒的な優位に立つアメリカ軍からこの小さな島を守るために命を賭けて戦った栗林忠道大将の生い立ちから最期までを、遺族や関係者の証言を交えながら書き綴ったノンフィクションです。本書を手にする以前は硫黄島も所謂万歳突撃による玉砕かと思っていた程度の知識しかなかったのですが、読み進めるにつれ栗林忠道という人物が「死を前提とした戦い」にも拘わらず、自分の役割を理解し綿密な準備を進め、将兵の心をつかみ士気を維持して、歴史に残る激戦を戦い抜いたことが良く分かりました。著者である梯久美子氏の筆致は戦記物に偏るでもなければ、情に訴え悲壮感を漂わせるものでもなく、冷静に栗林忠道の足取りを追いかけていくもので、好感が持てました。

Noblesse Obligeという言葉がありますが、これに反して日々テレビのニュースでは政治・経済の要職にある者の不正な行いが報じられていますし、身近なところでも我が身可愛さに大義を忘れ目下の者に理不尽なことを強いる管理職がよくあるものです。確実に戦死することが約束された硫黄島で、過酷な生活条件の中人間らしさを維持し、米軍に追いつめられた後には大将の階級章を外し一兵卒として戦陣に立って最期を遂げた栗林忠道の「義務を意識する人の高貴さ」こそ、今の日本人一人一人に必要なものではないでしょうか。


散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道

新潮社

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