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絵じゃないかぐるーぷ
平成初めの頃です。
題名変更版
* 遠くて近きもの
私は、前の三人のその後の暮らしも気になっていたので、生駒の象頭の生神様の所へ顔を出すことにした。むーみぃ姫の相談もしたかった。彼らは、私とサヤカを歓待してくれた。あの有名なご馳走「芋粥」まで炊いてくれたのだ。感激だ。
それにしては不味かった。(ガラバァ、ごめんな)
暮らし向きも、かなりよくなってきているようだ。ガラバァの身だしなみがそれを物語っている。彼女も男二人に囲まれて、色気を取り戻しつつあるのだろう。見違えるほど女らしくなっていた。よく見ると大分若返っているみたいだ。この調子ではバナイランの花嫁になる道もそう遠くはないだろう。下ピーのニキビ脂とバナイランのデカ鼻脂の効き目によるものだろうか?
バナイランからは、劣等感がすっかり消えていた。貫禄十分な生神さまに見える。それにしても、けったいな鼻である。私は、「鼻持上(はなもた)げの木」に不自由しているだろうと思って、「縄通」ネットの運営責任者・唐招提寺の観音はん、観女センティから顔一つと両手1セットのリース契約を勝手に結び、お土産代わりに持っていった。もちろん、タダではない。
使い方の説明をして納得してもらえば、代金はバナイランに肩代わりをしてもらうつもりだ。契約違反になるのだろうが、私もこれ以上の出費には辟易している。顔は、センティにバナイラン加工を施してもらったので、イメージ的には似ている。遠くて薄暗ければ誰も見破る者はいないだろう。神様とはいえ人間の生神様、休みや息抜きも必要だろうから、その時の代用品である。
リースした両手は、もちろん下ピーやガラバァの代わりに食事時にバナイランの鼻を持ち上げる為に使うのだ。バナイランは即座に飛びついた。金に糸目をつけない雰囲気だ。リース料金は月々2,060円なのだが、今私が立て替えているサヤカとジョジィの料金2,060円も上乗せしてやった。彼らも、センティの手貸し商売の恩恵にあずかっているのである。
そのうえに、毎月飼い犬のコロにセンティの所へリース代の支払いに行って貰っている。お使い賃代わりの彼の、身だけが大好物の犬多食フライドチキン代、1,030円もプラスしてやった。月々、5,150円の負担である。バナイランは、そんなに安いのかと驚いた。
よかった。助かった!
コロには、生駒に寄り西の京へ行く手間が増えるが、まぁ何とか引き受けてくれるだろう。私は少し悪い気がしたが、金が余っているところから無い所へ回して貰うのは許されることだろう、と割り切っている。きちんと説明して、立て替え払いをしてくれと泣きついたらいいのだろうが、まだそれほど親しくはないし、長々と説明するのも邪魔くさかったので省略した。咄嗟の経済的打算が働いたのだ。すぐさま自己負担を軽くする発想が出来るのは金欠病の特権でもあるのだろう。
手の話も落ち着いたので、私は、むーみぃ姫の話を持ち出した。下ピーとガラバァの顔には、私に感謝する色が滲み出ている。毎度、毎度の食事の度に鼻に手をとられるのは余程苦痛だったのだろう。
ガラバァは、むーみぃ姫のことはよく知っていた。さすがは伊達に歳を取ってはいなかった。むーみぃ姫の髪の毛は、乳母の{吸ばば}に頼まれて鬘にしてやったという。遠くて近きは他人の仲。感心して聞いていた。元恋人のゼンジーは、男の子と女の子の二人の子供に恵まれ、平穏な官庁暮らしを送っているらしい。もうすっかりむーみぃ姫の事は忘れてしまっているようだ。
この何たる不公平!
くそー、神も仏もあるものか!
やはり、人間が一番頼りになる。私は家に帰ってから、「縄通」ネットでジョジィに相談してみた。ジョジィは、むーみぃ姫の鬘を捜し出し彼女の魂に安住の地を与えてやれと進言してくれた。もう何100年も飛び続けているので、エネルギーも弱まっているだろうし、怒りもかなり収まっていることだろうと教えてくれた。
私は、「縄通」ネットの捜し物コーナーに、むーみぃ姫の鬘を打ち込んでおいた。数日後、センティグループの和歌山県にある道成寺のご本尊・南の千手観音から、
「うちに奉納されている清姫人形に使われている」との返信が入った。
つづく