copyright (c)ち ふ
絵じゃないかぐるーぷ
平成初めの頃です。
題名変更版
* キヨヒメへの頼みごと
道成寺と言えば、あの悲恋の牝蛇・キヨヒメの住む所ではないか。情熱な蛇だ。「蛇ん蛇ん」連合の議長でもある。性格は、攻撃的な清姫と受け身的な六の宮の姫、正反対のようだが、悲恋の似たもの同士、私はむーみぃ姫の魂の道成寺への誘導をキヨヒメに頼むことにした。また、念のため鏡の精ヤッタールに清姫人形に先住者が居ないかどうか調べて貰うことにしよう。
私は次の土曜日、国道24号から42号を通って和歌山の日高郡にある道成寺へ行きヤッタールに先住者分析をしてもらい、キヨヒメを連れて京都の朱雀門へと引き返した。目の回るような走りだ。私が、2美人を相手に張り切っているものだから、バイクのサヤカも機嫌が悪かった。ヤッタールの分析結果では、ありがたい事に先住者は居なかった。
これで堂々と、むーみぃ姫の魂も清姫人形に入り込むことが出来る。後はキヨヒメの説得次第だ。キヨヒメも道成寺の千手観音からゆきさつは聞いているので、同類あい哀れむの例えのごとく、ヤル気十分になってくれていた。彼女の好物の卵をお土産に3ダースほど持っていったので、さらにルンルン気分になっていた。
私は、蛇が大嫌いなので、いくら美人のキヨヒメとはいえ、気持悪くて仕方なかった。後のシートの段ボール箱に収まっているのだが、いつ{オッさん}と肩でも叩かれはしないかと不安でならなかった。バイクに乗っていると前後左右に気を使わなければならないのに、積み荷にまで気を使うのは疲れる。それに、その日の走りは、もう限界ギリギリの強行軍だった。
京都に行って話がつけば、キヨヒメを送り返してゆかなければならない。送って行けば、私にはOさんの待つねぐらに、またまた引き返さなければならない走りが待っている。そんな事を考えると気が重かったが、そんなことよりも説得がうまくゆくかどうかが、大問題である。
京都の朱雀門に着いた。美女二人の論戦が始まった。私はサヤカの翻訳機能を利用して一部始終を聞くことにした。
{おい、てめぇ、いつまでそんな所でめそめそしているんだ!!}
さすがに情熱蛇、迫力満点。
{そなたは、だーれ?}
{わらわは、キヨじゃ。文句あっか!}
{きよ?}
{そうじゃ、あのキヨよ! てめぇも、道成寺のキヨと言えば、聞きおよんでいるであろうが!}
{アッ! あの! ・・・ あなたのように、あの人をこの手で、殺してしまいたかった}
{わらわは、アンジン様を殺したりはしていない。だが、そんなこと、今はどうでも良いことじゃ。てめぇも、今ごろボヤいても、もう遅いわ! それより、あんな薄情な男の事は忘れて、わらわについてこい! 道成寺へ行こう!}
{なぜ、私が道成寺などへ?}
{てめぇが、そこでウロウロしていると、心配するヤカラが大勢いるのよ!}
{えっ、この私を気にかけてくれる人がいるって? どなたでしょう?}
{それ、そこに居る特大ゴキブリのようなオッさん}
ヤバッ!
私のことを持ち出しやがった。まだ、ちよっと早すぎる。むーみぃの心が、もっと柔らかくならなければ、逆恨みされるだけだというのに、キヨヒメの奴、やっぱり振られるだけのことはある。そんな所が無神経だ。
男は、そんな女の無神経さに嫌気がさすのが、まだ分かっていな い!
それに、特大ゴキブリとは!
女の口から出る紹介の言の葉ではないっ!
ムカッ!
{それに、お前の親戚筋の下ピー、ガラバァ、バナイラン}
{ああ、お懐かしい方々}
{皆、お前の今の姿、嘆いているぞ!}
{そうだったの。わたくしのことなどを・・・}
{道成寺には、お前の髪の毛がある。わらわに似せた人形の髪の毛じゃ。その中には入れ! そして、わらわと共に楽しく暮らそう}
{・・・・・ 1~2日考えさせて下さい。どう行けば、その道成寺には行けるのでしょう?}
{おーい、オッさん! 出番だぞー、道順教えてやってくれー}
すぐに振ってくるのだから、適わん。てめぇの住みかぐらい覚えておけよ。仕方ない。教えてやるとするか。
{こんばんわ、はじめまして}
返事はない。男への敵意は消えきっていない。当たり前の話だ。
何100年の思いが、そう簡単に変わられて堪るものか!
