殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

大誤解

2010年09月11日 10時48分17秒 | みりこんぐらし
                  “これ、茶碗蒸しの器よ”



「明日の昼は来客があるから、外で食べるよ。

 悪いけど、帰れないからね」

夫が言う。


了解~と答えてから、ハタと気づく。

     「あんた、今、悪いけどって言った?」

「うん、言った」

     「…なんで?」

「一人にさせて、悪いから」

 
えっえ~?!

私はガクゼンとする。

    「何とおっしゃる、うさぎさん!

     悪くない、悪くない、むしろいい!」


結婚30年…雨の日も風の日も、昼には必ず帰って来て

家で昼ごはんを食べる夫。

そりゃ合間じゃ、帰らない日や、別々に暮らした日や

弁当を作った時期もあったけど、やっぱり家がいいということで

昼には帰ってくる方針に落ち着いた。


そのために私は外出を控えたり、仕事や用事の時は、用意して出たりした。

いつも夫の昼食が頭の中にあるって、わりと消耗するのよね。

来客やゴルフや浮気で、昼に帰らない時は

解放されたような気持ちで過ごしたものだ。

それが…それが…毎日帰って来るのは、私のためだったと言うのかえ?

いつから、そんなにか弱い奧さんになっただ~!

知らんかった~!


    「あのね、悪くないからね。

     私は一人でも淋しくないから…平気だからね。

     いつでも外で食べていいのよ~ん」


…本当は…

だ~れがそんな気持ちで帰ってくれてると、思うものか。

夫は、昼メシを用意する女房の手間を、何一つ考えたことがないのさ。


昔、とある小冊子に載っていた話が、印象に残っている。

仕事から帰ってきた旦那さんに、奧さんが言った。

「あなた、今日は外でお食事したいの」


「じゃあ行こう」と言う旦那さんと

「僕は、君の手料理が食べたいな。いつもおいしいものをありがとう」

と言う旦那さん。

どっちが思いやりのある、いい旦那か…という内容。


当時の私は、後者だと思った。

しかし、いい旦那というのは、前者だそうだ。


後者は一見、さもよさげな感じがする。

しかし奧さんは、今日は料理がしたくない。

疲れているのである。

男は一旦家に帰ったら、出るのはおっくうなものだ。

ここで妻の気持ちを察知できる旦那と

口先でごまかして、結局自分の思い通りにする旦那。

この違いであろう。


我が夫は、もちろん後者。

なぜなら同じ状況で、まったく同じことを言ったことがある。

「母さんや、母さんや」と

柔らかい物腰で、優しく思い通りに持っていこうとする。

慇懃無礼(いんぎんぶれい)とも言えるが

それにだまされる私も私…とも言える。


が、そんなのはどうでもいいのだ。

今さらちっぽけなことで、ギャーギャーピーピー言うほど

ヤワではないわい。

喜ばしいのは、この頃、家事をよく手伝うようになったことだ。

気働きや思いやりが無いのを嘆くより

マメという長所を伸ばしてやるほうがいい。


何か買って来いと言っても、豆腐の種類や肉の部位が

だんだんわかってきた。

いつも、噛んで含めるように説明をしてから行かせるが

豚バラを買って来いと言ったら、肉屋と花屋を回って

豚肉とミニ薔薇の鉢植えを買ってきたり

コットンを頼んだら“さらさらコットン”という

私にはもう用の無い、生理用品を買って来たこともある。

それら数々の失敗を糧として、彼はずいぶん成長した。

近頃では、行く店を決めて

馴染みの店員さんに世話してもらうワザも身に付けた。

とても役に立つ。


さて先日、遊んで帰ったら、お客さんが来ていた。

家に居た夫が、お茶を出して談笑している。

お茶まで入れられるようになったのだ。

進歩、進歩…と、私は微笑んだ。


しかし、よく見ると、お茶が注がれているのは

茶碗蒸しの器なのであった。

湯飲みより、だいぶん大きいんだけど

夫も来客も、何の疑いもなくお茶を飲んでいる。

あわれにおかしいやら、かわいらしいやら。

私もさっそく、茶碗蒸しの器に自分のお茶を入れ

彼らの仲間入りをはたしたのであった。

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40 コメント

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いっちば~ん! (mentaiko)
2010-09-11 14:39:57
コメントの一番目ゲット、2回目です!
今日は何だかいいことがありそうです!

豚バラのくだりでは大笑いしました。
そして五色雲たなびくきれいなお茶碗。
私でも間違えてお湯飲みにしたかも知れません。
一緒に茶碗蒸しお茶碗でお茶を召し上がるみりこん先生、素晴らしいです。

第五回…
大誤解と入力しようとしたら、漢字の変換がうまく行かず、
第五回目でようやく成功しました。
(ウソです)
返信する
わはは! (みりこん~mentaikoさんへ)
2010-09-11 15:54:01
第五回…扇血影の時みたい(笑)

もう二十年以上使っている、古い茶碗なんですよ。
このたび、初めて気が付いたんですけど、茶碗蒸しの入れ物って
湯飲みより、サイズが大きくて厚みがあるだけでなく
底の輪っかが湯飲みに比べて、すごく小さいんですね!
発見、発見(笑)
返信する
夫唱婦随? (南風)
2010-09-11 18:38:33
さすが~~


ここ数日 フェイントで帰宅(以前は帰宅の際必ず電話してたのに、2日続けて自分の食料持参で帰宅)
体に悪そうな お惣菜の数々を広げてキャンプ?のようです。
私達は、先に食べてるので 何の為の帰宅(視察?)って感じです。

