素晴らしい!
「僕は病院が好きだ!」
「僕は点滴が好きだ!」
「僕は注射が好きだ!」
入院は二回している。どちらもカンテレの近くにあった大阪中央病院。
「A型肝炎」
南米ペルーに行って、帰国後すぐに会社の健康診断を受けた。
その数日後、出勤するのに駅の階段を上っていたら、全身の力が抜け、階段がたったの一段も上がれなくなっていた。
自宅に帰宅すると、会社の産業医からすぐに電話が入った。
「すぐ入院する様に!」と。
健康診断の血液検査の数値、γ-GTPが1600を超えていた。正常値は50以内。
ペルーの人たちが子供時代に罹るA型肝炎。子供の時に罹っても、症状は軽い。
日本は清潔過ぎる国なので、大人になってもA型肝炎の抗体は出来ず、ペルーで食べた「セビーチェ(海産物の入ったサラダ)」から菌が入ったのだろうと医者に言われた。
入院して、二日目、顔が黄色くなり、黄疸が現れている。黄色い顔の僕と僕の横でピースサインをしている交際中の妻の写真が今も残っている。
二回目の入院は「胆嚢ポリープ摘出手術」。前年の健康診断。超音波の検査で「胆嚢ポリープ」が見つかっていた僕。翌年の健康診断では、そのポリープが大きくなっており、「癌化」する恐れがあるので、胆嚢を切る事にしたのだ。
この手術の時、妻は妊娠中。母と二人で十時間に及んだ手術を手術室前の廊下で見守ってくれていた。
手術に時間がかかった訳は、開腹してみると、胆嚢の周りに脂肪肝がまとわり付き、それを切除しないと胆嚢を切れなかったと、術後医者に言われた。
何故、入院が好きかというと、僕は怠け者なのである。一般のサラリーマンが真面目に仕事をしている時間に、ベッドに寝転んでいていつでも寝ていられる。いつでも好きな本を読めるし、好きなテレビ番組も観られる。
「点滴」「注射」をされると、薬が体に入って行き、どんどん健康になる様な気がする。
「病院食」も不味いとは思うが、カロリー等を考えて作ってあるので、これを食べるのも健康の為、アリだなと思っていた。
普段、テレビの制作現場で不摂生の極みの生活をしている僕。
どちらの入院か忘れたが、脚本家の山田太一さんが「君を見上げて」という小説を読売新聞の夕刊に連載していた。
病院の一階に「新聞の自販機」があって、午後3時頃に買いに行くと、まだ夕刊は来ていなかった。午後4時に行くともう売り切れていた。
いろいろ試した結果、ちょうど買うのに良い時間は午後3時半。この小説を読むのが日課でとても楽しみにしていた。
「◯◯さん(僕)、ナースステーションまでお越し下さい」
と僕を呼び出す看護師のアナウンス。何かあったのだろうか?急いでナースステーションへ。
ナースステーション、二人の看護師が「キャッキャ」とはしゃいでる。そこで僕は注射を打たれた。
病院でも「外科」は若者がケガして入院して来るケースも多いが、「内科」は基本お年寄りばかり。僕の様な二十代の若者が入院して来るケースは稀だ。
看護師もドキドキして、僕を呼び出したのかも知れない。普通、注射は病室で打つものだから。
入院中、お花が届いた。綺麗なお花だ。一緒に「朝ドラ」をやっていて、今は東京でドラマを作っている先輩たちから。
「一日も早く東京に来いよ。一緒にドラマやろう!」と書かれたプレートが花に添えられていた。
先輩たちがその時作っていたドラマが平成版「悪女(わる)」。石田ひかりが主演だ。
その時、僕はまだ大阪にいて、東京でドラマを作りたいと切実に思っていた。
病院の消灯時間は午後9時だったが、カーテンを閉めてイヤホンでドラマ「悪女」を観た。ドラマはとっても面白かった。
見ているテレビの上にあの花が飾ってあった。僕の目から涙が溢れた、先輩たちの愛情を思って。