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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
サヤカのヘッドライトに当てて、よく見ると、どうも失神しているようだ。そのまま、ポケットに入れ帰ってきた。帰る途中、このまま文明生活に溶けこまして、急激な変化を与えると病気にでもなりはしないかと思ったので、また丘に引き返した。脚の太さほどの朽ち木をマムシの恐怖に耐えて2本ほど捜し持ち帰ることにした。オレの家のささやかな庭の隅において、しばらくはそこに住まわせてやろうと思ったからだ。
家に着いて朽ち木を庭の隅においた。またまた、サヤカの給油口を開けて、
{ご き お ー ら ー っ} と、そっと呼んでみた。夜中なので声がよく響く。人に聞かれてもまずいが、ヤツには届かねばならない。4~5回呼び掛けると、のそのそとやってきた。
{ドッさん、こんな雨の夜中に何してるの?}
{しーっ、これ} ポケットから、ゴキOさんを取り出す。
{ドッさん、何したんだ!!}
おおっ、恐っ! コイツでも、怒る元気があったのか。オレは、かいつまんで話す。いい事をして恨まれていりゃ世話はない。ゴキオーラがヒゲで10回も撫でると、彼女は気がついた。やっぱり、ヤツラの世界はヤツラでなければわからぬ。
{ゴキOさん、気がついたか?} オレは、最後の詰めをした。
{ははーっ、あなたさまの言うことなら、何でも聞きます。オッさん神 さまっ}
手を合わせてオレを拝んでいる。
ゾゾー。気色わるー。
{では、今日からここで暮らせ。あそこに住まいも作っておいた。神 などになるなど下らない考えは捨てて、ゴキオーラと仲良く暮ら せ。わかったか!}
{はい。肝に銘じます}
ゴキオーラは、また元通りのおっとりとした顔に戻って事の成り行きをぽっかーんと見守っていた。ただ、ゴキOさんが、いとも簡単に帰って来たことが不思議でならないのだろう。このオレにしてもそうだ。こんなにうまくいくとは思っていなかったのだ。だが、こういう事もたまには起こりうるから人生は面白いのだ。
ゴキオーラたちを朽ち木に置いて雨よけの覆いをかけてやり、家の中に入った。
わっ!
Oさんが、アイロンをかけながらキッと睨む。
「夜中にうろうろして、何とも感じないの!」 聞き流すのみ。そのうち、わかってくれるだろうと楽観している。
「あのー。庭の隅に古い木置いているから、捨てんといてや」
「また、何始めるの!」
「ドン次郎の兜虫用の木だ」 Oさんの泣きどころ、猫可愛がりしているドン次郎をダシに使う。思わずぺろっと舌が出てしまった。
あーあ、疲れた。やること全て、こんな結果ばかりならいいんだけれど・・・
おわり