久々に読んだ小説は、今村夏子の「こちらあみ子」。
薄皮で隔てられている世界のあちらとこちらを行ったり来たり漂っているような女の子の話。
どうしようも哀しくて、でもわりかしナイーブでもないから、さらによけいに哀しさがつのってくるような物語だ。
胸に浸み入ってきて傷を残していくような…。
あみ子は無垢で残酷だと理解されがちだろうが、それは違うんだ。残酷なのは世界の方だ。あみ子を受け入れられない世界が残酷なんだ。
まるで一編の長い詩を読んだような読後感。
いい小説だ。
この読後感を味わいたいから、あとの2編はまた明日読むことにする。