「血糖値」が健康管理の最大のカギである日々のイライラから老化病気まで生み出すもの
「血糖値」という言葉は、あなたもすでにご存じでしょう。会社の健康診断でも、「空腹時血糖値」や、ここ1、2か月の血糖値の推移を見る「ヘモグロビンA1c値」が調べられているはずです。これら数値が高ければ糖尿病が疑われます。
この血糖値、糖尿病に限らず、あなたの健康状態のすべてを決めると言っても過言ではないのです。
第一に、「血糖値が高い状態が肥満をつくる」という事実があります。詳しいメカニズムについては新刊『医者が教える食事術 最強の教科書』で解説していますが、あなたが太るのは脂っこい食べ物をとったからではなく「血糖値が上がったため」です。逆に、血糖値を低く抑えることさえできれば、肉を食べようと、揚げ物を食べようとあなたは確実にやせていきます。
太っている人が「やせなさい」と医者から言われるのは、肥満があらゆる病気の引き金になることはもはや疑いの余地がないからです。脳疾患や心疾患、がん、認知症など、怖い病気はみんな肥満と関係しています。
一方で、糖尿病患者には、こうした病気の罹患率が高いことが明らかになっています。つまり、そもそも血糖値が高いこと自体が、体にあらゆる悪さをしているのです。
これも詳しくは『医者が教える食事術 最強の教科書』で書いていますが、血糖値が高いことで免疫力が落ち、さらには「AGE」という悪玉物質が体の中でつくられ老化が進みます。血糖値が高ければ、血管も内臓も、皮膚などの外見もぼろぼろになってしまうのです。
また、血糖値が安定しないことで、イライラ、眠気、倦怠感、吐き気、頭痛といった不快な症状も招きます。
まさに血糖値は、健康管理における最大のカギと言えます。それを理解している人たちは、自分の血糖値に無関心ではいません。
たとえば、海外のサッカーチームで活躍する、ある日本代表選手は、パフォーマンスを上げるために、「FreeStyle リブレ」という器具を用いて血糖値をコントロールしているそうです。
リブレは本来、糖尿病の患者さん用に開発されたものですが、意識の高い人たちは自分の健康管理のために使いこなしています。つまり、知的なビジネスパーソンがエビデンスのある健康づくりに励もうと思ったら、「血糖値をコントロールする」というテーマを第一に掲げるべきなのです。そして、それには食事を大切に考えるしかありません。
現代人の多くが実は「糖質中毒」である ――血糖値スパイクが引き起こす不快感
ところが、知的なはずのビジネスパーソンの多くが、飲む必要のない糖質たっぷりの飲料をとることで、朝から血糖値を盛大に上げています。
血糖値を上げるのは、ひとえに糖質です。脂質やタンパク質などは上げません。だから、バターで焼いた肉をたくさん食べても血糖値は上がらないし、血糖値が上がらないから太ることもありません。
一方、たった1本の飲み物が、血糖値を急激に上げ、肥満をつくり上げ健康を害してしまいます。そこには、大量の糖質が含まれているからです。
糖質は炭水化物と言い換えることができます。実際に、糖質たっぷりの清涼飲料水には「糖質〇グラム」ではなく「炭水化物〇グラム」と表記されているものがほとんどです。だから気づきにくいのです。
この糖質(≒炭水化物)は、ごはんやパン、麺類、果物、ケーキやせんべいといったお菓子、清涼飲料水など、ビジネスパーソンが普段から摂取しているさまざまな食べ物に含まれます。
こうした糖質を含む食べ物を摂取すれば、例外なく血糖値は上がりますが、上がり方はさまざまです。下の図0-3を見てください。
