羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

佐治嘉隆写真:きらら組曲2006

2006年05月30日 19時09分56秒 | Weblog
 和名「きらら」は、中国名で「雲母」である。
 雲母は日本人にとって馴染み深い鉱物である。
 たとえば「忠臣蔵」の悪役・吉良上野介のこと。「吉良」は、「きらら」の「きら」で雲母のことである。愛知県幡豆郡(はずぐん)吉良町が、上野介のふるさと。ここは鎌倉時代から雲母の産地であった。このあたりを領地としていた一門が吉良姓を名乗り、その子孫の一人が上野介というわけだ。

 それから「きらら引き」。これは雲母の粉を混ぜてきらきらした和紙をつくる。そのほか絵の上から雲母の粉をふりかけて絵をきらきらと光らせる「きらら刷り」など。江戸時代から「きらら」を使った技法が今に伝わっている。

 そして時代は下って、壊れた真空管のなかから雲母片を取り出すのが子どもの楽しみであったり、アイロンやトースターからも雲母は出てきて驚かされたり。もちろんストーブの窓にも使われていた記憶を呼び起こしていただきたい。
 雲母は、絶縁性にすぐれ、電気も熱も伝えない性質をもっている。そのうえ、「千枚はがし」という別名から想像がつくように、簡単に薄く剥がすことができる。これは結晶構造が層状になっていて、層と層をつなぐ引力が弱いためらしい。

 雲母は世界各地から産出するポピュラーな鉱物だ。その色は、白・黒・紅・金・緑・黄色と、地球上に存在するほとんどの色を網羅している。
 鱗片状の集合体は鱗雲母と呼び、とりわけ微粒のものは絹雲母と呼ばれる。この微粒子は女性の美白効果を上げる化粧品にはなくてはならない材料である。

 地球を彩り、文化に生き、暮らしに役立ち、女性を美しくする雲母は、ありふれた鉱物であるゆえに貴重なのである。堀秀道氏は「ビルのガラスに、砕けても安全な雲母を!」と提唱しておられるが、雲母を窓枠にはめているビルにお目にかかっていない。もし、東京に色とりどりの雲母の窓がきららに輝くビルがあったら、新名所になることに違いない。

 さて、写真家・佐治嘉隆撮影による12枚の写真が奏でる「きらら組曲2006」は、6月2日からはじまる「第19回東京国際ミネラルフェア」会場に展示する予定だ。
 場所は、スペースセブンのあるセンチュリーハイアットとつなっがっている第一生命ビル1階ロビーの特別展会場である。ここは、入場無料なので、気軽にお立ち寄りください。

 参考資料:堀秀道著『楽しい鉱物図鑑』草思社 
『鉱物と宝石の博学事典』日本実業出版 
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