トドの小部屋

写真付き日記帳です。旅行記、本や美術展の紹介、俳句など好きなことをつれづれに。お気軽にどうぞ。

夜叉桜

2018-04-09 09:16:31 | 
あさのあつこさんの「夜叉桜」を読みました。「弥勒の月」を第1作目とする弥勒シリーズの第2作のこの作品。時代小説です。主な登場人物は北定町廻り同心の木暮信次郎、配下の岡っ引の伊佐治、小間物の大店の主人、遠野屋清之介。信次郎は亡父の右衛門から同心の職を引き継ぎ、父親の代から使えていた町人で岡っ引きの伊佐治と組んで難事件を解決していく。本作では女郎ばかりを狙った連続殺人事件で、義理の親子関係、男女関係のもつれが絡む難事件であったが、信次郎と伊佐治の名コンビが下手人を割り出し捕らえる。物語の中で、遠野屋の主人、清之介は類まれな剣の遣い手で、某藩の重鎮であった亡き父の命で父の政敵を何人も屠った過去を持つ男だったことがわかる。同心の信次郎の抱える心の闇が気がかりなこの小説は暗い話ですが、続きが気になる作品です。
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たまゆら

2018-04-04 17:47:16 | 
あさのあつこさんの「たまゆら」を読みました。恋愛小説です。しかもとても変わった。物語は早春の夜明け、まだ深い雪が残る頃。花粧山という山へ向かう山道最後の地点に建つ家に暮らす老女、日名子が山道を登ってきた人の足音を聞き、起き上がるところから始まる。夫の伊久男もすでに70歳を越えている。2人は人間の世と山との臨界に位置する家で、訪う人を全て受け入れ、もてなし、休ませた。彼らの家を訪ねる人は一様に疲れ切って眠り、1日2日逗留したのち、麓の街に引き返す人もいれば、道なき道をさらに進み、山頂へ向かう者もいた。山から戻れる人もいれば、そのままになった人もいた。2人は彼らが無事に山から戻ることを念じ、送り出すだけだった。その朝、おとづれたのは若い娘だった。彼女の名は真帆子。幼なじみであり、忘れられない想い人の陽介を迎えに花粧山に登ってきたのだ。陽介は父親を刺し殺していた。しかし、陽介と思われる青年が山に向かったのは一年も前のことだった。日名子は真帆子の中に遠き日の自分を重ねたのか、自分と伊久男の過去を語る。いつもは黙って送り出してきた彼らだったが、日名子は山へ向かう真帆子を一人で向かわせることができない…独特の雰囲気の小説でした。面白く一気読みしました。島清恋愛文学賞受賞作。
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