殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

キャンディーズ

2011年05月07日 18時52分57秒 | みりこんぐらし
ゴールデンウィーク、皆様いかがお過ごしでしたか?

私のゴールデンウィークは、葬儀で始まりました。

親友モンちゃんのお姑さんが亡くなったのです。

今年はモンちゃんと遊ぶことにしていたので、計画はすべてパーです。

しかし残念な気持ちはありません。

モンちゃんと一緒にお姑さんを見送ることができて、満足しています。


その少し前、モンちゃんと私は

ささやかなお出かけの計画を練るために会っていました。

キャンディーズのスーちゃんの葬儀があって間もなくでした。


私達は、どっぷりキャンディーズ世代。

文化祭の出し物で、キャンディーズのモノマネをしたこともあります。

私はランちゃんの係でした。

それはランちゃんみたいにかわいいからではなく

ちょっと太めの女の子と、やたら細いモンちゃんとのトリオだったからに過ぎません。


当時は、ぽっちゃりしたお姉さんといった印象しか

持っていなかったスーちゃんですが

大人になったら、彼女の魅力がよ~くわかりました。

精密に整った骨格から成り立つ美貌、まろやかな体つき

天然エコーのかかった甘く優しい声…

天性の三拍子を揃え持つ、すごいアイドルだったと。

そして年齢を経るにつれ、神々しいほどに美しさを増していくスーちゃんに

つい早世した義妹、夏目雅子さんを重ね合わせたものでした。


葬儀で流れたスーちゃんのメッセージに、私も涙した1人です。

あの柔らかい口調から、ひしひしと伝わる心の温かさ、気高さ、いさぎよさ…

見事な去り方でした。


    「私なら棺桶のフタ、さっさと閉められて

     やれやれって言われて終わりだわ」

「私の時もそうだと思う」

モンちゃんと私は、そう語り合いました。

惜しまれて逝くには、それなりの人格功績が必要なようです。


その後、モンちゃんの話を聞きました。

「義母には長生きして欲しい。

 だけどこのまま老人施設に入所しながら、持病で入退院を繰り返していたら

 ダブルの出費がきついのよ」


モンちゃんの葛藤は当然でした。

8年間無職だったモンちゃんのご主人は、昨年やっと仕事に就きましたが

アルバイトで、またいつ辞めるかわかりません。

お姑さんの年金に、モンちゃんの収入を足して施設の費用を支払い

さらに入院費が加算されては厳しいでしょう。


昨年の今頃は、認知症の母親に暴力を振るう旦那から引き離すために

必死で老人施設を探していたモンちゃんでしたが

今度はその費用が生活を圧迫する…

入院が3ヶ月以上長引いた場合、施設は自動退去になるそうで

次が見つかるまで、家で介護することになる…

働きながらでは無理だし、旦那がまた暴力を振るう…

モンちゃんの心配は、果てしないのでした。

 
 「施設を出されたら、次が見つかるまで、私が手伝うよ」

なんといい加減なことを…自分でもそう思いました。

無知、乱暴、冷酷…天性の三拍子を揃え持つ私に

他人の介護なんぞできるわけがないのですが

本当にそうなった時に考えればいいことです。


その3日後、お姑さんは急死しました。

モンちゃんは「私に気兼ねしたんじゃないかと思うと、かわいそうで…」

と言いました。

私はお姑さんが「みりこんに介護なんかされたら、どっちみち危ない」

そう踏んだのではないかと言いました。

しかし本当は、どちらでもないでしょう。

お姑さんは、自身の人生を精一杯生ききっただけです。


葬儀場の入り口にある液晶パネルには、故人の写真が映し出され

そこに言葉が添えてあります。

“皆様、本当にありがとうございました。

 幸せな、幸せな人生でした”

あんた、スーちゃんをパクったな…

文字を指さして振り返ると、モンちゃんは涙を流しながら

何度もうなづきました。
コメント (50)
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