熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

良き道具にこそ匠あれ06  - 自作のグアバ収穫器 -

2016年09月04日 | グアバ

 「樹の高いところに着果したグアバの果実が穫りたい」と知人から相談を受けました。
 知人は高齢化のため、脚立に登って収穫作業するのが怖いとのこと。
 私が脚立に登って収穫しても良いのですが、果実の熟度にはバラツキがありました。
 知人は「毎日少しずつ完熟果を収穫したい」と希望していました。

 私は農場内を見渡し、その場にあった材料で「果実収穫器」を自作することにしました。
 私が作った「果実収穫器」の元ネタは、Facebook で見かけた動画ですが、そのときは記憶が頼りです。

○材料
 ・外径114mm VU(硬質ポリ塩化ビニル)管 18cm
 ・外径 22mm VP(硬質ポリ塩化ビニル)管 130cm
 ・ハンガー(金属製) 1本
 ・ネジ 2本
 ・肥料袋の切れ端
 ・ビニールテープ

○使用した道具
 ・油性マジック
 ・糸のこ(スパイラルソー)
 ・電動ドリル(インパクトドライバー)
 ・φ4mmドリル刃
 ・ペンチ
 ・やすり

○作り方
 1)VU管に切り取り線を油性マジックで描く。



 2)切り取り線に沿って糸のこ(スパイラルソー)で切る。



 3)VU管に直径4mmの穴を4箇所開ける。



 4)ハンガーを切り、VU管に取り付ける。



 5)VU管にVP管をネジで取り付ける。



 6)VU管の底になる箇所に肥料袋の切れ端を巻き付け、ビニールテープで固定する。



 7)糸のこで切った切り口をやすりで整える。

 作成に要した時間は、約40分です。
 完成品がこちら。







○使い方
 1)グアバ果実がVU管の切り口に入る様に操作する。



 2)果実がVU管内に入ったら、下に引きハンガー部分で果実のヘタに圧力をかける。



 3)(熟した果実であれば)果実がポトっと落ちる。



 4)手元に引き戻して果実を取り出す。




 後日談。

 「果実収穫器」作成の1週間後に知人を訪ねると、高所に着果していた果実はほぼ収穫を終えていました。
 知人からは「これイイよー。すぐりむん(優れもの)」との評価をいただきました。

 ただし、高木は収穫以外の樹管理も大変なもの。
 現在、このグアバ樹は、立ち枝に取り木をかけて、低木化(樹形改造)を行っています。



 この記事は、雑誌「現代農業」2017年9月号;p.200-201に掲載されました(2017.09.06.追記)。







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グアバセーキ&グアバパンケーキのレシピ。

2015年09月16日 | グアバ

 グアバは、ビタミンC含量が多いことやエキゾチックな香りが特徴の果物です。
 しかし、甘味が少ない系統が多く、細かく硬い種子がたくさん入っているため好んで食べない方が多い様です。

 そこで、今回は我が家で人気のグアバの使い方を紹介します。

Ⅰ.グアバセーキ
 グアバの果肉入りミルクセーキです。

1.材料(今回作った分量:5~6人分)
 ・グアバ4果(合計640g、うち果皮重量170g)
 ・牛乳250ml(300ml位の方が飲みやすかったかも)
 ・グラニュー糖30g(甘いのが好きな方は50g位入れても良いかも)



材料のグアバ4果。


2.作り方
 (1)グアバ果実の皮をリンゴの様に剥きます。



グアバの果皮を剥く。


 (2)グアバ果実を4分割程度にし、果肉を小さく切り分けます。



果肉を切り分ける。


 (3)ミキサーに(2)、牛乳、グラニュー糖を加え攪拌します。



果肉を牛乳、グラニュー糖と共にミキサーに入れる。




ミキサーで攪拌する。


 (4)果肉の塊がなくなったことを確認し、ボール内に設置したザルに移します。



果肉の塊がなくなったら、種子を漉す準備をする。


 (5)ザルで(4)を漉して種子を取り除く。



ゴムベラを用いると効率良く漉せます。


 (6)(5)をコップに注いで完成。



グアバセーキが完成!


