熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

「中央卸売市場2010」に行ってきました。

2010年07月23日 | イベント
 2010年7月18日。
 沖縄県中央卸売市場で開催された「中央卸売市場2010」に行ってきました。

 会場となる中央卸売市場は、野菜・果樹のセリ場、中卸店舗、花きのセリ場と3つのエリアに分かれていますが、その全てを使った大イベントです。

 中卸店舗エリアでは、豊富な熱帯果樹や野菜が格安で販売されていました(写真2)。



写真2:中卸で売られていた熱帯果樹



 そして、私が一番注目するコーナーは「第3回 沖縄県マンゴーコンテスト」です。
 今回は約80点の出展がありました。
 コンテストでは、果実外観だけでなく、箱詰めの状態や出荷鮮度、果実品質など多岐にわたった項目が審査されます。

 今年の最優秀賞(県知事賞)に輝いたのは、今帰仁村の上原勝二さん(写真3)。



写真3:最優秀賞のマンゴー果実



 今回、9点の入賞者のうち5点が今帰仁村というのは、驚きと納得の結果です。
 「沖縄県マンゴーコンテスト」の前段階に行われていた「やんばる美ら島マンゴーコンテスト(沖縄本島北部地域限定のマンゴーコンテスト)」でも今帰仁勢は、入賞の常連でした。

 マンゴーコンテストが行われてた区画の片隅に、マンゴー以外の果実や、珍しいマンゴーの品種果実、パインアップルの鉢物、果樹関連のパネル等の展示コーナーがありました(写真4)。



写真4:果実展示コーナー



 展示コーナーの左端からドラゴンフルーツ
 ここでは登録品種の「ちゅらみやらび」、「ちゅらみやらび」の登録者が育成したけど品種登録には至っていない「紅みやらび」、通常の「赤系」の果実が展示されていました(写真5)。



写真5:ちゅらみやらび&紅みやらび



 その横にはマンゴー果実。
 展示品種は「台農1号」「ヘーデン」「グレン」「リペンス」「バレンシアプライド」「玉文5号」「エドワード」の7種類でした(写真6)。



写真6:マンゴー7品種



 その次は、実生で得た様々な色や形のパッションフルーツ。

 その隣に、種子なしシークヮーサーの「仲本シードレス」の果実と鉢物が並んでいました。
 果実は比較用に種ありの「大宜味シークヮーサー(通常は「大宜味くがにー」と呼ばれている系統)」も並べられていました(写真7)。



写真7:仲本シードレスの展示



 そして、パインアップルの鉢物。
 「N67-10」「ボゴール」「ソフトタッチ」「ゴールドバレル」「ジュリオスター」の5品種の果実付き鉢物が展示されていました。

 この他にも、パインアップル試食会等の魅力的なコーナーもあり、見ごたえのあるイベントでした。

雑誌「PCG」に写真を提供しました

2010年07月04日 | ブログ運営
 協同組合 全日本洋菓子工業会(昭和36年設立)が発行している雑誌「PCG(Patisserie Confiserie Glacerie)」の2010年7月号(Vol.488)に「熱帯果樹写真館」より写真提供を行いました。

 「PCG(7月号)」の特集記事は「世界のお菓子を巡る ~アジアの香り」です。
 アジア産の熱帯果樹や甘味料、ハーブ等を素材とした美味しそうな洋菓子が紙面を彩ります。

 その中で「素材コラム(p.27-29)」として「沖縄のフルーツ事情と、地元の食材で作るトロピカルデザート」と題して沖縄県産の熱帯果樹が紹介されています。
 それら記事内容と写真に「熱帯果樹写真館」は協力しました。



 私は「PCG」という雑誌を初めて手にしたのですが、写真は綺麗だし、お菓子は目にも美味しいし、何よりシェフ・パティシエの方が食材の魅力を語る内容が面白かったです。

 その幾つかをとりあげると、


横田秀夫(菓子工房オークウッド オーナーシェフ)

(前略)
 アジアの食材をお菓子に取り入れる際には、複数の国の食材を混ぜないよう注意しています。相性の良し悪しがあるし、ひとつのお菓子の顔を表現するには、似たり寄ったりになってしまうとお客様に伝わりにくい。それを心掛けた上でなら、他国の食材を組み合わせることは構わないと思います。



 これは深い内容です。
 例えば「マンゴー」と一括りに言っても、国や地域で栽培されている品種は違います。
 当然、品種が違えば味も違います。
 同品種でも、地域や時期、年によって味は異なります。
 「この様な味で、このお菓子を表現したい」というコンセプトがしっかりしていれば、イメージ通りの素材を揃えないといけないでしょう。
 そのためには、最低限でも「複数の国の食材を混ぜない」という判断なのでしょう。
 こういう拘りがあって、いつでも安定して美味しいお菓子を作ることができるのだと納得しました。


上村卓也(パティスリー「風と土」 シェフ・パティシエ)

(前略)
 今回使用したマンゴスチンドラゴンフルーツなど、アジアが原産の食材であっても、国産品を上手く取り入れて生きたいと思っています。
 今興味があるアジアの素材は、カニステル(エッグフルーツ)。ナシやイモ、バナナに似た食感を持つ何とも表現しにくい変わったフルーツですが、新たな素材としての可能性を感じています。
(後略)



 今回の特集から、洋菓子業界が熱帯果樹に注目しているのは伝わりましたが、その中でも国内産の価値は外国産を上回ることを物語る一言が嬉しいです。

 そして、希少な熱帯果樹であるカニステルに注目している点も、素晴らしいと思います。
 私もカニステルは、お菓子の材料として脚光を浴びて良いと思っていました。
 入手しづらい素材でも、その良さを認めてくださる料理人と生産者がタッグを組めば、新しい食の世界が広がることが確認できる力強いコメントです。


屋良景之(ルネッサンスリゾートオキナワ ペストリー/ベーカリーシェフ)

(前略)
 例年、7月後半から出回るライチは生食に勝るものはないので館内のレストランのバイキングメニューとして出しますし、レンブのように一般的でないフルーツは、観光のお客様に果皮ごと見せないと分かっていただけないため、お菓子やデザートに加工することはしません。
(後略)



 流石は、地元沖縄県のリゾートホテルシェフです。
 熱帯果樹を使い慣れていることが短い文章から伝わります。
 ただ、ライチ(レイシ)の収穫時期は6月後半からだと思います(1ヶ月のズレは印字ミスか何かでしょう)。

 また、お菓子に加工するだけではなく、素材そのものを見せて提供するのは どの様な場合か等の想定が細かいです。
 レイシやレンブ等の珍しい熱帯果樹が食べられるホテルというのは、南国気分を一層引き立ててくれるものと思われます。

 まだまだ、紹介したい内容はあるのですが、あとは皆様が手にとってご確認ください。

○参考サイト
 ・「協同組合 全日本洋菓子工業会

○参考文献
 ・「PCG(Patisserie Confiserie Glacerie)」.2010.2010年7月号(Vol.488).協同組合 全日本洋菓子工業会.