アマゾン・キンドル(Amazon Kindle)は、Amazon.comが製造・販売する電子ブックリーダーデバイス・ソフトウェアおよびサービスである。2007年11月19日にアメリカ合衆国で発売が開始され、2009年2月より第2世代のKindle2が発売された。2009年6月26日には9.7インチディスプレイを搭載し、PDFリーダーを標準搭載したKindle DXが発売された。
第2世代のKindleの価格は発売当初399ドル(約4万円)であったが、その後何度かの値下げを経て2009年10月6日より259ドル(約2万3000円)で販売されている。Kindleは日本を含む海外市場では2009年10月19日に発売された(発売価格270ドル。10月22日に259ドルに価格改定された(約2万3000円))。現在のところ日本語の書籍は購入できないが、日本語を含むPDFの表示に対応している。
高精細大画面のKindle DXは、2010年1月19日(日本時間1月20日)に米国外にも出荷開始された。 日本で購入するには、本体:$489.00の他にShipping&Handling:$26.97とImport Fees Deposit:$34.96が掛かる(2010年1月20日時点)。
特徴
電子ペーパーの一種であるE Inkを使う。同種の機器に対する強みは、携帯電話網を利用した高速通信を利用することで、PCを介さずに電子書籍や新聞記事がダウンロードできる点にある。携帯電話会社との契約は不要で、アマゾン・キンドルのサイトとウィキペディアのサイトであれば無料で接続できる(通信料をAmazon.comが負担する)。それ以外のサイトは有料となる予定であったが、2009年8月現在無料である。また、ニューヨーク・タイムズなどの新聞、タイムなどの雑誌、各種ブログをそれぞれ有料で購読できる。購読しているコンテンツのダウンロードは自動的に行われる。2009年8月時点では対応フォントは英語とギリシア文字のみ。
またキーボードによる入力が可能であり、内蔵されている辞書での検索やノートをとるのに使える。
USBケーブルでコンピュータと接続してファイルの移動が可能だが、HTMLやPDF、Microsoft Wordのドキュメントファイルなどのフォーマットを直接読むことはできないため、Mobipocket社が配布する無料ソフトかアマゾン・キンドルのサイトでの変換が必要になる。
仕様
2010年初頭時点で、小型のkindle2と大型のkindleDXが入手可能である。kindle2は、当初、初代と同じくSprintのEV-DO接続によるUS版と、HSDPA網接続による国際版があったが、US国内版は、生産中止となり、アメリカ国内でも、国際版のみの販売になっている。
kindle
ディスプレイ:600×800ピクセル、4階調グレースケール (Kindle2は16階調グレースケール)
サイズ: 19.1cm×13.5cm×1.8cm、 292g
内部メモリー: 180MB, 約200冊の本を記憶できる (Kindle2は2GBの内部メモリー)
外部記憶: SDメモリーカード (Kindle2よりSDカードスロットは廃止された)
充電式電池寿命: 2日(HSDPA通信常時ON)から1週間(HSDPA通信常時OFF)
サポートするファイルフォーマット: AZW(キンドル専用), TXT, PDF, MOBI, PRC (".MOBI"および".PRC"はフランスで開発されたMobipocket形式の電子ブックファイル)
付属辞書: The New Oxford American Dictionary.