 今回は、3~4人分をグアバセーキとして飲み、残りでグアバパンケーキも作りました。

Ⅱ.グアバパンケーキ

1.材料(今回作った分量:3人分)
 ・グアバセーキの残り(2~3人分)
 ・ホットケーキミックス1袋(200g)
 ・卵1個
 ・油少々



グアバパンケーキの材料


2.作り方
 (1)材料を1つのボールで混ぜ合わせます。



材料をボールに入れる。




ゴムベラで混ぜる。


 (2)熱したフライパンに油を敷き、(1)をフライパンに入れる前にフライパンの底面を濡れ布巾に当て粗熱をとります(後半の作業を行うことでパンケーキを焼く適温になります、慣れてきたら省略も可)。

 (3)フライパンを弱火にかけ、(1)を適量ずつフライパンに入れます。



生地を適量ずつ分けて焼く(弱火)。


 (4)生地上面が少し硬くなり、幾つか泡が出てきたら裏面の焼き具合を確認します。

 (5)裏面に焼き色が付いていたら裏返し、2分程度弱火で熱し続けます。



焼き色が付いたら裏返す。


 (6)両面に焼き色が付いた頃に、串やフォークを刺しても生焼けの生地が付かないことを確認します。

 (7)お皿に盛り付けて完成。



グアバパンケーキも完成!


 少しグアバ風味がするパンケーキが特別な雰囲気を演出してくれます。

 調理作業も果皮を剥くところ以外は、小さな子どもと一緒にできる簡単な作業だけです。
 休日の朝食やおやつにお子さんと一緒に作ってみても楽しいと思います。




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グアバはビタミンCが豊富な果物です。

2015年08月27日 | グアバ

 沖縄県では庭先、畑の隅、空き地や様々な場所にグアバの樹があります。
 グアバは新芽と共に花芽が着く性質があるので、意図的な剪定が行われていなければ春先(4~5月頃)に萌芽と花芽分化し、5~6月頃に開花盛期となります(写真2)。



写真2.グアバの花。


 それらの果実が収穫されるのが8~9月頃なので、沖縄県中央卸売市場へのグアバ入荷量もその時期が多くなります(図1)。



図1.沖縄県中央卸売市場における月別グアバ入荷数量(2010~2014年)。

 
 沖縄県でのグアバは、主に自然着果で粗放栽培されているものが多いことに加え、実生繁殖による品質のバラツキが大きいため、評価の高い果物とは言い難いかもしれません。

 しかし、グアバはビタミンCが豊富に含まれている果物なのを知っていますか?

 「沖縄県果樹栽培要領」に掲載されている26品目中、文部科学省の「食品成分データベース」で成分含量が示されているのは14品目です。
その14品目で可食部100g当たりのビタミンC含量を多い順に並べると、グアバはアセローラに次ぐ2位になります(図2)。



図2.熱帯果樹のビタミンC含量。
参考サイト:「食品成分データベース」.文部科学省.


 アセローラは桁違いに単位重量当たりのビタミンC含量が多い果樹ですが、グアバも3位以下をダブルスコア以上で引き離す精鋭と云えます。

 蛇足ですが、「ビタミンCたっぷり(豊富、多い)等」と表現するには、東京都の食品安全サイト「食品衛生の窓」によると24mg/100g以上あれば良いのだとか・・・。
 グアバのビタミンC含量 220mg/100gが如何に豊富なのかが伺えますね。

 ところで、ビタミンCと云うのは1日どの程度摂取すれば良いのでしょうか?
 厚生労働省から刊行されている「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書によると、ビタミンCの推定平均必要量の目安は成人で83.4mg/日とされ、推奨量は100mg/日とされています。

 それでは、ビタミンC100mg/日をグアバで摂取するためには、どの程度のグアバを食べれば良いのでしょうか?
 先ほどの「食品成分データベース」では、グアバのビタミンC含量は220 mg/100g、廃棄率(果実重のうち果皮重と種子重の合計値の割合)が30%であることが示されています(表1)。



表1.「沖縄県果樹栽培要領」に記載されている品目のビタミンC含量および廃棄率。


参考サイト:「食品成分データベース」.文部科学省.


