殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

セコ王(おう)

2015年08月03日 09時11分35秒 | みりこんぐらし
次男がプリプリと怒っているので、理由を聞いてみた。


友達の友達に頼まれたそうだ。

「仲間17人でバーベキューをやりたいので、肉屋さんを紹介して欲しい」

次男はその場で釣り仲間の精肉卸業者に連絡して

バーベキューの日程を伝え、数量は後日ということになった。


そして数日後、友達の友達から数量の連絡があった。

「カルビ800g、ハラミ800g、ホルモン200g」


若者17人分にしては少な過ぎるので

次男はもっと増やした方がいいのではないかと助言した。

しかし友達の友達は「これでいいのだ」と

天才バカボンのパパみたいに言い、さらに大真面目で続けた。

「先に合計の値段を聞いてみてもらえる?

検討して、安かったら決めるから」

わずかな物で、このもったいぶりように驚いた次男は

よく知らない相手を安易に紹介したことを悔やみ

腹を立てていたのだ。


「先に値段なんか、申しわけなくて聞けない」

と言う次男に

「聞かなくていい」

と答える私であった。

その店は私がよく利用する所で、値段はおよそわかっている。

卸業者だから、大量買いすると大幅にまけてくれる上に

ハシタを切り捨ててくれるため、まとめ買いする方がお得なのだ。


「全部で1万円ぐらいと言っておいたらいい。

ちょっと高めに言って、お釣りが来たらバカは喜ぶ」

「バカを喜ばせたくない」

「それ見てほくそ笑むのが、オトナの楽しみじゃ」

「あんた、ホンマに意地が悪いね!」

「あれ?今知った?」

「前から知ってる」

「量を連絡するついでに、うちで食べる肉も頼んで。

あんたの気持ちも幾分やわらごう」

「どんだけ?」

「キロ買いに決まっておろう。

オトナはこうやってザンネンを切り抜けるんじゃ」


バーベキュー当日、無事に橋渡しを終えた次男。

友達の友達を店に案内して肉を買った後

どうして明らかに足りない量しか買わないのか、たずねてみたと言う。

友達の友達は平然と

「集めた会費を浮かして、一部のメンバーと二次会をするから」

と答えた。


「セコ王だ!セコ王決定!」

帰宅して叫ぶ次男に

「セコ王なら病院よ!」

私は病院の厨房に勤めていた時に行われたバーベキューの思い出を

語って聞かせるのだった。


前半はおむすびと焼きソバを出して、皆のお腹をふくらませ

後半から肉を焼き始めるプログラム…

医者、看護師、部長、課長クラスの肉は黒毛和牛…

その他の者の肉は舶来、つまりオーストラリア産…

この話に激しく喜ぶ次男。


そこへ長男が参戦。

「セコ王なら、まだいる!」


長男はひところ、毎週のように

トンジと呼ばれる友達の家にみんなで集まっては

庭でバーベキューをしていた。

友達の中でトンジ一人が家庭持ちであり、庭付き一戸建ての主だからである。


「オレはある日、気づいてしまったのじゃ。

トンジはみんなから集めた金で、肉を二種類買う。

安い肉と、高い肉。

最初にボロっちい肉を出す。

さんざんみんなに食わせて腹がいっぱいになった頃

いい肉を一応、冷蔵庫から出してくる。

みんな、もう食べられない。

いい肉は残って、トンジの物になる」

「ヒー!」

「あんまりだ!」

「残すつもりだから、出さずに冷蔵庫で保管してある」

「キャー!」

「気がつくまでに3ヶ月かかった。

子供が3人いて、家も建てりゃあ大変なんだろうと思って

その後、何回か行ってやめた」

「すごいワザだ…」


気づきながらも通った長男に敬意を表し

セコ王はトンジに決定した。
コメント (6)
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