殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

前代未聞のお出かけ

2022年05月08日 06時52分11秒 | みりこんぐらし
ゴールデンウィークも終わりますね。

皆様はいかがお過ごしでしたか?

今年は3、4、5日の連休が週の真ん中にはまったため

会社の休みがカレンダー通りになって、私は何だか中途半端な気分ですが

気候が爽やかだったのが儲けものでした。


若い頃と違って、まとまった休みに燃えなくなり

人が多い所も苦手なので、どこへも行かなくなった私ですが

今年は4日に出かけました。

山奥村の観光地。


行くつもりはなかったんです。

夫の姉カンジワ・ルイーゼ夫婦が、義母ヨシコを連れて4日に出かけることは

早くから聞いていました。

「やった!静かな家でパラダイスを満喫だ!」

そう思った私は、当日を楽しみに待っていたんです。

嫁が一番嬉しいのは姑の留守。

その留守の理由は外出でも入院でも、あの世でもかまいません。

とにかく留守が嬉しいのであります。


しかし、当日になって気がつきました。

ルイーゼの旦那はパーキンソン病。

近頃は症状が進行し、上半身が横に40度ぐらい傾いてきて

歩行はできますが、かなり困難な様子です。

山奥は基本、歩きが多く、ルイーゼを始めとする一行は土地に不案内。

そこへ病人と、腰の悪い老人を連れて行って大丈夫か…

私の悪い癖、老婆心というやつです。

ひとたび行くと言いだしたら変更や妥協は受け付けず

そのために犠牲者が出たとしても、そのシカバネを乗り越えて進むルイーゼの性格は

亡き義父アツシと同じなので、私は危険を感じたわけです。


ちょうど夫が出かけたため、私は思い切ってルイーゼたちに付いて行くことにしました。

この思い切りは、ちょうど良い季節柄というのもあります。

暑い時期や寒い時期であれば、はなから行かず

訃報を期待しながら家に居たでしょう。


私の急な参加は、ヨシコの説明によって

「一人で淋しいから付いて行く」という形になりました。

私はヨシコのような淋しがり屋ではありませんが

まあ、そういうことにしておきます。


こうしてヨシコと共に、ルイーゼの運転する車へと乗り込んだ私です。

思い返せば結婚して42年、この4人で1台の車に乗ることも

一緒にどこかへ行くことも、一度たりとてありませんでした。

夫とルイーゼが犬猿の仲なので、仕方のないことです。


さて、前代未聞の行楽は始まりました。

車酔いするヨシコは助手席、義兄のキクオと私は後部座席です。

けれども出発してすぐに後悔しました。

久しぶりにルイーゼの車に乗りましたが、彼女の運転がヘタなのを忘れていたのです。

アクセルを強く踏み込んで加速しては急ブレーキで減速する動作を小刻みに繰り返す

激しいドライビングテクニックは変わっていませんでした。


ルイーゼは去年から軽自動車に変えたので

数秒おきの加速と減速が後部座席へとダイレクトに伝わります。

前につんのめったり後ろへ引き倒されたり、激しいドライブでしたが

隣のキクオは慣れたもので、天井の窓際にある持ち手に両手でつかまり

無表情で揺れているのでした。



目的地に着いて花など鑑賞したら、今度は別の観光地に移動してランチです。

ルイーゼは、そこでバーベキューを食べると決めていました。

ちょうど昼どきなので、バーベキューのレストランは長い行列になっています。

老人と病人がいることだし、30分ほど走った場所に

バーベキューではありませんが穴場があるので案内したいのは山々でしたが

ルイーゼの決定を覆すことは許されません。

気ままなヨシコもルイーゼと一緒だとおとなしく並んでいるし

キクオも慣れている様子なので、大丈夫ならいいやと思い、黙っていました。


1時間半後、やっと席に着くことができました。

色々とコースがありますが、メニューの決定権は奢る立場のルイーゼにあります。

彼女が迷わず注文したのは、3人分がセットになって5千円のファミリーコース。

大半が豚肉と羊肉で、牛肉が少しある一番安いやつです。

値段はともかく、3人分を4人で食べるところが感動もの。

レストランも、よく許してくれたものです。


やがて3人分の皿が来ました。

ヨシコは羊肉が食べられないし、他の肉は硬いと言って野菜を

ほぼ菜食主義のルイーゼも野菜を食べていました。

キクオは病人とはいえ、日頃から食欲はかなりのものです。

皆の野菜や肉を焼いているうちに、元々少なかった肉らしい肉は全て彼に食われました。

食べる物が無くなった私は、ごはんに焼肉のタレを付けて食べました。


あ、全然嫌いじゃないです、こういう状況。

むしろ好き。

芋を洗うような所で不味い解凍肉より、笑える思い出。

これこそが大事。

ごはんとタレで、元は十分取れました。


食後は外でソフトクリームを食べる…これもルイーゼが決めていたことです。

こちらも長い行列です。

1時間並んで、やっと買うことができました。

この時、ヨシコとキクオはベンチに座らせましたが、ルイーゼは私と一緒に並んでくれました。

これは、すごいことです。

以前であれば、私はソフトクリームを4個持ち、日陰で待つ彼らに届けるのが当たり前でした。

長い道のりをずっと運転してくれたのもそうですが、ルイーゼは相当丸くなったと思いました。


帰りはルイーゼのナビが仕事をしなくなり、道に迷いました。

そこでこの辺りに詳しい私が、おそれながらと申し出て

口頭にて道案内をさせていただきました。

素直に聞くルイーゼを見るのは、珍しい体験でした。


というわけで、非常に楽しい一日でした。

ルイーゼは、秋にも一緒にどこかへ行こうと言いました。

この4人、けっこう面白い組み合わせかもしれません。
コメント (4)
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