 と言うことは・・・、約65gのグアバ果実を摂取すれば成人の1日当たりのビタミンC推奨量が摂取できることになります。
 約65gのグアバと言っても、ピンときません。
 とりあえず、手元にあったグアバを計量してみると、1番小さいもので100g、一番大きなもので280gありました(写真3)。



写真3.グアバの大きさと重さの目安。


 グアバは小さな果実でも1果食べると充分なビタミンCが摂取できそうです。
 グアバは簡単に食すことができ、一手間加えると美味しい加工品にもなります。

 次回は、グアバを使った美味しいレシピを紹介します。

○参考サイト
 ・「食品成分データベース」.文部科学省.
 ・「食品衛生の窓」.東京都福祉保険局.
 ・「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書.厚生労働省.

○参考資料
 ・「沖縄県果樹栽培要領」.2011.沖縄県農林水産部.




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グアバを取り木で殖やしました。

2015年08月26日 | グアバ

 2015年3月中旬。
 知人から「グアバの苗を殖やしたい」と相談を受けました。
 しかし、グアバの繁殖は実生(種子)で殖やすと形質(その樹の特徴)が安定しません(化けます)。(参考:「グアバは種で増やすと化ける話 2009/10/06」。

 そこで有望な果実を着ける樹を見つけ、殖やしたいと思った際は栄養繁殖(接ぎ木 or 挿し木 or 取り木)を行います。
 今回は知人は「少量で良いので、早く結実する苗が欲しい」と言うので、取り木を行うことにしました。

 取り木の手順を以下に記します。

 (1) 取り木に適した太さ(直径)3~4cm程度の立ち枝を選ぶ。
 (2) 取り木用ハサミ「グリーンカット10」を用いて、幅1cmの環状剥皮を行う(写真2、3)。
 (3) 環状剥皮した箇所に水に濡らし、硬く絞ったミズゴケを巻き付ける(写真4)。
 (4) ビニール片(私は肥料袋の切れ端を使用)でミズゴケを包み、ビニールテープで固定する(写真5)。



写真2.「グリーンカット10」で環状剥皮を行う。




写真3.環状剥皮の幅は1cm。




写真4.硬く絞ったミズゴケを巻く。




写真5.ビニール片で包み、ビニールテープで固定する。


 ここまで終えたら、数ヶ月間放置します。
 今回は3月中旬に(1)~(4)の作業を行い、以下の(5)~(9)の作業は6月下旬に行っています。

 (5) 発根した頃を見計らい、ビニールを除去して発根を確認する(写真6)。
 (6) ミズゴケの下の部分で枝を切り取る(写真7)。
 (7) 発根した根に対して枝葉が多すぎるので、枝葉を整理する(写真8)。
 (8) 肥料分が少なく、排水性が良い土を用いて鉢上げをする(写真9)。このとき、根の付近に緩行肥料の「IBワンス」を1粒/苗を施用することで半年程度は肥料切れの心配がなくなります(「IBワンス」だと根焼けの心配がありません)。
 (9) 苗の品種(系統)を忘れない様にラベルを付ける(写真10)。



写真6.発根を確認。




写真7.ミズゴケを巻いた箇所のすぐ下から切り離す。




写真8.根の量に合わせて枝葉を整理する。




写真9.鉢上げ。




写真10.品種(系統)を忘れない様にラベルを付ける。


 ラベルを作る際に用いた紙は、ユポ紙(ポリプロピレンを主原料とするフィルム法合成紙;水で溶けない紙:選挙のポスターや投票用紙で用いられる合成紙)で作られたカレンダーの裏紙を用いています。
 ユポ紙に鉛筆書きで書いた文字は野外でも3年間消えません(油性マジックだと1年以内に消える・・・)。
 このラベルをホッチキスで固定しておけば、ホッチキスの針が錆びるまで(概ね1年強)はラベルが維持されます。

 この様に取り木をかけて約3ヶ月半、取り木苗を鉢上げして約1ヶ月半後、新しい葉も繁り立派なグアバ苗が育成できました(写真11)。



写真11.鉢上げ約1ヶ月半のグアバ取り木苗。





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「紫グアバ」は追熟しない?

