沖縄県の新しい冬の味覚インドナツメ(Zizyphus mauritiana Lam.)の話です。
インドナツメは、インドやスリランカを原産とするクロウメモドキ科(Rhamnaceae)の常緑低木です(北野、1986)。
日本では馴染みが薄い果物かもしれませんが、インドでは3,000年以上前から栽培されていたそうです(米本・石畑、2010)。
近年では台湾で優良品種が相次いで育成され、生産量が増えています(棗主題館:台湾のサイト)。
そのためか、沖縄県でも数年前から苗木市等で種苗を見かける機会が増えました(関連:おきなわ花と食のフェスティバルに行ってきました(2007/02/04))。
私の知人K氏も、3年前から名護市で試験的に2樹のインドナツメを栽培しています。
これまでは、開花しても小さな果実しかならなかったり、食味も悪かったのですが、今年は「インドナツメが沢山結実したから見に来ませんか?」と嬉しいお誘いを受けました。
2月上旬にK氏のインドナツメを見せていただくと、確かにたわわに結実していました(写真1)。
しかも、いくつかの果実は果皮が黄緑になり、収穫適期になっている様に見えました(写真2)。
写真2.果皮が黄緑になったインドナツメ果実(2月上旬撮影)
早速、収穫した2果で糖度(以下、Brix)を計測しました。
2月上旬に収穫した2果の Brix は14.2%と15.4%で、平均 Brix は14.8%でした。
台湾におけるインドナツメの優良品種でBrixが12%以上と記載されていることから、かなり良い数値と考えられます(写真3)。
写真3.果実のBrixを測定。
(果汁は、不純物が入らない様に、茶漉し袋内で果実を絞り得ます)
これなら、「2月下旬からは本格的に収穫できるはず」とK氏も喜んでいました。
しかし天候は非常なもので、2月12日は名護市に50mm/日以上の大雨が降り、その後も曇天と雨と低温が続きました(図1)。
図1.名護市の気象データ 2014. 2/11~2/22。
(沖縄気象台のデータを抜粋・加工)
K氏のインドナツメは、ネット被覆ハウスで栽培しているので、雨の影響を受けたためか Brix が低下している様でした(K氏の好意で熟していそうな果実を食べまくった感想。また、同様の栽培方法でやはり糖度が下がった感じがすると別の栽培者からも情報提供がありました)。
とは言え、2月下旬に収穫した果実でインドナツメデータを取ることとしました。
果実サイズ、果実重の測定には2月下旬に収穫した40果を用いました(写真4)。
写真4.果実サイズ、果実重の測定に用いた果実(2月下旬撮影)。
そのうち、果実重と Brix で相関の有無を確認するため、様々なサイズの果実20果を用いて Brix の測定を行いました(写真5)。
写真5.Brixの測定に用いた果実。
(果実重別に写真4の果実を並べ、1つ飛ばしで果実を選び、果実重をばらつかせました)
計測の結果(平均値±標準偏差)は、縦径が5.2±0.3cm、横径が4.4±0.3cm、果実重が56.1±11.0g、Brix が12.4±1.6%となりました(表1)。
表1.2月下旬に収穫したインドナツメの果実データ
Brixは食味の予想通り2月上旬より低い値を示しましたが、食味は悪くなく、前述したインドナツメの良食味の目安になる Brix 12%以上はクリアしているので自信をもって収穫して良いと判断しました。
来年は平均果実重80g以上を目指し、幾つか栽培技術の改善を試みたいと思います。
〇参考文献
・北野至亮.1986.「熱帯植物要覧」.養賢堂.pp.285.(孫引き)
・米本仁巳・石畑清武 .2010.「栽培技術体系:インドナツメ」.農文協.
〇参考サイト
・「棗主題館」
・「沖縄気象台」
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