それでいいのだ!
君には時間がまだまだいる。私は、下ピー達のいる生駒と道成寺への道順を教えておいた。わからなければ、テレパシー通信網を使うように進言しておいた。彼女は孤独を好むタイプなので、利用の仕方も全然知らないようだった。その利用の仕方の詳しい説明は、サヤカに任せた。むーみぃは、サヤカの存在に驚いたようだが、そこはそれなりの世界、すんなりと飲み込めたようだった。
むーみぃに考える時間を与えて、私とサヤカとキヨヒメは、帰路についた。3人とも少しホッとしていた。おそらく、九分九厘、むーみぃは道成寺に行くと思ったからだ。
自宅近くで、もう夜中の12時を回っていたので、キヨヒメには大神神社の牝の白蛇・ミカ・ホワイトスの所へ泊まって貰うことにした。ミカ・ホワイトスは、古事記の時代から存在している、主のような白蛇だ。
しまった!
忘れてしまっていたが、ミカ・ホワイトスも悲恋の大ベテランだった。一緒に行ってもらうのだった。そうすれば、もっと説得力が増したのに!
今更気づいても、もう遅い。キヨヒメもミカ・ホワイトスも、先の話でお馴染みの「蛇ん蛇ん」連合のグループ員同士だから、夜遅く訪ねて行っても、文句は言わなかった。
それにしても、キヨヒメは迫力のある女だ。あれでは男に持てまい。女にしておくのは不公平のように思う。しかしながら、あのド迫力、あの情熱、是非とも見習いたいものだ。
家に帰ると、もう夜中の1時を過ぎていた。Oさんは心配そうに待っていた。それが、私の顔を見るなり、
「こんな時間まで、何してるの! いい加減にしなさいよ!!!」
こちらも、キヨヒメに負けず劣らず、迫力満点!
{帰らぬむかしーぃが、あーあ、なつかしいー}
それにしても、女は恐い!
そんな恐い女相手に、恋を仕掛ける男どもよ、中途半端な姿勢を正 して、生命を賭けて恋の一本道を突っ走ろう!
恋などは 己れがするもの 仕掛けるもの
他人(ひと)のことなど お役に立たぬ
ち ふ
つづく
絵じゃないかぐるーぷ
平成初めの頃です。
題名変更版
* キヨヒメへの頼みごと
道成寺と言えば、あの悲恋の牝蛇・キヨヒメの住む所ではないか。情熱な蛇だ。「蛇ん蛇ん」連合の議長でもある。性格は、攻撃的な清姫と受け身的な六の宮の姫、正反対のようだが、悲恋の似たもの同士、私はむーみぃ姫の魂の道成寺への誘導をキヨヒメに頼むことにした。また、念のため鏡の精ヤッタールに清姫人形に先住者が居ないかどうか調べて貰うことにしよう。
私は次の土曜日、国道24号から42号を通って和歌山の日高郡にある道成寺へ行きヤッタールに先住者分析をしてもらい、キヨヒメを連れて京都の朱雀門へと引き返した。目の回るような走りだ。私が、2美人を相手に張り切っているものだから、バイクのサヤカも機嫌が悪かった。ヤッタールの分析結果では、ありがたい事に先住者は居なかった。
これで堂々と、むーみぃ姫の魂も清姫人形に入り込むことが出来る。後はキヨヒメの説得次第だ。キヨヒメも道成寺の千手観音からゆきさつは聞いているので、同類あい哀れむの例えのごとく、ヤル気十分になってくれていた。彼女の好物の卵をお土産に3ダースほど持っていったので、さらにルンルン気分になっていた。
私は、蛇が大嫌いなので、いくら美人のキヨヒメとはいえ、気持悪くて仕方なかった。後のシートの段ボール箱に収まっているのだが、いつ{オッさん}と肩でも叩かれはしないかと不安でならなかった。バイクに乗っていると前後左右に気を使わなければならないのに、積み荷にまで気を使うのは疲れる。それに、その日の走りは、もう限界ギリギリの強行軍だった。
京都に行って話がつけば、キヨヒメを送り返してゆかなければならない。送って行けば、私にはOさんの待つねぐらに、またまた引き返さなければならない走りが待っている。そんな事を考えると気が重かったが、そんなことよりも説得がうまくゆくかどうかが、大問題である。
京都の朱雀門に着いた。美女二人の論戦が始まった。私はサヤカの翻訳機能を利用して一部始終を聞くことにした。
{おい、てめぇ、いつまでそんな所でめそめそしているんだ!!}
さすがに情熱蛇、迫力満点。
{そなたは、だーれ?}
{わらわは、キヨじゃ。文句あっか!}
{きよ?}
{そうじゃ、あのキヨよ! てめぇも、道成寺のキヨと言えば、聞きおよんでいるであろうが!}
{アッ! あの! ・・・ あなたのように、あの人をこの手で、殺してしまいたかった}
{わらわは、アンジン様を殺したりはしていない。だが、そんなこと、今はどうでも良いことじゃ。てめぇも、今ごろボヤいても、もう遅いわ! それより、あんな薄情な男の事は忘れて、わらわについてこい! 道成寺へ行こう!}
{なぜ、私が道成寺などへ?}
{てめぇが、そこでウロウロしていると、心配するヤカラが大勢いるのよ!}
{えっ、この私を気にかけてくれる人がいるって? どなたでしょう?}
{それ、そこに居る特大ゴキブリのようなオッさん}
ヤバッ!
