
T くんは小学校の時、同じクラスで
よく僕のところへ笑顔でやってきた
でも僕は 特別仲良くしたいとは
思っていなかった
T くんの兄さんは傷害事件を起こして
少年院に送られたりしていた
僕はT くんとよく取っ組み合いの喧嘩をしたけど
怖い兄さんは一度も出てこなかった
T くんは僕のこと
兄さんには話さなかったのかな...
☆*****☆

商店街で買い物をして
券を15枚集めると
「西郷輝彦ショーへ ご招待」
と いうイベントをやっていて
僕は11枚を何とか集めたが
後 4枚が なかなか集まらなかった
学校で友達とその話をしていると
T くんがやってきて「券ならあるよ。」
「ほら、」
15枚持っていた
それを全部 その欲しがっている
友達にあげると僕には
「明日、四枚持ってきてやるよ。」
そう言った
僕は 嬉しくて飛び上がった
でも 翌日、彼は学校へこなかった
T くんの兄さんが
店で券を盗んだことが分かって警察に捕まったのだ
☆****☆

それから三年が過ぎて
僕は高校へ入学が決まって
家にいると
ひょっこり Tくんがやってきた
僕はそっけない態度で接していると
T くんはすぐに帰って行ってしまった
母はそれを見ていて
僕をすごく怒った
自分の都合でつい
身勝手なふるまいをしてしまう
「悪かったな」とあの時のことを
今も思い出している僕です
T くんは兄さんとふるさとを離れるので
その最後の挨拶に来たことを後から知りました
