前回は、出蕾後の株ではどうしようもないけど、パインアップルの果実重量(以下、果重)を決定する重要な要因である「品種」と「出蕾前の株の大きさ」について説明を行いました。
今回は引き続き、条件付きではありますが、出蕾後の株においても果重を増加させることができる栽培管理技術として、「芽の整理による果重の増加効果」について説明を行います。
出蕾後に果重を増加させる栽培技術には、えい芽の除去(除えい芽)があります。
えい芽とは果梗のすぐ下に付いている芽のことです(図1)。
図1:パインアップルの各部位名称
(「沖縄の果樹パインアップル」.沖縄県農業協同組合.より抜粋・加工)
※茎に付いている葉を除去した状態です。
えい芽は、大きさが揃った苗が多く確保できる芽なので、次回の植え付けに必要な量を残し、余分なものを除去します。この「えい芽を除去する作業(除えい芽)」を行うことで品種によっては果重の増加が期待できます(表1)。
表1では、えい芽の処理を行わない場合に対して除えい芽を行った場合では、ソフトタッチ及びハニーブライト、N67-10のいずれの品種においても果重の増加が見られます。
しかし、統計的にみた場合では、除えい芽で果重に「有意差がある」のは、ハニーブライトだけです。
これは、各品種の株ごとの発生えい芽数が、ハニーブライトで約8本なのに対してソフトタッチでは約5本、N67-10で約1.5本であることに影響していると考えられます。
多くのえい芽が発生する品種では、除えい芽による果重増加の効果が表れやすく、えい芽発生数が少ない品種では効果が判然としないことが示唆されます。
因みに、表1で掲載されていない品種における株ごとの発生えい芽数は、ボゴールとサマーゴールドで約3.5本、ゴールドバレル約0.6本(出花ら.2007)と、沖縄県では除えい芽が必要ない(えい芽数が少ない)品種が選抜されている様です。
除えい芽以外の芽の処理に沖縄県のパイン畑で見かける方法に、果実上部にある「冠芽の芯を抜く(芯止め)」というものがあります。
しかし、芯止めを行ってもN67-10以降の品種では果重の増加は余り期待できない様です(表2、3)。
表2では、同一品種(N67-10)において地域を変えて芯止めによる果重の増加効果を確認していますが、いずれの地域でも統計的には「有意差なし」です。
表3では、表1と同様ソフトタッチ、ハニーブライト、N67-10の各品種で芯止めと除えい芽を組み合わせることにより果重の増加が見られるかを確認していますが、こちらも各処理区で統計的には「有意差なし」です。
つまり、N67-10以降の品種では、冠芽の芯を抜いても果重の増加は表れにくいことがわかります。
それでも、パイン農家が冠芽の芯止めを行うのは、冠芽サイズを抑えて倒伏防止や出荷時に箱詰めしやすくなる等の効果を狙うための様です。
また、収穫間際に冠芽を大きめに除去して生長点のある部分を苗として利用し、果実にも冠芽を付けて見栄え良く出荷すると云った考えもある様です(図2)。
図2:収穫後期に除去した冠芽の利用例
(沖縄県北部農業改良普及センター作成資料.2007. より抜粋・加工)
「芽の整理により果重を増加させる方法」のうち「除えい芽」は、出蕾後に果実を大きくするのに利用できる技術ですが、えい芽の発生数が多い(4本以上)品種や株での効果が現れやすいことが示唆されるため、「条件付き技術」と考えたいと思います。
この様に、出蕾後に果実を大きくするのは難しいことが解っていただけたと思います。
次回は果実品質を向上させる要因及び方法について書いてみたいと思います。
○参考文献
・「沖縄の果樹パインアップル」.JA沖縄経済連.
・「生食用パインアップル新品種の除えい芽による増収と高品質果実生産」.2001.沖縄県農業試験場名護支場.九州沖縄農業研究成果情報;第16号;p.201-202.農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター.
・「早生で大果の生食用パインアップル新品種「ゴールドバレル」」.2007.出花幸之介、池宮秀和、高原利雄、金城鉄男、正田守幸、比嘉ひろの、粟国佳史、大城和久、仲宗根福則、比嘉正和、添盛浩、喜納兼二、岩本由美、新崎正雄、上地邦彦、井上裕嗣.平成17年度 果樹研究成果情報;p.13-14.果樹試験研究推進会議・(独)農業・食品産業技術総合研究機構・果樹研究所.
・「パインアップルの芯止めは何のために必要?」.2007.沖縄県 北部農業改良普及センター.講習会資料.