2012年10月29日 | グアバ

 2012年9月12日に「「紫グアバ」をもらいました」という記事を書きましたが、9月14日に再び「紫グアバ」をもらいました。
 2回目は樹上でまだ硬いけれども十分に肥大している果実を2果もらいました。

 何故、硬い果実をもらったのか?
 それは「紫グアバ」が追熟するか否か確認したかったからです。

 果実収穫から3日後に果実表面が柔らかくなりました。
 しかし、触り心地はゴムの様な妙な弾力でした。
 
 これ以上保管すると果実品質が低下しそうだったので、前回同様の果実データを測定しました(写真2)。



写真2.硬い状態からやや柔らかくなった「紫グアバ」断面



○果実A
 収穫日:2012年9月14日
 試食日:2012年9月17日
 果実重:79.7g
 果実サイズ(縦径×横径×横径):59.1mm×51.8mm×49.4mm
 果肉厚:上部;19.6mm、横部;7.2mm
 Brix:8.7

○果実B
 収穫日:2012年9月14日
 試食日:2012年9月17日
 果実重:59.2g
 果実サイズ(縦径×横径×横径):47.8mm×46.5mm×47.3mm
 果肉厚:上部;9.1mm、横部;7.2mm
 Brix:11.8

 どちらの果実のBrix値も前回の樹上で柔らかくなった果実と同等の値を示しています。
 しかし、実際に食べた感覚では甘味はなく、ぼそぼそしていて、正直果物として価値を見出せませんでした。

 このことから、「紫グアバ」は上手く追熟しない系統と考えられます。
 また、果実品質をBrixで表現する場合は、事前にBrixと甘味に十分な相関があるか否かを調査する必要があると思いました。

 やはり「紫グアバ」は観賞用の系統かもしれません・・。

「紫グアバ」をもらいました

2012年09月12日 | グアバ

 2012年9月上旬に知人から「紫グアバ」をもらいました。
 「紫グアバ」は、沖縄県内では多くはありませんが庭木等で見かけることがあります。
 これまで花や果実を見る機会はありましたが、今回は樹上で柔らかくなった果実を食する機会に恵まれましたので、報告したいと思います。

 「紫グアバ」の食味等に触れる前に、「紫グアバ」が文献上でどの様に記載されているかを確認します。
 私は「紫グアバ」について書かれた文献を余り知りませんが、台湾の果樹図鑑「台灣蔬果實用百科3」に「紫グアバ」の写真とわずかな記述があります。
 それによると、台湾では「紫グアバ」は「紅皮拔(赤皮グアバ)」と呼ばれている様です(写真2)。



写真2.「台灣蔬果實用百科3」に掲載されている「紅皮拔」の写真



 さらに

●品種
 (中略)
 観賞用品種種有紅皮拔、香拔、草苺番石榴等。

 観賞用の品種として「紅皮拔(赤皮グアバ)」、「香拔(香りグアバ)」、「草苺番石榴(ストロベリーグアバ)」等がある。(ねこがため訳)



 という風に、「紫グアバ」である「紅皮拔(赤皮グアバ)」は観賞用品種として紹介されています。
 そのため、私は「紫グアバ」について特に興味を示していませんでした。

 とは言え、樹上完熟果を食する機会があれば、一応データを取りたくなるのがマニアです。
 以下、今回得た「紫グアバ」に関するデータを記します。


 収穫日:2012年9月4日
 試食日:2012年9月5日
 果実重:88.7g
 果実サイズ(縦径×横径×横径):48.8mm×58.3mm×57.7mm
 果肉厚:上部;12.8mm、横部;10.8mm
 Brix:9.8

