熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

トゲバンレイシを食べました

2006年05月21日 | トゲバンレイシ
 幸運なことに、先日トゲバンレイシの果実を食する機会に恵まれました。



 私はこれまでトゲバンレイシを食したことがなく、土橋豊著「熱帯の有用果実」に記された「果汁は酸っぱく、リンゴ、バナナ、パインアップルを合わせたような味と芳香」という美味しそうな記述に、いつかはトゲバンレイシ食べたいなぁ、と憧れていました。

 これまでも石垣島、西表島でトゲバンレイシが結実している風景は何度か確認しているのですが、結実しているのが夏であるため十分に熟する前に台風により落果させられる、収穫しても珍しい果樹であるため私の口に入らない等の理由からトゲバンレイシを食する機会を逃し続け、悔しい思いを重ねてきました。
 しかし今回は、これまでとは逆に幾つかの幸運が重なり、遂に私がトゲバンレイシを食べる順番が巡ってきました。



 今回いただいた果実は、収穫後の保管期間が長かったためか、冷蔵庫に入れたためか、果皮がやや褐色っぽく変色しており、果肉もかなり柔らかくなっていました。



 しかし、一刀両断してみると果肉は文献にあるとおり白く美しかったので安心しました。
 さらに果実を縦方向に切り8等分してから、横方向に3cm幅程度に切りました。
 以前に当ブログで紹介した「アテモヤの食べ方」の下段の様な感じです。

 切り分けられた果実のパーツを取り果肉に齧り付きますと・・・。
 海綿質の果肉から薄い酸味と爽やかな芳香を伴った果汁が口中に広がります。
 それでもトゲバンレイシの食味は、同じバンレイシ科の果樹アテモヤバンレイシが濃厚な甘さで口に入れるなり強烈なインパクトがあるのと比べると地味な味わいと言えます。

 トゲバンレイシの食味・食感はかなり独特です。
パンか麩(ふ)を甘味より酸味を強調し、フルーティーな風味を加味した「森永ヨーゴ」又は「マミー」と云った乳酸菌飲料に浸した様です。

 正直初めの一口は「これで良いのか?」と思いました。
 幸い一緒に食べていた方がトゲバンレイシを幾つか食べたことがあり、この方のコメントが「このトゲバンレイシは食べやすい。美味しいよ」とのことだったので、私も安心して食べました。

 食べなれてくると無意識に口に運ぶ様な食べやすい果樹であることがわかりました。
 そして美味しいのは豊富に含まれる果汁であることも、果実が必要以上に大きいこともわかりました。
 つまり、トゲバンレイシの果実が簡単に手に入るのであれば、果肉をガーゼが何かで漉して一気に絞ってジュースにします。
 と云うか、それがトゲバンレイシの産地における一般的な味わい方であるというのに強く納得しました。

 最後に、味わったことのない果物の味を表現するのに、既知の果物等の食味を参考に書くことがよくありますが、第三者に的確に伝えることはとても難しいと思いました。
 トゲバンレイシは国内での入手は困難ですが、機会があれば食してみる価値ありの熱帯果樹です。