沖縄県では、ホワイトサポテ(Casimiroa edulis Llave & Lex)の花は12~3月に開花します。
品種や気象条件、樹の状態により開花時期が変わります。
ホワイトサポテの花は、形態上両性花ですが、花粉をもたない品種も多く、子房や柱頭の大きさと花粉の有無により3種類の花型に分類することができます(米本、2014)(参考:2010年01月22日記事)。
今回は、幾つかのホワイトサポテの品種の花を観察し、3種類の花型をより理解したいと思います。
花の写真が準備できた品種は、表1で赤下線を示した5品種です。
表1.今回花の写真が準備できた5品種
(石畑(2000)の表を抜粋加工)
まず、観察ポイントなる柱頭、子房、花糸および葯(花粉の有無)を確認するため、タイプⅢの「モルツビー(Maltby)」の花を観察します(写真2)。
写真2.ホワイトサポテの花の構造
タイプⅢ「モルツビー(Maltby)」の花
タイプⅢの「モルツビー」の花では、柱頭、子房および花粉のある葯(葯に黄色い粉が付いているのが花粉)の全てがあります。
野村(2002)は、ホワイトサポテにおける花の器官の大きさ等を調べ、子房と柱頭の大きさには高い相関がある(r=0.93)ことを確認しています。また、柱頭の大きさの指標として柱頭幅1.00mmを用い、タイプⅠ・Ⅲの品種では(柱頭>1.00mm)、タイプⅡの品種では(柱頭<1.00mm)と記しています。
次に受粉樹に用いられるタイプⅡの花として「エッジヒル(Edgehill)」「スーベール(Suebelle)」「バーノン(Vernon)」の花を観ます(写真3~5)。
写真3.タイプⅡ「エッジヒル(Edgehill)」の花
写真4.タイプⅡ「スーベール(Suebelle)」の花
写真5.タイプⅡ「バーノン(Vernon)」の花
タイプⅡの花は、タイプⅢの花と比べ柱頭が小さく、葯にたっぷり花粉が付いているのがわかると思います。
最後にタイプⅠの花として「スマザース(Smathers)」の花を観ます(写真6)。
写真6.タイプⅠ「スマザース(Smathers)」の花
タイプⅠの花は、柱頭と子房が大きく目立ちます。また、葯に花粉が見えません。花糸も短いと言われれば短い気がします。
ただし、「スマザース」は葉の裏に細かい毛が生えていることからC. tetrameria であることが推察されており、遺伝子マーカーを用いた分類図でも多品種と異なることが指摘されています(米本、2014)(図1)。
このため、タイプⅠの花は、別の品種を写真撮影する機会があれば再度紹介したいと思います。
ホワイトサポテ39品種のRAPDとPFLPマーカーによる分類図
スマザースとモルツビーはその他の品種と異なる。
(米本(2014)より抜粋)
受粉樹としてタイプⅠ・Ⅲを用いる際は全体の10%程度の量があれば良く(石畑、2000;Verheij and Coronel, 1991)、タイプⅢの「モルツビー」は、単一栽培でも自家結実性が高いのだそうです(米本、2014)。
ホワイトサポテの花型の違いを理解することで、その栽培がより効率的で楽しいものになることを期待します。
〇参考文献
・石畑清武.2000.「熱帯・亜熱帯果樹生産の新技術〔4〕-シロサポテ-」.農業および園芸;75巻第4号;pp.518~525 .養賢堂.
・野村哲也.2002.「シロサポテ品種の花の形状について」.鹿児島大学農学部農場技術調査報告書.
・米本仁巳.2014.「栽培の基礎 シロサポテ(ホワイトサポテ)」.農業技術大系 果樹編第7巻.農文協.
・Verheij, E. W. M. and R. E. Coronel. 1991. Casimiroa edulis Llave & Lex. In Plant Resources of South-East Asia No.2. Edible fruits and nuts. Pudoc (Wageningen) 113-114. (孫引き)