ごはんやパンなど固体のほうが血糖値の上昇が緩やかです。それは胃の中での消化に時間がかかるからです。ところが、液体の場合、あっというまに胃をすり抜けて小腸へ届き吸収されるために、一気に血糖値が上がるのです。健康な人の血糖値は、空腹時で80~90mg/dl(以下単位省略)前後です。そこでごはんやパンを含んだ食事をとれば、1時間後に120くらいまで上がり、やがてゆっくりと下降していきます。こうした緩やかなカーブならばいいのですが、液体で大量の糖質をとると、とんでもないことになります。
液体の糖質は口にしてすぐに血糖値が上がり始め、30分後にはピークに達してしまいます。缶コーヒーを1本飲めば、糖尿病のない健康な人でも30分後には血糖値が140くらいまで急上昇します。これを「血糖値スパイク」と呼びます。
血糖値スパイクが起きると、今度はジェットコースターのように一気に下降して、血糖値が低すぎる状態に陥ります。
このときに、体の中で起きている変化について簡単に説明しましょう。血糖値がぐんと上がると、セロトニンやドーパミンといった脳内物質が分泌されて、ハイな気分になります。だから、「仕事前に気合いを入れるには缶コーヒーがぴったりだ」と誤解してしまうわけです。この、ハイな気分になるところを「至福点」と言います。
一方で、血糖値が急激に上がったことを察知した体は、それを下げるために慌てて膵臓から大量のインスリンというホルモンを放出します。そして、血糖値が急激に下がります。
血糖値が大きく下がると、ハイな気分から一転、イライラしたり、吐き気や眠気に襲われたりと不快な症状が出ます。すると、「またあのハイな気分になりたい」とばかり、血糖値を上げる糖質が欲しくなり、同じことを繰り返してしまうのです。
これは、「糖質中毒」という脳がおかしくなってしまった非常に深刻な症状です。しかし、中毒に陥っている本人には、その自覚がまったくありません。
実は清涼飲料水などのメーカーは、人の至福点について計算し尽くし、商品を設計しています。言ってみれば、糖質中毒患者を増やすことで利益を得ているのです。知的なはずのビジネスパーソンが、それにまんまとはまってはいけません。
(この原稿は書籍『医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)
牧田善二
飲み物の買い方で“見た目”が変わる!?
ゼロカロリー、トクホ飲料を飲んでも痩せない理由
笠井奈津子 [栄養士、食事カウンセラー]
【第3回】
· 大きな文字小さな文字
「もうすっかりおじさんになっちゃったよ~」
笑いながらベルトの上に乗っかったお腹をなでる男性、あなたも一度は見たことがありませんか?でも、そのメタボ腹は、“おじさん”の代名詞なのでしょうか。年を重ねてもかっこよくあり続けるより、美しくあり続けるより、衰退していくことの方が“普通”なのでしょうか?
年を重ねるにつれて、するべきこと、守るべきものも増え、それなりの意志がないと、自分の身体づくりのための時間を作ることが難しくなるのは事実ですよね。そうすると、時間と引き換えにお金で「手軽さ」を手に入れてしまおうとすることも否定できません。
カロリーゼロ、糖質オフ飲料が誘発する
“2つの落とし穴”
いつも「カロリーゼロ」「糖質オフ」「カロリーオフ」という魅力的な言葉に惹かれて、飲み物を買っていませんか?
たとえば「カロリーゼロ」「糖質オフ」「カロリーオフ」などとうたわれているドリンク類。これらの商品に「引き締まった身体になります」「痩せます」といった表示がされているわけではありません。でも、いつものドリンクをこれらの商品に置き換えるだけで、もっとかっこいい身体になれるような(戻れるような)気持ちになっていませんか?
