しずくな日記

書きたいなあと思ったときにぽつぽつと、しずくのように書いてます。

民藝のレッスン 1

2014-02-14 00:13:06 | 日記
京都にまたやってきた。
13時半から、京阪三条のVOXビルというところで行われた講義を聞くため。


MEDIA SHOP レクチャーシリーズ
<民藝>のレッスン 番外編 集中講義
図から地へ 地から図へ
~Figures and grounds~

という、5つの講義からなる1時間半×5回、約10時間に及ぶ集中講義だ。

さっき、23時すぎに終わったばかり。
興奮冷めやらぬ、というかまだ会場には残っている方もいらっしゃるみたいだ。


元々、手作りには興味があった。
授業で陶芸を行う際、知識として各地に様々な焼き物があるということを実物とともに紹介しながら、柳宗悦の民藝運動にも少し触れた。

生徒にさわりを説明できるほどにしか学ばなかったのだけど、
近年、また興味が湧いていた。
Twitterでこの講義の存在を知り、申し込んだあと、関連図書を購入して読んだ。


これ。

民藝とは何か、から始まり、
それが今の時代の中で、どんな意味があるのか、という考察。

本は本で学ぶことはあったのだけど、
今回の講義は、そこにいたことに意味があったように感じられた。

熱気。今の時代を、より良い方向へ持っていきたいという。
京都って、学生にもそういう熱があったように思う。懐かしかった。


今の時代、民藝に注目することは、単なる骨董を愛でる行為なのではなく、何より人間らしく、日々を工夫し丁寧に暮らしたい、そこに、生きる力を見出したいという気持ちの表れなのだろうとわかった。

このことは、心の中に言葉にならない形で雲のように漂っていたけど、講義を聴いて初めて言葉にできた。




LESSON1は、哲学者の鞍田崇さんによる「なぜ、今、<民藝>なのか」。

覚えていることを文章にして書き出して、頭を整理します。ここからはメモ。



話は先日の都知事選の投票率から始まった。

46.14。
これが今回の投票率だそうだ。
投票したい人がいなかった、というのは、言い換えれば、自分たちと同じ感覚を持っている人がいなかった、何も託せなかった、ということ。

また2000年あたりを機に、クーネルなどのライフスタイルを提案する雑誌がつぎつぎに創刊される。
日常生活の質への関心が高まってきたのだ。

このような今の時代を、
鞍田先生は、柳宗悦が生まれた時代~民藝運動を繰り広げるようになった時代と比較し、現在の民藝ブームが何を示しているのかを提示した。


柳宗悦が生まれたのは1889年。
この年、パリ万国博覧会で機械館が注目され、時代は機械工業を礼賛する「machine age」に突入する。日本もその洗礼を受け、近代化がどんどん進められていく。


柳宗悦の民藝運動が活発に行われる契機となった年は1928年。
パリ万国博覧会から約40年経過し、
柳は、国が推し進める近代化、工業化、また芸術が一部の天才によって造られ、献上されるものである、という考えに対して反発し、普通に各地で使われていた民具の中に、健康な美しさを感じて、それを「民藝」と名付けた。


そして今。
上の場合と同じように、今から約40年遡ってみると、1970年の大阪の万国博覧会につきあたる。

ここでは電力館が注目を浴び、原子力によるエネルギー問題の解決が生み出す明るい未来が提示されていた。
「atomic age」の到来である。


私たちはatomic ageの中を生きてきたけれど、3.11により原子力は脅威でしかあり得ないことにようやく気づかされた。
そして誰かを踏み台にし、その犠牲の上で幸せに暮らしていたことを思い知った。


そんなとき、人間らしく生きるとはどういうことだろう?と考える人が、
自ら工夫し、より良く生きようとすることを提唱した民藝運動に関心を持つことは全く不思議ではないと。

ちなみに柳宗悦が民藝運動で活躍した1928年頃、
建築家である藤井厚二という方も、環境の中での建築という観点を見いだし、
哲学者の和辻哲郎も「風土」という言葉で、環境の中での人間の暮らしについて考えた。

この3人の考え方は、自然と人間が接続して生きることを基盤としている点で共通点がある。

ならば今、民藝運動というキーワードを通して、自分たちがどこに着地しようとしているのかを考えようと。


誰か(原子力施設を地方に作ったように)を踏み台にせず、
それぞれが自分の価値意識や美意識を育て、消費の渦に巻き込まれることなく、周囲の環境を考えながら調和し工夫して生きていく。

民藝は、そういう暮らしを志向しているのではないか。

LESSON1の主旨はこんな感じだった。






























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