 「紫グアバ」の最大の特徴は果肉色が紫色なことです(写真3)。これは珍しい果肉食の果物であるだけでなく、他の果肉色のグアバと混ぜて彩りを豊かにできる=グアバという果物の魅力向上に繋がりそうです。



写真3.「紫グアバ」の果実
(左:果頂から見た果実、右:果実縦断面




 果実サイズは一般的なグアバより小ぶりです。
 食味はBrixの数値(Brix:9.8はグアバとしては、やや高め)より薄味な印象を受けました。酸味がとても少ないことと関連しているかもしれません。
 食感はクリーミー(石細胞は僅か)で、果肉が厚く、種子が少ない様でした。
 香りは少なく、全体としては「小ぶりで風味は薄いが嫌な感じはない」という感想を得ました。

 樹勢が強い感じがしないので、収量は低めかもしれませんが、全くの戦力外として見ていたのは改めた方が良いかもしれません。
 果物は先入観に捉われずに食べてみることが大切だと改めて思いました。


〇参考文献
 ・「台灣蔬果實用百科3」.薛聰賢.2001.台湾普緑出版部.

台湾のグアバに係る備忘録

2011年10月03日 | グアバ

 2011年の春に台湾の花蓮から来沖されたL氏と通訳のJさんに教えてもらったグアバに関する情報の備忘録。
 L氏は、グアバの専門家ではないので世間話の一環として話を伺いました。

 以下にL氏から伺った話題をQ&A方式で記します。


Q1:台湾ではグアバは「番石榴」や「芭楽」と呼ばれていますが、2つの呼び方に何か使い分けがありますか?

A1:「番石榴(ファン シゥーリュー):Fān shíliú)」は、果肉がピンク色で柔らかくなるタイプのグアバで、主に加工用に用いられている。
 「芭樂(バァラァ:Bālè)」は、台湾語での表現。主に果肉が硬く、食感がサクサクしているタイプ(非追熟型)のグアバに用いられる。
 果物として食べるグアバには「芭樂」が使われることが多い。


Q2:台湾では果物用のグアバとして、果肉がネットリしたタイプとサクサクしたタイプのどちらが好まれていますか?

A2:サクサクしたタイプが好まれている。ネットリした食感のグアバは、鮮度が低いイメージがある。


Q3:台湾のグアバの品種名は「珠珍拔」や「水晶拔」がありますが、この「拔」とは何ですか?

A3:「拔(バァ:Bá)は「芭樂」と同じ音で、グアバのことを指す。「珍珠拔」は「真珠グアバ」という意味である。


Q4:台湾ではグアバの品種は変遷が激しい様ですが、今後有望な品種はありますか?

A4:最近開発された「帝王拔(Dìwáng bá、ディーオァンバァ)」は農家からの反応が良い様だ。しかし、どの地域でどの程度の量まで増やす等の具体的な話は知らない。


 * * * 以下は上記のQ&Aに対する補足です。 * * *  

 A1の「番石榴(ファン シゥーリュー)」は、沖縄県でグアバを指す方言「バンシルー」の語源と考えられています。
 グアバの和名の1つに「バンジロウ」というものがありますが、これは「バンシルー」が訛った節と「人名説」があります。
 沖縄では人名の「次郎」は「ジラー」と発音するので「万次郎」なら「バンジラー」となり語尾が異なります。
 だから、人名説より台湾語語源説を推したいです。

 A2の台湾の方が「ネットリした食感のグアバは、鮮度が低いイメージがある」と言ったのは、あくまでイメージの話です。
 グアバには「追熟型」と「非追熟型」の2タイプがあります。
 「追熟型」のグアバは、沖縄県でお馴染みのネットリした食感のグアバです。
 しかし、「追熟型」は果実が柔らかいために輸送性が悪く、店持ちもよくありません。
 そのため、台湾をはじめとする東南アジア等では、市場流通するのはサクサクした食感の「非追熟型」グアバになります。
 食べ慣れれば、どちらのタイプも美味しいので、国内でも「非追熟型」が生産、認知されれば良いと思います。