実際には、日常的に飲んでいる方の方が「これさえ飲んでいれば大丈夫」なわけでも「摂った脂肪や糖分が帳消しになる」わけでもないことをよくおわかりかもしれません。これまで食事指導をしてきた中でも、
「『なんとなく良さそう』と思って口にしているものほど、むしろ、デメリットに働くことの方が多い」
そう感じざるを得ないことがほとんどでした。その大きな要因は、「カロリーゼロ」「糖質オフ」「低カロリー」などと表示されているドリンクのほとんどに使用されている人工甘味料です。人工甘味料がもたらす身体への影響については、専門的に取り扱っている書籍などをご覧いただければと思いますが、今回お話ししたいのは、食習慣にもたらす悪影響です。
人工甘味料を用いれば、カロリーや糖質を抑えることができます。でも、その一方で、人工甘味料は“太りやすい食の嗜好”と“自分への言い訳”を誘発しやすいものです。
周りを見てみても、太っている人の多くは、いかにも太りそうなものを好んで食べていることが多いはずです。揚げ物、マヨネーズなどの味の濃い調味料、塩味の強い肉料理、菓子パン、スナック菓子etc。また、「ダイエットは明日からにしようかな」「今日はストレスが多い日だったから」と食べてしまうことへの何かしらの理由を見つけることも得意中の得意なはずです。そして、このふたつの特徴さえもっていれば、いくらでも太れる、といっても過言ではありません。
人工甘味料を使うことによってカロリーや糖質を抑えることができても、そこには確かに「甘さ」が存在します。食事以外にも甘味の強いものを日常的に摂取すれば、慣れによって味覚が鈍化していきます。そうすると、体型を維持している人が好きそうな薄味でヘルシーなものではなく、太る人が好みそうなものへの欲求の方が高まりやすくなります。「でも、たまになら良いでしょ?」そう思われるかもしれませんが、人工甘味料の中には依存性が高いものも少なくないため、“たま”のことで終わらなくなるのも問題です。
また、厳しいことをいうようですが、「カロリーゼロだから」「糖質オフだから」という理由をつけて飲むこと自体、「ダイエットは明日から」といっているのと変わりがありません。なぜならば、ダイエットを必要とする原因は、その水分の摂り方よりも普段の食事にあるからです。カロリーや糖質を抑えたドリンク類を飲むことで、無意識のうちに本当の原因から目をそらしてしまっているのです。
トクホ飲料をやめるだけで痩せる!?
我慢しなくても見た目は変えられる
仕事や人間関係と同じように、表面をとりつくろってもダイエットはなかなかうまくいきません。原因を見つけて、そこを解決しないと結局後々に問題が起きるのですから、とりつくろうためにお金を使うのはもったいないと思いませんか?
たとえば、トクホは、個々の製品ごとに消費者庁長官の許可を受けていて、血圧や血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、お腹の調子を整えるのに役立つなどの特定の保健の効果を表示することのできる食品です。ですから、トクホの食品を選ぶ時には、自分の食生活と照らし合わせて、自分にはどの保健の効果が必要なのかを考慮する必要があります。
でも、血糖値が気になる方に適するトクホの商品があったとして、それがあることで油断が生まれていつも通りの食生活を変えなかったら?その上、その商品に人工甘味料がたくさん含まれていて、“太りやすい食の嗜好”と“自分への言い訳”だけが増えていったら?
本当にごくたまに甘いジュースを飲みたくなって、どうせならカロリーオフにしておこうかな、トクホにしておこうかな、というスタンスなら問題ありません。でも、すでに「ないと落ち着かないもの」「自分の健康の一端として頼りにしているもの」になっていたら、今手にしているその飲み物は、メタボ製造機の燃料となっているだけかもしれません。
実際に、この手のドリンクを飲むのをやめただけで、男性なら1ヵ月で2kgほど体重が落ちるケースもあります。自分にとっての免罪符をやめたことで、甘えがなくなり、暴飲暴食にセーブがかかったことも大きいかもしれません。見た目を変えるためにできるシンプルなこと。それは、我慢ではありません。水分は水にする、そんなことで良いのです。
野菜ジュースは高級品ならOK?
実はただの糖質の高いジュースだった!
