家庭内パワータップ購入を期に、データをとりながらトレーニングをしようと思います。まずは、理論武装から、ということで毎年冬恒例の海外文献の翻訳を通じて理論を吸収したいと思います。
この
サイト(Flamme Rouge)が気に入りました。自分の興味のある記事だけ、ダイジェストで要約してみます。
本文中、青字は訳者ニャロメの注です。それ以外は原意のママ。
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Functional Threshold Power (実効出力閾値*)
Functional Threshold Power (FTP) はパワートレーニングをする際に鍵となる概念である。相関的、実効的、もしくは機能的出力閾値とでも言おうか。この閾値の定義はあまり定まったものではないので、注意されたし。
前提
FTPは一時間持続可能な最大出力のこと。「持続可能な最大出力」であって「平均出力」ではない。
FTP計測
FTPを計測する方法は様々ある。(実験室でやるようなVO2Maxテスト、1時間のTT、20分のTT、もしくはこのサイト<http://www.electricsheep.co.jp/hc/>)。20分のTT(
例:蓑毛の先~頂上)の場合、FTPの105%を発揮できることが過去のデータから実証されているので、その分減殺すること。要するに時間が短ければその分頑張れるわけだ。ここでは最も一般的とされている20分TTを紹介する。
やり方:
15分ウォームアップ
1分間最大出力
9分回復走
周回もしくは往復コースで、20分間のTT。最大で追い込む。入りの1~2分は徐々に上げていく感じで。限界点まで来たらその辺りでキープ。できる限り早く、パワフルに、リズムを刻む。最後の1分はまさに爆発する感じで、覚悟を決めて燃え尽きる。かなりつらいセッションなので準備と覚悟を怠らないこと。
20分回復走
参考(トップレベルの数値): T岡さんが310W(ブログより) T大学のN園さんが321W(バイクラ7月号より)
自分を知る
FTPの向上とはすなわちエンジンを効率よく使うことである。
ここに2人のVO2max(最大酸素摂取量)が全く同一の選手がいるとする。決戦の日、FTPの高い方が勝つ。
ここに2人のFTPが全く同一の選手がいるとする。体格も、心肺能力も違うので、心拍は全く違う。つまり、グラフ上の出力は同一だが、主観的なレスポンス(疲労、心拍、感情)は全く違ってくる。FTPが高ければよい、というものではない。ことはもっと奥が深い。
パワーメータユーザーは、よく出力くらべをして勝った負けたに一喜一憂する。しかし、あなたがいくら1000ワットでスプリントができる神であっても、FTPが200wであれば結局最後まで生き残れずゴールラインで自慢することはできない。実験室で驚異的な数字を出す選手が、実際のレースで最初の丘の手前でのふるい落としに生き残れないことだってある。スプリントの生き残りを決めるのは乳酸閾値(LT)の優劣である。
900 wでスプリントが出来、300 wのFTPがあればどのレースでも着に絡めるだろう。
FTPはトレーニングの目標を決める際の重要な指標となる。データがたまれば、FTPを変えることは単純である(簡単ではないが、単純である)。
科学的なこと
VO2max(最大酸素摂取量)が、有酸素運動の限界を決める。青線がそれである。それを超えると、無酸素運動、30秒しかできない猛ラッシュだ。
どのくらい乳酸をためずにその限界線に近付けるか、それを決めるのがFTPだ。持続可能な、といわれる所以がここにある。この閾値を、努力、勤勉、自制によって薄皮を重ねるが如く向上させていく。青線と赤線をなるべく近づけるのが目標である。
上はFTP 300wのライダーのものである。40 km を平均時速40km で走ることができれば、このレベルである。
このテーブルはパワーメータユーザの間では一般的になったCogganのパワーレベルである。各レベルの間は実際はつながっているので、はっきりとした境界線は実際は存在しない。レベル分けはトレーニングの目的を細分化するための便宜上のものである。
運動生理学的な連続
下の運動強度グラフは、パワートレーニングレベルとセットである。
まず、左上から始まり右下で収束する線。これは最大持続時間である。「きつければきついほど長くはできない」
逆に、左下から始まり右上で収束する線。これは生理学的ストレスである。「きつければきついほど疲労はたまり、回復に時間がかかる」
ラクダのコブの線がある。これはレベル4、つまり乳酸閾値でピークを迎える。
レベル4が一番投資対効果が高そうに見えるが、実は体に与える疲労の割には収穫が少なすぎる。(破壊された筋肉の回復に時間がかかる)。レベル3が回復度からいっても、現実的な練習を繰り返しできる点でよい。
レベル4の90分トレーニングと、レベル3の60分 × 2、どちらが効果があるのか?(答えは後者だ。)
ただ闇雲に追い込むのではなく、頭を使って追い込んだ方がよい。
理論を実践に
ラクダのコブの線が最大持続時間の線とFTPの85%で交差している。ここがスイートスポットである。ここに練習の核を置く。
FTPの85%で20分のインターバルを2セット。これを週2回。これだけ!
下のチャートは筆者のオフシーズンから本番までのFTPの推移を表している。オフシーズンは240W、シーズン前は265W、そして本番は300-320wを目指している。
20分のレベル4を2本、ウォームアップ、間の回復、クールダウンを行った。
↓全体の40%をレベル4が占めている。
↓上のグラフの読み替えである。40%のレベル4内での、10W刻みのパワー分布。
↓265wの85%は225.25w。まさにその通りの結果となった。
Norm Powerのところ
FTP 向上セッションは下記からなる:
▼10分のウォームアップ、時々スプリント。
▼20分間FTPの85%で走行
▼4分回復走。上限150 w
▼20分間FTPの85%で走行
▼100回転で6分クールダウン
6週間後、どのように変化したか・・・
あなたにも可能である。
↓21Wの向上、10%の出力アップ。
俺もこうなりてー
まとめ
FTPを計測し、簡単な計算をし、3週間、週2回練習する。回復する週を設け、計算しなおしてもう一度3週間練習する。
簡単なようだが、これで確実にFTPは向上し、自転車に乗るのが楽しくなる。レースでの順位は別として、自分の練習が確実に、着実に結果につながっているのを実感できる効果は計り知れない。
この練習方法だが、必ずしもこの形態に固執する必要はない。要するにFTPの85% 20分×2を週2回できればよいわけで、その内の一本をロード練習でやってもよいのだ。
おわりに
週末のクラブランで、先頭のペースのままに3時間走ったり、5秒だけ1000Wで走ったりしても出力は向上しない。
←耳がいたい。
このトレーニングを続けていればわかるのだが、一意に追い込んでいると感じるスイートスポットがある。このスイートスポットこそが、体感上の達成感よりも効果をもたらす練習での目やすなのだ。
このトレーニングは決して涎をたらし、般若の表情でゲロを吐くまで追い込むものではない。
▼FTPの85%を20 分×2= 継続的向上
この強度のままであれば結果はついてくる。もっと強度をあげたいのであれば、他のインターバルの長さを1分短くすること。踏めるからといって、ワット数をあげてはいけない。強度をこれ以上あげると、結果はおもわしくない。ここは自制して、たまったものはレースで吐き出せばよい。
初心者にFTPをわかりやすく言い換えるのであれば、「巡航速度」である。85%のトレーニングが100%の結果をもたらすこと間違いなし。
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つづく