茶碗蒸 作ってませんね~
5客揃いのお茶碗も1つ欠け 2つ欠け~
我が家のようにバラバラになって 揃いの皿や茶碗が無くなってます。
とほほほほおほ~~~~~~
返信する
機転 (シーバスと踊る男)
2010-09-11 21:57:07
みりこん姉さんこんばんは^^

いや~さすが姉さん
この器は最初にたまたま茶碗蒸しが入ってただけで湯呑みと言われれば湯呑みなんですよね

ご主人にもお客様にも恥をかかす事がない姉さんの機転の効いた対応に恐れ入りました^^
返信する
フェイント帰宅(爆) (みりこん~南風さんへ)
2010-09-11 23:55:53
通常なら「良かったね…度々帰るようになって…」だけど
南風さんちの場合、お世辞にも言えやしない(笑)

年寄りになって、淋しく心細くなってるんじゃないですかね。
勝手に里心つかれてもねえ。
自宅キャンプを冷ややかにながめる3人が見えるような…(笑)

茶碗蒸し、うちはよく作るんです。
病院で一度に百個ぐらい作ってたので、5個や6個は
なんともなくなってしまいました。
それやってなかったら、私も滅多に作らないと思います。
返信する
なんのなんの(笑) (みりこん~シーバスと踊る男さんへ)
2010-09-12 00:01:56
ひたすら「あわれかわいい」の仲間に入りたくてね(笑)
ま、大人ですもの…これくらいは気がつかなくちゃね。
シーバスさんも、きっとそうする派だと思います。

そうよ…湯飲みと言い張れば、なんだって湯飲みさ~(笑)

返信する
器! (たらこ)
2010-09-12 12:06:53
姐様が 今までの生活の中でヒロシさんをうま~く掌でコロコロと転がして 嫌な気分にさせないように調教?してきた様子が伺えます。

言葉の掛け方ひとつで
やる気を起こさせるか
嫌々させるのか
違いがありますよね。


息子は自分が運転免許を取ったら、私が乗ってる車に乗りたいというくらい 私が乗っている車が好きです。
それまでは、時々一緒に洗ったり、バイト先で洗ったりしていました。
一週間前くらいから
『車、いつもきれいだね』
『黒光りしてない?』

とバイト先の方々に言われることがあって 息子にバイト先で言われた話をしました。

すると 昨日 自分から洗車をしてくれたのです。
『一体、どこを走ればこんなに汚れるの?』
と 私に言いながらも、もくもくときれいにしてくれました♪

『洗車してよ』と頼んだら こんなに一生懸命にならなかっただろうな~と思います。
周りが車を誉めてくれた。嬉しい…と言う感情が 息子を動かしたんだと思いました。


話し方、言い方ひとつでこんなにも変わる事に気づかされました。
脳みそが足りないから 言葉の引き出しが少なくて つい『やってよ』と言う言い方になってしまうのですが 言われた方にしたら気持ち良くありませんよね。

姐様はそんな心遣いが常に出来る方だと尊敬します。
私も 常にそうあるように日々精進していこうと思います。

湯飲みじゃなくたってお茶はお茶♪
器にこだわらない姐様の、器の大きさに大人の優しさを感じます。
返信する
いいですね~ (スロー)
2010-09-12 15:55:39
私もこのお椀にお茶を入れて出しそうです。
出されたとしても、大ぶりで、たっぷり入っていて、いいいかんじ、と思ったかも知れないです。
案外、わからないものですね。


人前で、男性をけなすのは、NG。
男性は、何故かメンツやら、なんやらよく知りませんが
プライドを傷つけられるのが大嫌いのようです。

私の場合、直接、面と向かって目いっぱい主張するより、ぐっと引いて、相手をちょっと立てておけば、まあ、おおかたトラブルは避けられるようなことが多かったです。
ただし、仕事の場合は、男女に限らず、その方法は逆効果でした。


食事は「帰ってこんでもええ」に座布団、百枚。
一緒に外食に連れていってくれなくてもいいから「外で食べてこい」。

うちも、手作りピクニック弁当、よくあります。
ちょっと私も味見させてもらいますが、めちゃめちゃ美味しいです。
やはり料理は、要ですね~。
(私は、料理は限りなくヘタで、大キライ。
餌付け不成功です)

返信する
車! (みりこん~たらこさんへ)
2010-09-12 20:32:30
男の子は、興味を持つ年ごろですからね~♪
洗ってくれると嬉しいですね。
今度、ポツッと言ってあげてみて。
「洗ってもらったら、なんだか汚れるのが遅いんだわ~!
技術かしら…さすがねえ!」

うちも、何かと反抗的な時期を経て、突破口は
車だったと思います。
それと、彼女(笑)
免許取ったら、自分の車を買うまで、親の車に乗りたいし
車庫証明とか、親を敵に回すと色々損なので
歩み寄りを見せてました。
彼女は、家に連れて来るようになったら、親が敵だと
何かと不便なのでね。

な~んか、最近の女子は「家に行きたい」とか
「親に会ってみたい」とか言う子もいるみたいですね(笑)
子供も、目的の為に折れることを学んで、大きくなるんだな~
と思いました。

心遣い…まだまだなんですよ(笑)
最初から出来てりゃ、こんなことになっとりゃしませんがな(笑)
一緒に精進いたしましょう♪
返信する
餌付け… (みりこん~スローさんへ)
2010-09-12 20:42:34
亭主はエサで釣れ…とよく言いますが
ありゃ嘘だと思いますね。
レストランやコンビニの無かった昔の話だと。

料理しない、または嫌いな奧さんでも
ちゃんと釣られてる人は、釣られてます。
押しつけがましい食堂のおばちゃんより
苦手とはっきり言うほうが、男性は
気持ちが楽なのかもしれません。


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