 A3の「拔=グアバ」は想像はしていましたが、これまで台湾の方に直接確認する機会がありませんでした。
 確認できてスッキリしました。

 A4の「帝王拔」は、台湾の農業試験所鳳山分所が2006年に品種申請した「台農1号」のことです。
 母本は「珍珠拔」、父本は「小葉無籽拔」とされています。

 その他、本記事の台湾語発音記号は、「google翻訳」サイトの発音記号を参考にしました。
 ただ、私の耳には「芭樂(バァラァ)」の「バ」は「バとパの中間音」の様に聞こえました。


○参考文献
 ・「番石榴新品種 台農1號(帝王拔)之育成(グアバ新品種 台農1号(帝王拔)の育成)」.2006.謝鴻業、王智立、楊淑惠、王徳男、劉政道、林慧玲、謝慶昌、陳幼光.農常試験所技術服務;第67 期;pp.1-4.農業試験所鳳山分所.

○参考サイト
 ・「Google 翻訳



グアバは種で増やすと化ける話

2009年10月06日 | グアバ
 当サイトの掲示板で「グアバは種から育てると、親の果実とは別の品質の果実がなります(人間の子どもが親とは別人なのと同じ)」と書き込んだところ、予想以上の反響がありました。
 そこで、グアバの実生繁殖と果実品質について、もう少し詳しく書きます。

 まず、グアバには様々な系統があります。

 グアバは、果形により「洋梨型 pyri-form(var. pyriferum Linn.)」と「苹果(リンゴ)型 pome-form(var. pomiferum Linn.)」に大別され、さらに洋梨型をpear guava(果面青淡黄色平滑、果肉白~淡緑、甘味多、肉質軟、強香気の多数優良品種を含む一群)とkafir guava(別名:caffree guava)(大果で果面にイボ状突起と溝があり、外見がシトロンに似て、品質やや良、一花叢3果を結ぶことがある一群)に分類されます(岩佐、2001)。



写真1・2:グアバの果型:洋梨型(左)と苹果(リンゴ)型(右)


 また、沖縄県の栽培現場では、果形よりも果肉色を重視する傾向があり「赤肉系(ピンク肉系含む)」「白肉系」「黄肉系」等と呼ばれることが多い様です。



写真3・4:グアバの果肉色:左から赤肉、白肉、ピンク肉



写真5:グアバの果肉色:黄肉


 さらに、最近では果実収穫後に追熟し果肉が軟らかくなる「クライマクテリック型」品種と果実収穫後は追熟せず果肉が固い「非クライマクテリック型」品種という分類が加わっている様です(謝、2005)。

 この他に「果実の大小」「糖度の高低」等の様々な要因が加わり、グアバには多くの系統があります。

 この多くの系統が、それぞれ交雑(所謂、異系交雑)するわけですから、偶発実生から生じる株の果実特性は、これまたバラツキます。
 グアバが栽培されている世界各地の熱帯地域では、私が知る限り例外なくグアバは偶発実生により多系統が生じている様です。
 マレーシアの農政省では、グアバ導入初期(~1970年)は7品種しか記録がありませんでしたが、1990年には31種類の地域品種が記録されていたという報告もあります(Wong、1990).

 そのため、もし偶発実生で優良な特性を示すグアバが得られた際は、栄養繁殖(接木、取り木、挿し木等)で増やさなければ、親樹の優れた特性は受け継がれません。
 ただし、私の経験上、グアバの接木(切り継ぎ)はなかなか成功しません。取り木で増やした方が無難かもしれません。
 因みに、台湾では寄せ接ぎ、マレーシアでは芽接ぎの成功率が高いとされています。
 
○参考文献
 ・「図説 熱帯の果樹」.岩佐俊吉.2001.㈱養賢堂.
 ・「植物保護図鑑系列 番石榴保護」.謝鴻業.2005.台湾省行政院農業委員会動植物防疫検疫局.
 ・「THE MAJOR FRUITS - AN OVERVIEW」.William W. W. Wong.1990.IN-HOUSE WORKSHOP ON FRUITS.ARS, Tenom.