協同組合 全日本洋菓子工業会(昭和36年設立)が発行している雑誌「PCG(Patisserie Confiserie Glacerie)」の2010年7月号(Vol.488)に「熱帯果樹写真館」より写真提供を行いました。
「PCG(7月号)」の特集記事は「世界のお菓子を巡る ~アジアの香り」です。
アジア産の熱帯果樹や甘味料、ハーブ等を素材とした美味しそうな洋菓子が紙面を彩ります。
その中で「素材コラム(p.27-29)」として「沖縄のフルーツ事情と、地元の食材で作るトロピカルデザート」と題して沖縄県産の熱帯果樹が紹介されています。
それら記事内容と写真に「熱帯果樹写真館」は協力しました。
私は「PCG」という雑誌を初めて手にしたのですが、写真は綺麗だし、お菓子は目にも美味しいし、何よりシェフ・パティシエの方が食材の魅力を語る内容が面白かったです。
その幾つかをとりあげると、
横田秀夫(菓子工房オークウッド オーナーシェフ)
(前略)
アジアの食材をお菓子に取り入れる際には、複数の国の食材を混ぜないよう注意しています。相性の良し悪しがあるし、ひとつのお菓子の顔を表現するには、似たり寄ったりになってしまうとお客様に伝わりにくい。それを心掛けた上でなら、他国の食材を組み合わせることは構わないと思います。 |
これは深い内容です。
例えば「
マンゴー」と一括りに言っても、国や地域で栽培されている品種は違います。
当然、品種が違えば味も違います。
同品種でも、地域や時期、年によって味は異なります。
「この様な味で、このお菓子を表現したい」というコンセプトがしっかりしていれば、イメージ通りの素材を揃えないといけないでしょう。
そのためには、最低限でも「複数の国の食材を混ぜない」という判断なのでしょう。
こういう拘りがあって、いつでも安定して美味しいお菓子を作ることができるのだと納得しました。
上村卓也(パティスリー「風と土」 シェフ・パティシエ)
(前略)
今回使用したマンゴスチンやドラゴンフルーツなど、アジアが原産の食材であっても、国産品を上手く取り入れて生きたいと思っています。
今興味があるアジアの素材は、カニステル(エッグフルーツ)。ナシやイモ、バナナに似た食感を持つ何とも表現しにくい変わったフルーツですが、新たな素材としての可能性を感じています。
(後略) |
今回の特集から、洋菓子業界が熱帯果樹に注目しているのは伝わりましたが、その中でも国内産の価値は外国産を上回ることを物語る一言が嬉しいです。
そして、希少な熱帯果樹であるカニステルに注目している点も、素晴らしいと思います。
私もカニステルは、お菓子の材料として脚光を浴びて良いと思っていました。
入手しづらい素材でも、その良さを認めてくださる料理人と生産者がタッグを組めば、新しい食の世界が広がることが確認できる力強いコメントです。
屋良景之(ルネッサンスリゾートオキナワ ペストリー/ベーカリーシェフ)
(前略)
例年、7月後半から出回るライチは生食に勝るものはないので館内のレストランのバイキングメニューとして出しますし、レンブのように一般的でないフルーツは、観光のお客様に果皮ごと見せないと分かっていただけないため、お菓子やデザートに加工することはしません。
(後略) |
流石は、地元沖縄県のリゾートホテルシェフです。
熱帯果樹を使い慣れていることが短い文章から伝わります。
ただ、ライチ(レイシ)の収穫時期は6月後半からだと思います(1ヶ月のズレは印字ミスか何かでしょう)。
また、お菓子に加工するだけではなく、素材そのものを見せて提供するのは どの様な場合か等の想定が細かいです。
レイシやレンブ等の珍しい熱帯果樹が食べられるホテルというのは、南国気分を一層引き立ててくれるものと思われます。
まだまだ、紹介したい内容はあるのですが、あとは皆様が手にとってご確認ください。
○参考サイト
・「
協同組合 全日本洋菓子工業会」
○参考文献
・「PCG(Patisserie Confiserie Glacerie)」.2010.2010年7月号(Vol.488).協同組合 全日本洋菓子工業会.