たいていの人は自分に都合のいい話には熱心に耳を傾けます。僕などは特にそういうタイプです。その典型的なのが、以下の話です。
僕はビールが大好きなのですが、そもそもビールは体に良い、というのが、遠い遠い昔から、ず~っと僕の頭の中に焼き付けられているのです。なぜビールが体に良いと思ったのかは、45年前にさかのぼります。
あれは1972(昭和47)年の夏。結婚・就職をした年の翌年でした。2月に札幌で日本初の冬季五輪が開催されたのですが、9月にミュンヘンで夏季オリンピックが開催されました。当時、五輪競技でも最も好きだったのが陸上の男子マラソン(当時女子マラソンはまだ種目になかった)でした。ミュンヘン大会では、日本の宇佐美や君原に期待したのですが、君原の5位が最高で、日本勢のメダル獲得はなりませんでした。それはまぁ、それとして。
そのマラソンで金メダルを獲ったのがフランク・ショーターという選手でした。
途中から独走態勢に入ったショーターが走り続ける姿が、ずっとテレビで映し出されていました。そのとき、アナウンサーがこんなことを言ったのです。
「このショーター選手のスタミナの秘密は実はビールなんですよね。彼はとてもビールが好きで、1日に2~3リットルは飲むそうです。それが、この驚異的なスタミナを生み出す原動力になっているそうなのです」
あぁ、このアナウンサーの一言が、僕の人生を変えたのです。
もともとビールは好きな僕だったので、これほど自分にとって都合のいい話はありませんでした。
その後僕はマラソンを始め、30代から50代前半まで、平凡な記録ですが、フルマラソンを20回ほどと、100キロマラソンを3回完走しました。そして「ビールはマラソンのスタミナを生み出す原動力」というショーター選手を常に思い浮かべながら、ビールを飲み続けたのです。
おかげで、マラソンをやめた今でも、ビールなしでは生きていけない体になってしまいました。
思えばあのアナウンサーの一言で、大変な影響を受けたものです。あれ以来飲む量が増えて今日に至っています。それからもう、45年もの歳月が経ちました。
しかし、さすがに近年は飲む量をセーブしなければ…とは思っているのですが、思うだけで一向に実行に移せません。まあこの歳になれば、いつ病気になって、いつ命が果てても仕方ないわ、と思うのですが、モミィがいるだけに、現実にはそうもいきません。もう少し長生きすることが自分のつとめだと思いますしね。だから節制しなければ、と毎日思いながらも、意志が弱いのでついズルズルとやってしまいます。いつまで経ってもダメなわたしです。
そんな中途半端な思いを抱きながら日々を過ごしているのですが、最近、これまた自分にとって都合のいい話にめぐり合いました。それでまた、元気が出たというか、ビールをはじめとするアルコールへの「罪悪感」が消滅したというか…
それについてはまた、明日お伝えします。