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絵じゃないかぐるーぷ
平成初めの頃です。
題名変更版
* 秀香、救出計画(008)
その場は二人の承認ということで、切り抜けることにした。宴会は、良ヒネの娘、秀香を助けた後で、盛大にやろうということになった。
バナイラン達は、どこで手に入れたのか、龍はんの「地獄変」の下書きを持っていた。やはり蛇の道は蛇に限る。下ピーが、みんなに分かるように下書きを読んだ。下書きだから、私の読んだものとは、かなり違っていた。
助けるべき者は以下の通りだ。
1・牛に引き殺される老人
2・橋柱にされる童
3・みみづくに蛇
4・生き焼きにされる秀香
5・同じく猿、 の6体である。
聞き終わって、どのようにして助け出すが問題になった。色々と意見が出たが、誰が誰を助けにゆくのかが、問題だ。龍はんの顔を立てるという大前提もある。話の筋を変える訳にはゆかない。原作に忠実で、しかも誰にも疑問を抱かせないように行動しなければならない。ここは、皆の知恵を絞り出す必要がある。
議長はキヨヒメに頼むことにした。一種の黙らし作戦だ。「蛇ん蛇ん連合」のヤツラもよく分かっている。彼女を議長に押し立てた気持が痛いほどよく解る。
まず、1番の牛に殺される老人をどうするかからスタートした。牛のヤツは日頃は大人しく構えているが、ヤツはあれでも人をじっと観察しているのだ。女や子供だと馬鹿にして鼻でせせら笑って言うことなど聞きはしない。
ヤツに命令するのは、単純だ。進め、止まれ、右へゆけ、左へゆけ、回れぐらいですむ。命令語は、地方によって違うが、シとボの組み合わせが多いようだ。例えばシーシーで、進めとなり、ボーボーで止まれとなる。ヤツはストレスを貯めに貯めて一気に吐き出すクセを持っている。
ストレスが爆発すると数キロは目の色を変えて疾走するのだ。その時は命令など聞く耳は持ってない。走るだけ走らせば、後は次の噴火までは静かだ。血を抜いて気を鎮めることもするようだ。老人はその疾走中に事故に遭うのだろう。老人に細工をするか、牛に何かをするかが問題となった。
私も小さいころ、牛が走る姿を見たことあるが、ヤツはあれでも結構周りの様子を見ながら走っているのだ。前から車が来たりすると、上手に避けて走る。人がいても避けて走る。そうそう人を蹴殺したりはしないのだ。
私がそのことを指摘すると、下ピーやバナイランも相づちを打ってくれた。おそらく二人とも田舎暮らしをしていたので、どこかでそういう光景を目にしているのであろう。そこで私は提案した。
龍はんが散歩している時、ナカヤキが牛に化けて、牛走りを見せてはどうだろうか? 龍はんも目の前で牛の走りを見れば、また書き方も変わるかもしれないのではないか? 他に意見も無かったので、運よく私の意見が採用された。
2番目は、人柱の話である。これは、あの子を助け出しても、そういう風習が止まない限り、誰かが犠牲になる。風習や因習は一筋縄では廃止されない、頭の血管の中にこびりついた悪玉コレステロールのようなものである。なかなか取れるものではない。これは変身術を使うしかないだろう。石と言えば、奈良県明日香村に住む石舞台の大岩ソガーンに頼むしかないだろう。
そういうことで、一件落着。
3番目はみみづくに蛇。これはキヨヒメが仲間同士の縁で、こちらに連れてくることになった。
4番目は、これが一番の主題だ。簡単にはゆかないだろう。燃えさかる炎のなかを助け出さねばならない。このグループの中には、火に強いものはいない。中々、意見が出なかった。
そうだ! 灯台元暗し。キヨヒメがいた!
「キヨちゃん、炎のコントロール出来るんだろ?」
私は、聞いてみた。
「やってやれないことないわ」
彼女にとっては、車を焼く炎ぐらいは、涼しいぐらいのものだ。これ もキヨヒメが担当することとなった。
5番目は、ついでにキヨヒメが助けることに決まる。
ナンダ、ナンダ、これは!
決まってみると、救出作戦のチーフはすべて外人部隊ばかりになってしまった。無理もない。新興宗教家に、食べ物屋、泣き虫姫のグループでは、とてもじゃないが、この難局は切り抜けられまい。
だいたいが、言い出しっぺは、己の手を汚さないものと相場が決まっている。本当に実行する奴は、人に言う前に実行に移している。自分たちでは、どうしようも出来ないから、相談を持ちかけるのだ。それにしても何という大胆でド厚かましい神経をしているのだろう。うらやましい限りだ。私には、とてもそんな真似は出来そうにもない。そういう性格も会社生活には、不向きなのだろうか。
つづく