知人の紹介で
音楽事務所へ面接を受けに行った僕は
事務所の前に止まっている
黒い高級車を見た瞬間「やめようかな、」と思いました
社長(バンドマスター)は
金縁のメガネをかけて
ちょび髭を生やしている
よくドラマで見かけるような怪しげな人でした
☆****☆
そして、社長は
「座っていてくれればいいんだから..」
やさしく そう言ったのですが
現実は全く違っていたのです
夜の薄暗いホール
グリーンの派手な服を着て座っていると
演奏が始まりました
譜面を見ても今どこなのかが さっぱり分からない
ベースを持って途方にくれていると
「馬鹿やろう。」「銭、払ってんだから、音ぐらい出せ。」
バンドマスターの罵声が
飛んできたのです
「あらら、」「困ったな」
その時とった僕の行動は、
「そうだ、最後の音ぐらい「バシッ」と決めてやろう。」
リタルダンド、rit.
次第に遅く
「タ、タ、タ、、、タ..」
「ここだ !」、
「ボォーン。」
「ジャーン。」....
ずれた
でかい不協和音がホールに響いた
「馬鹿やろう、何をやってんだ。」
今度は歌本が二冊も飛んできました
☆*****☆
バンドマスターは
普段はとても優しい人で
あまり面白くないジョークを言っては
自分でよく笑っていました
昼間はいつもパチンコをしていて
バンドのメンバーの人が
「あそこまで下手な人を
見たことがない」と言っていました
そんなバンドマスターの究極の特技が
幕が開く前の暗いステージで
オナラをして
それにライターで火をつける技 ?
「
ボッ」と赤い炎は 30cmくらい燃えあがり
必ず
「あぢっ」と言うのでした
☆*****☆
初めての給料日、
約束どおりにお金がもらえるのかな・・、
でも・・もらえたんです
内心、驚きました
逆に取られるんじゃないかと
心配していましたから...♪