一度登った山は、その稜線の襞一つ一つが脚に記憶として刻まれる。後で山容を見返すと「あれが○○の尾根」「あれが○○峠」と覚えていることが多いものだ。
その山に富士山が加わったという、日曜日のおはなし。
横浜の自宅から自転車で五合目まで行き、そこから登山して富士山頂を目指すHome to Summitという企画。この企画に閃いたのは木曜日のこと。
トレラン仲間が富士山に行くというので、同行しよう、どうせ行くなら待ち合わせ場所の五合目まで自転車で行ってしまえ~~~
という乱暴な発想でした。田子の浦からSea to Summitを丸一日かけてやっている人はチラホラいるので、試しにStravaとヤマレコを駆使して横浜からのコースタイムを予想してみると、自転車6時間+登山6時間で下山できることが判明。だったらどうせ土曜日走れないしいっちょやってみようと。ただし、夕方までに帰ってこい指令が出ているので14時には下山したい。ということで深夜一時の出発となりました(笑)
前日トレラン用の装備をバッグに入れてうえだっちさん宅へ。今回このデリバリーがあったおかげでこの企画が可能になりました。シューズやら着替えを担いでこの企画は難しい。
私『集合時間は7時。待ち合わせは富士宮口五合目(標高約2400m)でいいよね?』
うえだっち『え?何言ってんのあなたならあざみライン五合目(標高約2000m)でしょ。』
ということで直前のコース変更。確かにこれで家からの距離は近くなりますが・・・あざみ激坂用にリア30Tスプロケ投入も前夜考えましたが、メンテ面倒くさいし、ゆっくり走ればいいやということでそのまま。
自転車編 横浜~須走口五合目
距離100km 獲得標高約2300m 5200 kcal
前日3時間ほど寝て深夜12時に起床。25時に横浜を出発。
蒸し暑い夏の夜、ガラガラの246をゆっくりペースで進みます。道路がすいていて走りやすい。その割に平均速度が上がらないのは微風の向かい風だったからでしょうか。厚木市内に入ったころに平均30kmを一瞬越えましたが、それからは下がる一方。
善波峠をゆ~っくり登り、最初の休憩は渋沢の先。この後山北の町を走っていると前方に夜の富士山の稜線が闇夜に浮かびあがります。その山際に連なるのは・・・
【イメージ図】
そうです、ご来光をもとめて山頂に登る登山者のヘッドライトの列が、遠く離れた下界からもかすかに見えるんです。
『お~数時間後あそこまで行くのか~っ!』
見上げる富士山のスケールのでかさ、まだ実感として受け止められません。
小山町に入り、金太郎公園にむかう道へ右折。ここからは富士スピードウェイの脇をとおって須走に向かう交通量の少ないルート。ここを走っているときに背後から朝焼けが迫ってきました。
松田の標高が100ちょいで、須走の標高が1000近いのでこの区間だけでも結構登る。須走の町に着いたとき、サイコンの獲得標高はすでに1200mを指していました。
須走のコンビニで最後の買い物。自衛隊のおひざ元だけあり、迷彩服をきたごついお兄さんがたがたくさんいました。
あざみラインの登坂スタートがほぼ5時10分。集合時間が7時、ベストタイムが1時間3分なので、ゆっくり登ってゆけばなんとかなりそうです。五合目から上のことを考えて徹頭徹尾体力温存モードでゆっくり登り始めますが、開始1キロですでにファイナルロー。
それにしても、マイカー規制がはいる7月10日前は空いていますね。この後の富士登山も御殿場口の登りはガラガラでした。今後富士山に登山することがあれば、マイカー規制前の御殿場口をおススメします。空いているし、朝の7時前にさっさと登り始めれば日帰りも余裕でしょう。
馬返しはこの冬大規模な土石流による崩壊があり、その修復工事の痕が生々しい。ここから激坂区間。今回は特に後ろ27Tで30Tではないので、どんなに頑張って踏んでもケイデンスが40くらいになってしまい辛かった。また馬返しの登り返し最初の部分がまだ完全に舗装されておらず、フィニストレ峠っぽいよくしまったダートになっています。
馬返しの先の毒キノコの看板の先で、こんな6時の早朝なのに下山してくるローディが。しかも湾岸サイクルユナイテッド。しかもこの後同じジャージが3人降ってきた。
この時間帯にこの面子。
絶対トリプルクライムだと思います(笑)
みんな好きね(笑)
おまえもな(笑)
ここから先2kmは20%以上の激坂の連続攻撃にひたすら耐える。交通量が少ないので蛇行し放題で助かった。激坂のカーブは躊躇せずアウト側へ。激坂の直線は恥も外聞をなく蛇行運転。
なんとか激坂区間も終わり、20%の登りが13%くらいになると一息つける。しかしこの時足がつりそうに。労りながらエッチラ登っていると車で登ってきたウエダッチさんにとうとう追い付かれてしまいました。
最後の2kmでフロントシフターが切れてしまい、変速ができなくなりましたが既にインナーロー固定だったので無問題でした。そして、ほぼ7時に五合目到着。本来であれば山小屋前に右折してゴールですが、うえだっちさんが激坂のはるか上の駐車場でニコニコ手を振って待っています。
