『笛物語』

音楽、フルート、奏法の気付き
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  日々の出来事など

フルート奏者・白川真理

右腕

2023-01-20 21:56:03 | 気付き
昨日、電話で、急遽とある音楽家の方の内輪の追悼会コンサートへのオファーをいただきました。

ずっと海外で活躍し、多くの著名な音楽家のお弟子がおいでだった方。

私には全くご縁がなかった方ですが、その方と深い所縁のある方からのご依頼で、「水月」を吹いてほしい、とのこと。そのお気持ちが有難く、急遽、私も参加し、演奏することになりました。

その折、ふと、フルートが吹けなくなってしまわれた方のお話が出ました。

所謂、フォーカルジストニア。

専門家ではないし、心の領域も関係するものだから、迂闊な事は言えないけれど、これは他人事ではなく、自分にとっても、誰にとっても起こりうる問題だと思う。

楽器演奏自体が、不自然な構え方や動きを長時間強いるもので、それも「本番」という失敗が許されない毎回の真剣勝負の緊張の中、行われているのだから。

第一線で活躍していればいるほど、このリスクは増大するのだろうと思う。

寝る前に、もし直接助言を求められたら、そして以前よりは依頼の本番が増えてきている自分にとっても、こうした状態にならないようにするには、どうしたら良いか?とふと考えた。

結論は、もちろん甲野先生の下、ずっと取り組んできている滞りのない心身奏法で、というものだけれど、まだまだ、沢山の「病」がおびき出されてきている現状。

今は右腕と肩周辺が課題。

「ここしかない腕」、つまり「腕のフック化」によって、激変した響きだけれど、人前でこの動きをするわけにはいかず、舞台袖でこの動きをして、感覚を覚えておいて、舞台上では掬い手で持ち上げてから右手をすべらせながら回転させてキイの上に置いて、とやっている。

この最期に指をキィに置くために手首を回転させる時のごくわずかな滞りが昨年末くらいからずっと気になっていて、なんとかしたいなあ、と思っていたのだけれど・・

つまり、これをそのままヨシとして放置していると、場合によってはジストニアの原因にもなりかねないよね、と思えたのだった。

フルート奏者のジストニアは口元に起きることが多い。
吹こうとすると震えてしまう。

私も学生時代、そして演奏活動をするようになった後も、今の奏法になる前は、何度も震えて大失敗、という経験がある。

それがジストニアまで至らなかったのは、おそらく本番回数も、練習時間も圧倒的に少なかったからではないか?と思う。

口元への対処方法なども色々考えられるけれど、それ以上に腕、肩、首の取り扱いというのは、とてもこの口元周辺にも影響を及ぼす。

そんなことをつらつらと考えていて、ベッドの中で腕だけで試していて、すぐに閃いた。

多分、実際にフルートを持っていなかったから良かったのだと思う。

それまで、私はフルートの天地を勝手に自分で決めて、それを動かすことなど微塵も考えていなかったのね、ということを発見してしまったよ。

半世紀吹いてきて、やっと。

なんと愚かなこと、と茫然としてしまった。

あのフルートの厚みを最後にヨイショっと指でまたぐときに、思いっきり発生していた滞りの芽。それは時間と共に育ち、筋肉を疲労させ、響きの邪魔をし、パフォーマンスを低下させる。

フルートを手前に回せばいいんじゃん!?
フルートのキイの方から指下に来るようにしむける。
フルートと手指が繋がったところで、再び外に回して口元に当て直す。

ということで、久々に上機嫌な目覚めとなった本日でした。
右肩がラクチンで、微妙にあった口元の滞りも解消されて、また新たな世界に。

こうした些細な事が、とても嬉しいので、やめられない・・