今回は引き続き、条件付きではありますが、出蕾後の株においても果重を増加させることができる栽培管理技術として、「芽の整理による果重の増加効果」について説明を行います。
出蕾後に果重を増加させる栽培技術には、えい芽の除去(除えい芽)があります。
えい芽とは果梗のすぐ下に付いている芽のことです(図1)。
図1:パインアップルの各部位名称
(「沖縄の果樹パインアップル」.沖縄県農業協同組合.より抜粋・加工)
※茎に付いている葉を除去した状態です。
えい芽は、大きさが揃った苗が多く確保できる芽なので、次回の植え付けに必要な量を残し、余分なものを除去します。この「えい芽を除去する作業(除えい芽)」を行うことで品種によっては果重の増加が期待できます(表1)。
表1:除えい芽による果重の違いについて
(沖縄県農業試験場名護支場.2001 より抜粋・加工)
(沖縄県農業試験場名護支場.2001 より抜粋・加工)
表1では、えい芽の処理を行わない場合に対して除えい芽を行った場合では、ソフトタッチ及びハニーブライト、N67-10のいずれの品種においても果重の増加が見られます。
しかし、統計的にみた場合では、除えい芽で果重に「有意差がある」のは、ハニーブライトだけです。
これは、各品種の株ごとの発生えい芽数が、ハニーブライトで約8本なのに対してソフトタッチでは約5本、N67-10で約1.5本であることに影響していると考えられます。
多くのえい芽が発生する品種では、除えい芽による果重増加の効果が表れやすく、えい芽発生数が少ない品種では効果が判然としないことが示唆されます。
因みに、表1で掲載されていない品種における株ごとの発生えい芽数は、ボゴールとサマーゴールドで約3.5本、ゴールドバレル約0.6本(出花ら.2007)と、沖縄県では除えい芽が必要ない(えい芽数が少ない)品種が選抜されている様です。
除えい芽以外の芽の処理に沖縄県のパイン畑で見かける方法に、果実上部にある「冠芽の芯を抜く(芯止め)」というものがあります。
しかし、芯止めを行ってもN67-10以降の品種では果重の増加は余り期待できない様です(表2、3)。
表2:各地域の芯止めによる果重の違いについて(N67-10)
(沖縄県北部農業改良普及センター作成資料.2007. より抜粋)
(沖縄県北部農業改良普及センター作成資料.2007. より抜粋)
表3:各品種の芯止めによる果重の違いについて
(沖縄県農業試験場名護支場.2001 より抜粋・加工)
(沖縄県農業試験場名護支場.2001 より抜粋・加工)
表2では、同一品種(N67-10)において地域を変えて芯止めによる果重の増加効果を確認していますが、いずれの地域でも統計的には「有意差なし」です。
表3では、表1と同様ソフトタッチ、ハニーブライト、N67-10の各品種で芯止めと除えい芽を組み合わせることにより果重の増加が見られるかを確認していますが、こちらも各処理区で統計的には「有意差なし」です。
つまり、N67-10以降の品種では、冠芽の芯を抜いても果重の増加は表れにくいことがわかります。
それでも、パイン農家が冠芽の芯止めを行うのは、冠芽サイズを抑えて倒伏防止や出荷時に箱詰めしやすくなる等の効果を狙うための様です。
また、収穫間際に冠芽を大きめに除去して生長点のある部分を苗として利用し、果実にも冠芽を付けて見栄え良く出荷すると云った考えもある様です(図2)。
図2:収穫後期に除去した冠芽の利用例
(沖縄県北部農業改良普及センター作成資料.2007. より抜粋・加工)
「芽の整理により果重を増加させる方法」のうち「除えい芽」は、出蕾後に果実を大きくするのに利用できる技術ですが、えい芽の発生数が多い(4本以上)品種や株での効果が現れやすいことが示唆されるため、「条件付き技術」と考えたいと思います。
この様に、出蕾後に果実を大きくするのは難しいことが解っていただけたと思います。
次回は果実品質を向上させる要因及び方法について書いてみたいと思います。
○参考文献
・「沖縄の果樹パインアップル」.JA沖縄経済連.
・「生食用パインアップル新品種の除えい芽による増収と高品質果実生産」.2001.沖縄県農業試験場名護支場.九州沖縄農業研究成果情報;第16号;p.201-202.農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター.
・「早生で大果の生食用パインアップル新品種「ゴールドバレル」」.2007.出花幸之介、池宮秀和、高原利雄、金城鉄男、正田守幸、比嘉ひろの、粟国佳史、大城和久、仲宗根福則、比嘉正和、添盛浩、喜納兼二、岩本由美、新崎正雄、上地邦彦、井上裕嗣.平成17年度 果樹研究成果情報;p.13-14.果樹試験研究推進会議・(独)農業・食品産業技術総合研究機構・果樹研究所.
・「パインアップルの芯止めは何のために必要?」.2007.沖縄県 北部農業改良普及センター.講習会資料.