copyright (c)ち ふ
絵じゃないかぐるーぷ
平成初めの頃です。
題名変更版
* 羅城門、雨に濡れて(002)
日はもうとっぷりと暮れていた。
私は、9号線から京都市内に入り、
名神の京都南インターへと急いでいた。
福知山あたりから、雲行きがおかしくなり、
季節遅れの激しい夕立にあった為、
すっかり予定が狂ってしまった。
私は、かって大台ケ原で雷に
ひどい目に遭わされているので、
雷が鳴り始めると、
即、走りを止める事にしている。
この日も、9号線沿いの喫茶店に入り、
夕立が通り過ぎるのを待っていた。
だいたい雷のゴロッピのヤツは、
小1時間も暴れるとどこかに行ってしまうものだが、
今日は夫婦喧嘩でもして、
どこか虫の居所が悪かったのか、
2時間近くも暴れ回っていた。
ウサ晴らし出来るヤツは幸せだ。
その間、私はじっと辛抱して待っていた。
天気は西から東へと移ってゆくことが多い。
ということは、わが妻Oあゆかさんの待つ
奈良県新益京市の
わが家を目指して帰れば、
私はゴロッピを追い掛けることになる。
ヤツの褌姿なんぞ、
この年になって追い掛けたくはない。
まあ、若くても同じことだろうが。
そんなわけで、気は急いているのだが、
それ以上にヤツの傍に近づきたくはなかったので、
仕方なく、ぐずぐずと喫茶店に居据わり続けていた。
コーヒーを2杯飲み、オムライスを食べた。
普段は、ゴロッピのヤツが居なくなれば
雨は上がるものだが、
なかなか止みそうにもなかった。
夕立の暗さから、
横滑りに夕闇がやってきたようであった。
いつまで待っていても、キリがないので、
青いレインウェアーを羽織り、帰ることにした。
Oさんには「雷が鳴っているので、
少し遅くなりそうだ」と
TELを入れている。
雨の中の走り、雨走りであった。
雨は冷たかった。
京都市内に入る頃には、10時を越えていた。
雨の上に夜ときている。
タクシーの跳ねる水しぶきが、
容赦なく私とSサヤカを襲う。
ネオンが道路に落ちて、
きらりんきらりんと光っていた。
京都タワー、東寺を過ぎて、しばらく行くと、
車もめっきり少なくなる。
ネオンも無くなり、
黒い闇と雨にけぶる
町並みが大きく目に移る。
そんな時であった。
道路の前方で、
小脇に何かを抱えて
手を振っている人影が見えた。
バックミラーは、後からタクシーが来る姿を
映し出してはいない。
ということは、
この私に何か用事があると言うことだろう。
少々うす気味悪いが、知らない顔して
通り過ぎるのも、
気が引けたので、
サヤカのスピードを弛め停車してやった。
つづく
絵じゃないかぐるーぷ
平成初めの頃です。
題名変更版
* 羅城門、雨に濡れて(002)
日はもうとっぷりと暮れていた。
私は、9号線から京都市内に入り、
名神の京都南インターへと急いでいた。
福知山あたりから、雲行きがおかしくなり、
季節遅れの激しい夕立にあった為、
すっかり予定が狂ってしまった。
私は、かって大台ケ原で雷に
ひどい目に遭わされているので、
雷が鳴り始めると、
即、走りを止める事にしている。
この日も、9号線沿いの喫茶店に入り、
夕立が通り過ぎるのを待っていた。
だいたい雷のゴロッピのヤツは、
小1時間も暴れるとどこかに行ってしまうものだが、
今日は夫婦喧嘩でもして、
どこか虫の居所が悪かったのか、
2時間近くも暴れ回っていた。
ウサ晴らし出来るヤツは幸せだ。
その間、私はじっと辛抱して待っていた。
天気は西から東へと移ってゆくことが多い。
ということは、わが妻Oあゆかさんの待つ
奈良県新益京市の
わが家を目指して帰れば、
私はゴロッピを追い掛けることになる。
ヤツの褌姿なんぞ、
この年になって追い掛けたくはない。
まあ、若くても同じことだろうが。
そんなわけで、気は急いているのだが、
それ以上にヤツの傍に近づきたくはなかったので、
仕方なく、ぐずぐずと喫茶店に居据わり続けていた。
コーヒーを2杯飲み、オムライスを食べた。
普段は、ゴロッピのヤツが居なくなれば
雨は上がるものだが、
なかなか止みそうにもなかった。
夕立の暗さから、
横滑りに夕闇がやってきたようであった。
いつまで待っていても、キリがないので、
青いレインウェアーを羽織り、帰ることにした。
Oさんには「雷が鳴っているので、
少し遅くなりそうだ」と
TELを入れている。
雨の中の走り、雨走りであった。
雨は冷たかった。
京都市内に入る頃には、10時を越えていた。
雨の上に夜ときている。
タクシーの跳ねる水しぶきが、
容赦なく私とSサヤカを襲う。
ネオンが道路に落ちて、
きらりんきらりんと光っていた。
京都タワー、東寺を過ぎて、しばらく行くと、
車もめっきり少なくなる。
ネオンも無くなり、
黒い闇と雨にけぶる
町並みが大きく目に移る。
そんな時であった。
道路の前方で、
小脇に何かを抱えて
手を振っている人影が見えた。
バックミラーは、後からタクシーが来る姿を
映し出してはいない。
ということは、
この私に何か用事があると言うことだろう。
少々うす気味悪いが、知らない顔して
通り過ぎるのも、
気が引けたので、
サヤカのスピードを弛め停車してやった。
つづく