この最後の激坂区間がまじきつかった・・・
さて、合流して着替えて後半の部突入です。
トレラン編
14km獲得標高約1861 m 3500 kcal
この日のためにボロボロになっていたトレランシューズを新調。今回はイエローにしてみました。
御殿場口の標高は2000m。ほかの登山口よりも400m近く低く、余計に登らされます。
山の神社で行く先の安全を祈っていざ入山。登り始めておどろく登山道の静寂。どうやら7月10日のマイカー規制前に加えてこのルートは比較的人気薄なのかもしれませんね。富士山とは思えないような静かな樹林帯を登ってゆく。上り道と下り道が別々になっているのも混雑しない理由だろうか。
体力的には大分よろしくない。なんといってもここまですでに6時間走り、5000カロリーはゆうに燃やしているので既にエネルギー切れ気味。同じペースで早足のとき、自分の心拍が140台のとき同行のうえだっちさんは120台だとか。これはしっかり補給とらないと大変なことになりそうだ。
6合目の山小屋で一旦休止。次の7合目でもコーラを飲んで速攻チャージ。おにぎりも一気に四個食い。補給的にはこれで生き返った。
ここからは視界が開け、雄大な富士山が眼前に屹立する。しかし、いくら登っても、何度視界が開けても、景色が同じ(笑)。この一本調子が富士山登山なんですかね。
6合目~8合目の間で最初は霧雨、そして結構な氷雨に。頂上を見上げると雲に完全におおわれている。天気予報は午後から晴れだったので、みんな晴れ間を期待しながら登っているのだが、雨がどんどん強くなっていく。そろそろ背中からレインジャケットを出すか・・・とザックを開けると、
レインジャケット車に忘れてた。
ここからは薄っぺらいジレ、あとはウエダッチさんに借りたウインドブレーカーだけで登ってゆくが、氷雨に全身が濡れどんどん体温が奪われていく。登っている間は暖かいが、休憩のため小屋で立ち止まると気化熱で一気に冷える。寒さでふるえそうで、このままいくと低体温症もあり得る事態。現に数組のハイカーは途中で断念して下って行った。
うえだっちさんも高山病が始まったか寒さか結構辛そうな足取り。とりあえず8合目まで行って、雨がやまなかったら引き返す決断を、と思い八合目についたら雨が止んだ。
ここからは富士吉田口からの登山客も加わり混雑するのでゆっくりペースで登山道を刻んでゆく。3000mを越え、3193mと越え、未知の高度へ。空気が薄い!息があがる!だがなぜかテンションはあがってゆき調子は悪くない。登り始めは苦しかった心拍140台も慣れてきた。そして見下ろすとすごい高度感。関東東海甲信越全部下界になってしまった。見上げると15分~30分間隔で山小屋が連なるここは山小屋銀座。
テンションがあがってきましたっ!
山小屋銀座を一つ一つ励みに登ってゆくと高度はどんどんあがっていき九号五匁へ。
そして最後の鳥居をくぐり山頂へ・・・やった~!日本一だ~!
下界の雲海の先の横浜方面を見てうるっときました。
お釜見物をして、日本最高地点の剣ヶ峰へ・・・と行きたいところですが同行のうえだっちさんが辛そう。
「友を置いて行くに忍ばず。一人頂を目指すも人生。友とともに下り、後進のチビ太に頂を託すもまた人生。」
というわけで後30分先に迫った剣ヶ峰はチビ登山XX座目にとっておきます。
トレランしてるふりをして、あとはとっとと下ります。まずは高度を落として、高山病の症状を軽減しましょう。
頂上からの下山道はなぜか立ち入り禁止の看板があったので、途中から砂走り的な下山道へ。実はこの下山専用道というのは、富士山特有で他の山では経験したことがありません。ザラザラの砂礫なので足裏で地面がつかめず、登りでは難儀するでしょうが、下りはこれが着地衝撃を吸収するクッションとなります。
試しに走ってみますがこりゃ楽しい。あっという間に下界が迫ってくる感じ。高速下山ができますね。そのかわりトレランシューズの中にどんどん砂や砂利が侵入してきます。
楽しい砂走り滑走下山ですが、さすがに長すぎて飽きた。
予定通り14時に下山。約一時間半で下山したということかな。よくこんな長い登りを歩いて来たな、と感服するぐらい長い長い下りでした。
この後は須走まで自転車で下ってもよかったのですが、快適なスバルの助手席でそのまま横浜まで帰ってきてしまいました。
アイサイトはすごいですね、高速にはいったらもはや車ではなく、新幹線のようで(左右への揺らぎがすくなく、オンザレール的なので)あっという間に睡魔が襲ってきました。レーン保持、前車追従機能がついているので、安心して助手席の人は寝ることができます。
~~後日のダメージなどについて~~
日曜日は夕餉時に帰宅し、その日は5時間睡眠で翌日出社。
翌日疲れはややあるものの、筋肉痛は訪れず。はて?と思っていたら夕方に筋肉痛が来た。
一晩9時間睡眠したら翌日には回復。長い距離を関節にやさしい砂走りで降りたことがよかったのか・・・?