私のことを持ち出しやがった。まだ、ちよっと早すぎる。むーみぃの心が、もっと柔らかくならなければ、逆恨みされるだけだというのに、キヨヒメの奴、やっぱり振られるだけのことはある。そんな所が無神経だ。
男は、そんな女の無神経さに嫌気がさすのが、まだ分かっていな い!
それに、特大ゴキブリとは!
女の口から出る紹介の言の葉ではないっ!
ムカッ!
{それに、お前の親戚筋の下ピー、ガラバァ、バナイラン}
{ああ、お懐かしい方々}
{皆、お前の今の姿、嘆いているぞ!}
{そうだったの。わたくしのことなどを・・・}
{道成寺には、お前の髪の毛がある。わらわに似せた人形の髪の毛じゃ。その中には入れ! そして、わらわと共に楽しく暮らそう}
{・・・・・ 1~2日考えさせて下さい。どう行けば、その道成寺には行けるのでしょう?}
{おーい、オッさん! 出番だぞー、道順教えてやってくれー}
すぐに振ってくるのだから、適わん。てめぇの住みかぐらい覚えておけよ。仕方ない。教えてやるとするか。
{こんばんわ、はじめまして}
返事はない。男への敵意は消えきっていない。当たり前の話だ。
何100年の思いが、そう簡単に変わられて堪るものか!
それでいいのだ!
君には時間がまだまだいる。私は、下ピー達のいる生駒と道成寺への道順を教えておいた。わからなければ、テレパシー通信網を使うように進言しておいた。彼女は孤独を好むタイプなので、利用の仕方も全然知らないようだった。その利用の仕方の詳しい説明は、サヤカに任せた。むーみぃは、サヤカの存在に驚いたようだが、そこはそれなりの世界、すんなりと飲み込めたようだった。
むーみぃに考える時間を与えて、私とサヤカとキヨヒメは、帰路についた。3人とも少しホッとしていた。おそらく、九分九厘、むーみぃは道成寺に行くと思ったからだ。
自宅近くで、もう夜中の12時を回っていたので、キヨヒメには大神神社の牝の白蛇・ミカ・ホワイトスの所へ泊まって貰うことにした。ミカ・ホワイトスは、古事記の時代から存在している、主のような白蛇だ。
しまった!
忘れてしまっていたが、ミカ・ホワイトスも悲恋の大ベテランだった。一緒に行ってもらうのだった。そうすれば、もっと説得力が増したのに!
今更気づいても、もう遅い。キヨヒメもミカ・ホワイトスも、先の話でお馴染みの「蛇ん蛇ん」連合のグループ員同士だから、夜遅く訪ねて行っても、文句は言わなかった。
それにしても、キヨヒメは迫力のある女だ。あれでは男に持てまい。女にしておくのは不公平のように思う。しかしながら、あのド迫力、あの情熱、是非とも見習いたいものだ。
家に帰ると、もう夜中の1時を過ぎていた。Oさんは心配そうに待っていた。それが、私の顔を見るなり、
「こんな時間まで、何してるの! いい加減にしなさいよ!!!」
こちらも、キヨヒメに負けず劣らず、迫力満点!
{帰らぬむかしーぃが、あーあ、なつかしいー}
それにしても、女は恐い!
そんな恐い女相手に、恋を仕掛ける男どもよ、中途半端な姿勢を正 して、生命を賭けて恋の一本道を突っ走ろう!
恋などは 己れがするもの 仕掛けるもの
他人(ひと)のことなど お役に立たぬ
ち ふ
つづく