市販の野菜ジュースは時間や熱でビタミンが損失されている可能性が高いといえます。自宅でスムージーなどを作るのはおすすめです
また、ダイエットに限らず、「身体に良さそう」と手にしている野菜ジュースはどうでしょう? 野菜ジュースのパッケージには、なかなか魅力的な表示が多くされているように思います。でも、仮に1日分として推奨される量の野菜が入っていたとしても、期待するほどのビタミンやミネラルが摂れるとは限りません。過程で熱処理が入ることもあり、摂取する際のビタミンやミネラルの量にはかなりの損失がある可能性が非常に高いからです。
さらに、野菜ジュースの多くはニンジンやトマトをベースにしています。これらの野菜は非常に糖分が多いので、砂糖が入っていなくても甘いのです。だから、「野菜ジュースの割においしい」「飲みやすい」ということになるわけですが、野菜を食べた時と同じビタミンミネラルを摂取することはできないのに、糖分だけは摂ってしまうのです。となると、野菜ジュースはただの糖質の高いジュースと同じです。
そうすると、「通販で高級なものを買っているのですが、それは良いですよね?」と聞かれる方もいらっしゃいます。もちろん、高価なものの方が高品質の野菜を使っていて、そもそもの栄養価が高い、という期待はできるかもしれません。でも、時間や熱によってビタミンが損失するのは「事実」であって、商品の良い悪いによって大きく変わることではありません。先述の例ではありませんが、朝晩と野菜ジュースを飲んでいた方がそれを止めるだけで適正体重に近づくこともあるくらいなのです。
野菜を食べることが私たちの身体にもたらすメリットは、野菜ジュースを飲むことが私たちの身体にもたらすことと、イコールにはなりません。ジューススタンドやご自宅で作り立てのものをいただくのであれば良いですが、一般的な市販のものを買うのであれば、「私は今、糖分補給をしているのだ」という認識をもっていただいた方が良いでしょう。
エステの会社を経営している友人が、最近、こんなことを口にしました。
「年を重ねたら、“知識”“情報”“経験”が増える。だから、年を重ねるほどに美しくならないわけはない」
せっかく経験を積み重ねているのだから、結果が出なかった、もしくは、良くない結果を招くような習慣は手放したいものです。40歳だからかっこいい。50歳だからもっとかっこいい!そんなふうになれる日々の選択ができると良いですよね。
「血糖値」という言葉は、あなたもすでにご存じでしょう。会社の健康診断でも、「空腹時血糖値」や、ここ1、2か月の血糖値の推移を見る「ヘモグロビンA1c値」が調べられているはずです。これら数値が高ければ糖尿病が疑われます。
この血糖値、糖尿病に限らず、あなたの健康状態のすべてを決めると言っても過言ではないのです。
第一に、「血糖値が高い状態が肥満をつくる」という事実があります。詳しいメカニズムについては新刊『医者が教える食事術 最強の教科書』で解説していますが、あなたが太るのは脂っこい食べ物をとったからではなく「血糖値が上がったため」です。逆に、血糖値を低く抑えることさえできれば、肉を食べようと、揚げ物を食べようとあなたは確実にやせていきます。
太っている人が「やせなさい」と医者から言われるのは、肥満があらゆる病気の引き金になることはもはや疑いの余地がないからです。脳疾患や心疾患、がん、認知症など、怖い病気はみんな肥満と関係しています。
一方で、糖尿病患者には、こうした病気の罹患率が高いことが明らかになっています。つまり、そもそも血糖値が高いこと自体が、体にあらゆる悪さをしているのです。
これも詳しくは『医者が教える食事術 最強の教科書』で書いていますが、血糖値が高いことで免疫力が落ち、さらには「AGE」という悪玉物質が体の中でつくられ老化が進みます。血糖値が高ければ、血管も内臓も、皮膚などの外見もぼろぼろになってしまうのです。
また、血糖値が安定しないことで、イライラ、眠気、倦怠感、吐き気、頭痛といった不快な症状も招きます。
まさに血糖値は、健康管理における最大のカギと言えます。それを理解している人たちは、自分の血糖値に無関心ではいません。
