彼に歌う場所を。
何度も願ったことです。
彼は。
その瞳で。
態度で。
仕草で語るだけで。
それを、今まで明確に「言葉」にはしてこなかった。
今。
ほら。
彼が書き記した、あの最後の一行が。
これほど。
胸に迫るなんて。
あからさまに。
「歌わせろ」と叫ぶ彼が。
誇らしくて、誇らしくて、誇らしくて。
愛しくて、愛しくて、愛しくて。
あの願いを。
あれを願わねばならぬほど、
言葉にしなければならないほどの場所に。
彼が追い込まれている、
その状況に。
涙がでます。
苦しくなります。
歌わせろと叫ぶ彼を嬉しく思うのと同時に。
歌わせろと叫んでも、どこへ届くのか分からない現実に。
あの嵐迫る夜に。
彼がその身に得たものは、はかりしれないほど大きい。
綺麗な歌は。
他の誰かに任せておけばいい。
上手な歌は、
他の誰かが歌ってくれる。
私が聴きたいのは、望んでいるのは。
「渋谷すばる」が、自由に思うまま表現する、
すばるにしか歌えない「歌」なんだ。
新しい歌でもいい、
未知の歌でもいい、
古い歌でもいい、
手垢のついた歌でもいい。
そこに「渋谷すばる」が入り込むなら、
どんな歌だって構わない。
優しく、
強く、
弱く、激しく、
時に卑怯で、
時に臆病で、
情けなくて、ちっぽけで。
だけど。
「渋谷すばる」が生きている。
それを感じたい。
絶体絶命、行き止まり。
これ以上のどん底はないくらいに、追い詰められても。
悩んで悩んで落ち込んで、
凹んで凹んで崩れ落ちても。
それでも生き延びてやる!って力を蓄えた声。
それが、君の武器になる。
それが、君の生きる糧でもある。
だから、精一杯。
願う。
彼に、歌う場所を。