4月になると沖縄県では、あちこちでピタンガの果実が色づいていました。
ピタンガは、認知度が低く(アセローラと混同されることも)、収穫後の日持ちが悪く、味に独特の風味(ヤニ臭いエグ味)があるため経済栽培はほぼ行われておらず、庭先栽培や畑の隅に散見される熱帯果樹です。
また、せっかく結実しても樹上で真っ赤に熟すまで着果させておかないとピタンガ本来の美味しさにならないことに加え、野鳥の大好物であるため栽培者も充分な量を食べられないことが珍しくありません。
ピタンガと言えば、以前当ブログで2010年1月10日に「ピタンガ(品種:ラバー)を接木しました」で優良品種を接木した例を紹介し、その続報として2011年2月25日に「接木したピタンガ「ラバー」が開花」を掲載しました。
今回はこれら記事の続報です。
優良品種「ラバー」接木から3年。
接木したピタンガの樹は2m程度の高さになり2月頃から出蕾・開花し、3~4月には多くの着果が見られる様になりました。
しかし、前述したとおりピタンガ本来の食味を得るためには樹上完熟が欠かせず、それは鳥の食害に遭うことを意味します。
記事前半は、あるピタンガ栽培者の「美味しく食べたい」「いっぱい食べたい」という食に対する飽くなき探求心と一筋縄では防げない害鳥タイワンシロガシラ(以下、シロガシラ)の戦いの記録を紹介します。
2013年1月、ピタンガの冬実が結実したにも関わらず、メジロの食害を受けました。
メジロは柑橘類をはじめ多くの果樹を加害するやっかいな害鳥です。
見た目は可愛いですが、可愛いだけで許されるものではありません。
そこで、ピタンガ栽培者K氏は、ピタンガ垣根の左右に1m間隔で鉄パイプを立て、パイプの先端にダンポール® と呼ばれるグラスファイバー製の園芸用支柱を差込みアーチ状に曲げ、ネットを被せる骨組みを作り対策をとりました(写真2~3)。
写真2.鉄パイプ、ダンポール® 、ネット等を組み合わせた簡易防鳥ネット
写真3.ダンポール® の端を鉄パイプに挿すだけ
この方法は、(独)農業・食品産業技術総合研究機構から2012年に刊行されている「防鳥網の簡易設置マニュアル(PDF:1.32MB)」を参考に行われています。
これで安心、と思ったのも束の間、ネット内にメジロがいました。
ネットを張る際に紛れ込んだのかと捕まえて追い出そうとすると、凄い勢いでネットに突進し、ネットに絡まったかと思った瞬間飛び出して行きました。
まさか?と思い、隠れてしばらく様子を見ると、外から飛んできたメジロが勢いよくネットに突進して一瞬ネットに絡んだかと思ったら、そのままネット内に侵入してピタンガ果実を食べているではないですか!
ネット目合い30mmではメジロの侵入は防げません。
悔しがるK氏の圃場を1週間後に再び訪れました。
ネットの目合いが細かくなっていました(写真4~5)。
写真4.簡易防鳥ネットver.02
写真5.今度は目合いが大きいところでも15mm
ネットの目合いを細かくすることで、メジロの侵入を見事防ぐことができました。
K氏が用いた被覆ネットは、廃材ネットや100円ショップ購入の格安ネットの繋ぎ合わせです。
防鳥ネットを縫い合わせる際は、サンライン® という農業用誘引ひもが良いそうです。
ネット内では、ピタンガ果実がたわわに実っています。
品種は「実生系」と「ラバー」。
せっかくなので、それぞれを試食してみます(写真6)。
写真6.「実生系」(左)、「ラバー」(右)
同じ環境で栽培すると、実生系に比べ「ラバー」の方が大きくなりがちで、色がより赤く、果実の張りが良い(実生系はデコボコが明確)のがわかります(写真7、8)。
写真7.ピタンガ「実生系」の果実
写真8.ピタンガ「ラバー」の果実
試食は人数を増やして行った方が意見の偏りが少なくなるので、収穫した翌日に職場の同僚たち8名の協力を得て行いました。
その結果、「どちらが好みか?」という質問に対しては「実生系」2票、「ラバー」6票となり、それぞれの品種(系統)への自由意見は表1の様になりました。
表1.ピタンガ品種(系統)別 食味アンケート結果
食味調査の結果、概ね良好だった様です。
ピタンガの風味は食べ慣れると嫌なものではなくなる傾向がある様です。
我が家の子ども達も真っ赤に熟したピタンガを自分でもいで食べまくります。
完熟状態ではアセローラより冷蔵保存できるピタンガは、もう少し評価が上がって良い果物だと思います。
○参考文献
・「防鳥網の簡易設置マニュアル(PDF:1.32MB)」.2012.(独)農業・食品産業技術総合研究機構.