たとえば、海外のサッカーチームで活躍する、ある日本代表選手は、パフォーマンスを上げるために、「FreeStyle リブレ」という器具を用いて血糖値をコントロールしているそうです。
リブレは本来、糖尿病の患者さん用に開発されたものですが、意識の高い人たちは自分の健康管理のために使いこなしています。つまり、知的なビジネスパーソンがエビデンスのある健康づくりに励もうと思ったら、「血糖値をコントロールする」というテーマを第一に掲げるべきなのです。そして、それには食事を大切に考えるしかありません。
現代人の多くが実は「糖質中毒」である ――血糖値スパイクが引き起こす不快感
ところが、知的なはずのビジネスパーソンの多くが、飲む必要のない糖質たっぷりの飲料をとることで、朝から血糖値を盛大に上げています。
血糖値を上げるのは、ひとえに糖質です。脂質やタンパク質などは上げません。だから、バターで焼いた肉をたくさん食べても血糖値は上がらないし、血糖値が上がらないから太ることもありません。
一方、たった1本の飲み物が、血糖値を急激に上げ、肥満をつくり上げ健康を害してしまいます。そこには、大量の糖質が含まれているからです。
糖質は炭水化物と言い換えることができます。実際に、糖質たっぷりの清涼飲料水には「糖質〇グラム」ではなく「炭水化物〇グラム」と表記されているものがほとんどです。だから気づきにくいのです。
この糖質(≒炭水化物)は、ごはんやパン、麺類、果物、ケーキやせんべいといったお菓子、清涼飲料水など、ビジネスパーソンが普段から摂取しているさまざまな食べ物に含まれます。
こうした糖質を含む食べ物を摂取すれば、例外なく血糖値は上がりますが、上がり方はさまざまです。下の図0-3を見てください。
ごはんやパンなど固体のほうが血糖値の上昇が緩やかです。それは胃の中での消化に時間がかかるからです。ところが、液体の場合、あっというまに胃をすり抜けて小腸へ届き吸収されるために、一気に血糖値が上がるのです。健康な人の血糖値は、空腹時で80~90mg/dl(以下単位省略)前後です。そこでごはんやパンを含んだ食事をとれば、1時間後に120くらいまで上がり、やがてゆっくりと下降していきます。こうした緩やかなカーブならばいいのですが、液体で大量の糖質をとると、とんでもないことになります。
液体の糖質は口にしてすぐに血糖値が上がり始め、30分後にはピークに達してしまいます。缶コーヒーを1本飲めば、糖尿病のない健康な人でも30分後には血糖値が140くらいまで急上昇します。これを「血糖値スパイク」と呼びます。
血糖値スパイクが起きると、今度はジェットコースターのように一気に下降して、血糖値が低すぎる状態に陥ります。
このときに、体の中で起きている変化について簡単に説明しましょう。血糖値がぐんと上がると、セロトニンやドーパミンといった脳内物質が分泌されて、ハイな気分になります。だから、「仕事前に気合いを入れるには缶コーヒーがぴったりだ」と誤解してしまうわけです。この、ハイな気分になるところを「至福点」と言います。
一方で、血糖値が急激に上がったことを察知した体は、それを下げるために慌てて膵臓から大量のインスリンというホルモンを放出します。そして、血糖値が急激に下がります。
血糖値が大きく下がると、ハイな気分から一転、イライラしたり、吐き気や眠気に襲われたりと不快な症状が出ます。すると、「またあのハイな気分になりたい」とばかり、血糖値を上げる糖質が欲しくなり、同じことを繰り返してしまうのです。
これは、「糖質中毒」という脳がおかしくなってしまった非常に深刻な症状です。しかし、中毒に陥っている本人には、その自覚がまったくありません。
実は清涼飲料水などのメーカーは、人の至福点について計算し尽くし、商品を設計しています。言ってみれば、糖質中毒患者を増やすことで利益を得ているのです。知的なはずのビジネスパーソンが、それにまんまとはまってはいけません。
(この原稿は書籍『医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)
牧田善二
飲み物の買い方で“見た目”が変わる!?
