P突堤2

「でにをは」別口入力・三属性の変換による日本語入力 - ペンタクラスタキーボードのコンセプト解説

TRON OS 原体験がペンタクラスタキーボードに与えたもの

2022-07-11 | ビッグマウス(砕けた文体)(仮)

子供の頃、たまに横浜・関内の書店:有隣堂に連れて行ってもらって本を買ってもらったりしていた。
当時お気に入りだったのは今は廃刊になってしまったが講談社の科学雑誌の「クォーク」。
僕にとって科学の扉を開いてくれた雑誌であり宇宙論や量子論の記事など頭をくらくらせさせながら読んだし、日常雑多なサイエンストピックなども適度に織り交ぜられていてバラエティに富んでいた。
記憶が定かではないが人文記事も割とあって仏教の歎異抄のくだりや禅宗の全機現という言葉を知ったのも当時の思い出だ。

そんな中、コンピューター書のコーナーにひときわ異彩を放つ雑誌が陳列してあった。その名は
「TRONWARE(トロンウェア)」。
まだオペレーティングシステムの何たるかも知らない少年(青年?)の心の片隅に、それはまぶしく映ったものだった。
限られたお小遣いの持ち分で敷居の高い専門的な内容であったため実際に買ったのは数回しかなかったが、
有隣堂へ立ち寄るたびにもれなくTRONWAREのコーナーをチェックして並んだバックナンバーの中から特集・トピックなどをつぶさに吟味することが恒例となっていった。

エルゴノミクスデザインのキーボード、ツリー型のディレクトリとは全く違うネットワーク構造で記述された独特のファイルシステム=実身仮身モデル、BTRON準拠の18万文字のTRONコード文字が使える超漢字OS(今でいうPC的な位置づけ)、IoTの概念を先取りした「どこでもコンピュータ」構想
…などなど開発者の東京大学教授(当時)の坂村健氏のあまりに先進的なビジョンに驚嘆と憧憬の念をいつしか抱くようになり、そのころパソコンは所有してはいなかったものの折あるごとにマンガ喫茶などで検索にいそしむ日々があったのである。
こういった原体験とともに自分自身のアイデアスケッチ・ノートの断片を胸中に携えつつ比較対照の往復をおこなっていたので世間でいう「クリティカルリーディング」のいとなみを無自覚に身につけていったことを思い起こす。
ペンタクラスタキーボードの核心アイデアである「助詞別口入力」はこのようなプロセスの中から萌芽していったのはいうまでもない。

近年、TRON OSのビジョンや先進性について再評価する動きが高まっている機運を感じる。
先般のNTTの株主総会や国会質疑などで相次いで、象徴的なやりとりがあった。
「デジタル自給率を向上させることが求められる」
「国産の検索エンジンやツイッターのようなサービス作れないの?」「マイクロソフトのような国産OSはできないの?」という質問。
これに対するネット界の反応は
「株主の妄言」「何をいまさら」「寝言は寝て言え」「めっちゃ使いたくない、迷惑 < 国産OS」
「IT基礎技術で国籍にこだわると死ぬ」
など否定的な反応が多く見られた。(嘲笑半分)
しかし少数ながら
「アメリカのスーパー301条でつぶされたTRON」
「組み込み向け用途のリアルタイムOSとしてのITRON(アイトロン)は今でも結構シェアあるぞ」
「80年代にTRONの重要性に気が付かなかったほど先見の明がないヘボい政府や企業にそんなこと期待する方が無理」
などの意見もみられた。こちらは(くやしさ半分)といったところか。

これは根っからのTRONファンにとっては古傷を痛めながらの予想外の遅咲きに困惑気味にまんざらでもない面持ちでもあるのではあるが
最近目立つようになってきたのが安易なナショナリズムや陰i謀i論iと結びついた、訳知り顔の新参どもがはき散らかす「扇動的言説」の流布が気になっている。
検索のノイズになって迷惑この上ないのはともかく、こういった言説が一定数の支持を得て潜在的なバイアスを広く植え付け、もしかしたらさきほど俎上に上った発言を引き出す要因となっているとするのなら心胆を寒からしむるものがある。
やれi開i発i者iがi陰i謀iにiよiっiてi殺iさiれiたiであるとか物騒で思慮のない思い込みをパブリックなところで目にしてしまうのは不愉快でもあるし精神を消耗させられるのだからとても厄介だ。

フェイクをまき散らす彼らには彼らなりの悔しい思いがあったのかもしれないし筋違いではあるが義憤によって物申しておられるに至ったかもしれないのだが、少し冷静になってほしい。
欠乏や喪失は推進力にはなるが、源泉にはなれない
ということだ。
ほかでもない私には有隣堂で培った"原体験"がビビッドに焼き付いており、それは喪失の物語ではなく「獲得の物語」であったということだ。
今後ももこうした言説に惑わされることなく、技術動向をシビアに見定めつつ、夢想家の夢も捨てることなく獲得の物語のレールのその先を走っていきたいと心を新たにしていこう。

 

…失礼を承知で筆汚し申し訳ないが締めにひとこと書き添えておくと
TRONプロジェクト提唱者にして開発者の坂村健氏はもちろんご存命であるし、
先般のNTT株主総会での「国産OS」を巡る発言の一端もよくこんな質問が出るなと思った方、それも当然、
坂村健氏は2019年よりNTT取締役・執行役員に名を連ねており件のやり取りが出たのも坂村氏が臨席することを念頭に置いたうえでの質問であったということ。

以上で懐古と最新事情が交錯した6月の出来事であったが90年代当時の店頭でTRON搭載機というのは見たこともなく
デモ動作も動画すら知らない私にはTRONファンを自称するにはまだまだ修行が足りないということなのであろう。

今度どこかで展示がしてあったら見てみたいな。
ハッシュタグは、自重しておく。
今回は以上でした。

 


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