ウェブブラウザ: Basic Web (JavaScriptとSSLをサポートするがFlashには対応していない)
通信方式: HSDPA network (Wi-Fi機能はない)
電子ブックライブラリー: アマゾン書店の88000冊を有料でダウンロードできる。また、Mobipocket形式の欧文書籍のうち、無料ダウンロードが可能なものを読むことができる(Mobipocket形式でも有料のものは読むことができない)。全ての本の第一章もしくは最初の数ページはサンプルとして無料。
kindleDX
ディスプレイ:9.7インチ、824×1200ピクセル、16階調グレースケール
サイズ:約264mm×約183mm×約9.7mm、約536g
内部メモリ:4GB、約3500冊が保存可能。
評価と批判
音楽や映像がデジタル化されたのと同様、本のデジタル化もソニー・リーダーをはじめとして過去に様々な試みが行われているが、商業的に成功しているとは言い難い。Amazon.comは「本のためのiPod」をコンセプトに開発に3年を費やし、2007年11月にキンドルが発売となった。過去の失敗を克服するために、次のような点が特徴になっている。
デジタル版の本はベストセラーの本で約10ドルと、通常の本より安い。
PCを使ってダウンロードする必要がなく、どこにいても1分以内に1冊の本がEV-DOを介して送られてくる。また携帯電話会社との契約が不要である。
端末が省電力で電池寿命が極めて長い。
初代モデルに対する批判としては、端末の値段が非常に高価である、端末のデザインが悪い(両側面が全てボタンになっており、どこを持っても間違ってボタンを押してしまう)、PDFファイルが読めない、ダウンロードした本のテキストはDRMで保護されておりPCやPDAでは閲覧できない、読み終わった本を人にあげることができない、もしくは古本として売買できない、端末の故障や紛失によって情報が全て失われてしまう、ディスプレイがカラーではない、電子ペーパーの特性としてディスプレイの応答速度が遅い、などがあったが、Kindle2(第二世代)やKindleDX(大型電子ペーパー搭載モデル)ではデザインが改良されたりPDFビューワーが搭載(Kindle2,KindleDX)されたりすることで改善されてきている。
当初の販売は順調とは言いがたかった。Amazon社は発売から2010年2月現在に至るまで販売台数を発表していないが、発売開始からおよそ1年後の2008年11月での推定では約24万台のみ売れたとされ、ヤフーテクノロジーサイトなどでも、2008年のワースト製品に選ばれた。しかしその後2009年の第四四半期には、全世界でおよそ150万台が売れたとされている。
アマゾンは2010年01月21日に、作家または出版社が設定した価格が2.99~9.99ドル、電子書籍の価格が紙媒体の書籍の最低価格より20%以上安いなどの条件を満たした場合に、作家や出版社に支払う印税を、電子書籍の表示価格の35%から70%に引き上げた[15]。さらに、キンドル向けアプリケーション開発キットの提供を発表した。
ビジネスモデルとしてのキンドル
米国では一般に新刊本の単行本の定価は27ドル程度、デジタル版の定価は20ドルである。小売店は10ドル程度でデジタル版を仕入れ、16ドル程度で売るのが慣習になっている。たとえばソニー・リーダーのオンラインストアでは大半のベストセラーが16ドルで販売されている。Amazon.comはこれを9.99ドルで売り、しかもEV-DOを提供するスプリント・ネクステル社への通信料はAmazon.comが肩代わりして支払う。このため、新書からの利益はまったく出ない。
しかしAmazon.comはこの低価格を武器に読者を開拓し、実際の利益はキンドルのハードウエア本体(399ドル)に加え、新聞購読費(1新聞あたり月額10-15ドル程度)や雑誌・ブログ購読費(例えばタイム紙で月額1ドル50セント、1ブログあたり月額1-2ドル程度)、需要が限定された30ドルから100ドルの電子ブック(主に専門書)および印税を払う必要のない著作権切れの電子ブックなどの販売から得る。著作権切れの書籍の価格は1~10ドルとまちまちで、同じ作品の別の版が異なる価格で販売されているのが目につく。これは注釈などの差や有無によるものと思われる。
Kindle版の売り上げはKindle端末の増加に合わせて伸びている。専用端末に加えて2009年3月に「Kindle for iPhone and iPod touch」をリリースしたことで売り上げを急速に伸ばし、2009年5月時点で紙媒体の売り上げの35%にまで成長している。
その他
その独特なデザインからスノースピーダー(映画スター・ウォーズに出てくる戦闘機)と呼ばれることもある。
2009年7月17日、アマゾンは、再版権を持たない出版社が販売していた電子書籍2点の販売を停止し、ユーザがすでに買った本についてもキンドルから無断で削除したのち料金を払い戻した。削除されたのはジョージ・オーウェルの『1984年』と『動物農場』で、ユーザからは作中の「ビッグ・ブラザー」を体現するような行為だと批判が起こった。同月23日以降、アマゾンのジェフ・ベゾスCEOは、Amazon.comのフォーラムやキンドル購入者宛メールを通じてこの件について謝罪し、削除を受けたユーザに対して「該当作品の別のコピー、あるいは30ドル分のギフト券または小切手」の提供を申し出た。
本はやはり紙で読みたい。