ゼロカロリー、トクホ飲料を飲んでも痩せない理由
笠井奈津子 [栄養士、食事カウンセラー]
【第3回】
· 大きな文字小さな文字
「もうすっかりおじさんになっちゃったよ~」
笑いながらベルトの上に乗っかったお腹をなでる男性、あなたも一度は見たことがありませんか?でも、そのメタボ腹は、“おじさん”の代名詞なのでしょうか。年を重ねてもかっこよくあり続けるより、美しくあり続けるより、衰退していくことの方が“普通”なのでしょうか?
年を重ねるにつれて、するべきこと、守るべきものも増え、それなりの意志がないと、自分の身体づくりのための時間を作ることが難しくなるのは事実ですよね。そうすると、時間と引き換えにお金で「手軽さ」を手に入れてしまおうとすることも否定できません。
カロリーゼロ、糖質オフ飲料が誘発する
“2つの落とし穴”
いつも「カロリーゼロ」「糖質オフ」「カロリーオフ」という魅力的な言葉に惹かれて、飲み物を買っていませんか?
たとえば「カロリーゼロ」「糖質オフ」「カロリーオフ」などとうたわれているドリンク類。これらの商品に「引き締まった身体になります」「痩せます」といった表示がされているわけではありません。でも、いつものドリンクをこれらの商品に置き換えるだけで、もっとかっこいい身体になれるような(戻れるような)気持ちになっていませんか?
実際には、日常的に飲んでいる方の方が「これさえ飲んでいれば大丈夫」なわけでも「摂った脂肪や糖分が帳消しになる」わけでもないことをよくおわかりかもしれません。これまで食事指導をしてきた中でも、
「『なんとなく良さそう』と思って口にしているものほど、むしろ、デメリットに働くことの方が多い」
そう感じざるを得ないことがほとんどでした。その大きな要因は、「カロリーゼロ」「糖質オフ」「低カロリー」などと表示されているドリンクのほとんどに使用されている人工甘味料です。人工甘味料がもたらす身体への影響については、専門的に取り扱っている書籍などをご覧いただければと思いますが、今回お話ししたいのは、食習慣にもたらす悪影響です。
人工甘味料を用いれば、カロリーや糖質を抑えることができます。でも、その一方で、人工甘味料は“太りやすい食の嗜好”と“自分への言い訳”を誘発しやすいものです。
周りを見てみても、太っている人の多くは、いかにも太りそうなものを好んで食べていることが多いはずです。揚げ物、マヨネーズなどの味の濃い調味料、塩味の強い肉料理、菓子パン、スナック菓子etc。また、「ダイエットは明日からにしようかな」「今日はストレスが多い日だったから」と食べてしまうことへの何かしらの理由を見つけることも得意中の得意なはずです。そして、このふたつの特徴さえもっていれば、いくらでも太れる、といっても過言ではありません。
人工甘味料を使うことによってカロリーや糖質を抑えることができても、そこには確かに「甘さ」が存在します。食事以外にも甘味の強いものを日常的に摂取すれば、慣れによって味覚が鈍化していきます。そうすると、体型を維持している人が好きそうな薄味でヘルシーなものではなく、太る人が好みそうなものへの欲求の方が高まりやすくなります。「でも、たまになら良いでしょ?」そう思われるかもしれませんが、人工甘味料の中には依存性が高いものも少なくないため、“たま”のことで終わらなくなるのも問題です。
また、厳しいことをいうようですが、「カロリーゼロだから」「糖質オフだから」という理由をつけて飲むこと自体、「ダイエットは明日から」といっているのと変わりがありません。なぜならば、ダイエットを必要とする原因は、その水分の摂り方よりも普段の食事にあるからです。カロリーや糖質を抑えたドリンク類を飲むことで、無意識のうちに本当の原因から目をそらしてしまっているのです。
トクホ飲料をやめるだけで痩せる!?
我慢しなくても見た目は変えられる
仕事や人間関係と同じように、表面をとりつくろってもダイエットはなかなかうまくいきません。原因を見つけて、そこを解決しないと結局後々に問題が起きるのですから、とりつくろうためにお金を使うのはもったいないと思いませんか?
たとえば、トクホは、個々の製品ごとに消費者庁長官の許可を受けていて、血圧や血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、お腹の調子を整えるのに役立つなどの特定の保健の効果を表示することのできる食品です。ですから、トクホの食品を選ぶ時には、自分の食生活と照らし合わせて、自分にはどの保健の効果が必要なのかを考慮する必要があります。
でも、血糖値が気になる方に適するトクホの商品があったとして、それがあることで油断が生まれていつも通りの食生活を変えなかったら?その上、その商品に人工甘味料がたくさん含まれていて、“太りやすい食の嗜好”と“自分への言い訳”だけが増えていったら?
本当にごくたまに甘いジュースを飲みたくなって、どうせならカロリーオフにしておこうかな、トクホにしておこうかな、というスタンスなら問題ありません。でも、すでに「ないと落ち着かないもの」「自分の健康の一端として頼りにしているもの」になっていたら、今手にしているその飲み物は、メタボ製造機の燃料となっているだけかもしれません。
実際に、この手のドリンクを飲むのをやめただけで、男性なら1ヵ月で2kgほど体重が落ちるケースもあります。自分にとっての免罪符をやめたことで、甘えがなくなり、暴飲暴食にセーブがかかったことも大きいかもしれません。見た目を変えるためにできるシンプルなこと。それは、我慢ではありません。水分は水にする、そんなことで良いのです。
野菜ジュースは高級品ならOK?
実はただの糖質の高いジュースだった!
市販の野菜ジュースは時間や熱でビタミンが損失されている可能性が高いといえます。自宅でスムージーなどを作るのはおすすめです
また、ダイエットに限らず、「身体に良さそう」と手にしている野菜ジュースはどうでしょう? 野菜ジュースのパッケージには、なかなか魅力的な表示が多くされているように思います。でも、仮に1日分として推奨される量の野菜が入っていたとしても、期待するほどのビタミンやミネラルが摂れるとは限りません。過程で熱処理が入ることもあり、摂取する際のビタミンやミネラルの量にはかなりの損失がある可能性が非常に高いからです。
さらに、野菜ジュースの多くはニンジンやトマトをベースにしています。これらの野菜は非常に糖分が多いので、砂糖が入っていなくても甘いのです。だから、「野菜ジュースの割においしい」「飲みやすい」ということになるわけですが、野菜を食べた時と同じビタミンミネラルを摂取することはできないのに、糖分だけは摂ってしまうのです。となると、野菜ジュースはただの糖質の高いジュースと同じです。
そうすると、「通販で高級なものを買っているのですが、それは良いですよね?」と聞かれる方もいらっしゃいます。もちろん、高価なものの方が高品質の野菜を使っていて、そもそもの栄養価が高い、という期待はできるかもしれません。でも、時間や熱によってビタミンが損失するのは「事実」であって、商品の良い悪いによって大きく変わることではありません。先述の例ではありませんが、朝晩と野菜ジュースを飲んでいた方がそれを止めるだけで適正体重に近づくこともあるくらいなのです。
野菜を食べることが私たちの身体にもたらすメリットは、野菜ジュースを飲むことが私たちの身体にもたらすことと、イコールにはなりません。ジューススタンドやご自宅で作り立てのものをいただくのであれば良いですが、一般的な市販のものを買うのであれば、「私は今、糖分補給をしているのだ」という認識をもっていただいた方が良いでしょう。
エステの会社を経営している友人が、最近、こんなことを口にしました。
「年を重ねたら、“知識”“情報”“経験”が増える。だから、年を重ねるほどに美しくならないわけはない」
せっかく経験を積み重ねているのだから、結果が出なかった、もしくは、良くない結果を招くような習慣は手放したいものです。40歳だからかっこいい。50歳だからもっとかっこいい!そんなふうになれる日々の選択ができると良いですよね。
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