copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
平成はじめの頃です。
* プロローグ
他でもない。ワシが守り神をしてやっている流家に
異変が起こりつつある。
これは、一体どうしたことなのか?
ワシは、この異常な事態をわーぷろを使って記録することにした。
ワープロ。吾負櫓とも書く。もちろん、これはワシの当字なの。
ここで一つ、
ワシも文明の利器に負けたことにして、漕ぎいでることにしよう。
実際問題、キーを叩くのは骨が折れるわ。
文字の位置を覚えるにも一苦労だ。
艪三年に棹八年という諺もある。
辛抱、辛抱、何事も辛抱しなけりゃ、マスター出来ん。
ふーん、使ってみると、手書きよりは、はるかに楽だな。
しかしだ、こう便利なものが出来ると皆漢字を書けなくなるぞよ。
といっても、ギリシアの哲人、かのプラトンはんは、
人間が文字を発明したことによって記憶力が衰え頭が退化すると
嘆いていたような気がするなあ。
まあ画期的な文明に対しては、誰もが文句の一つも
つけたくなるのだろうよ。
これが何か言わずにおれないんだろうなあ。
一言こくのが、インテリのステータスシンボルとでも
錯覚を起こしているんだろうよ。
その点、ワシはインテリでも何でもない、単なる歳食ったごきぶり。
何でも叩いてやれだ。
こうしておけば、何かの役に立つかもしれないし、
クソの役に立たないかもしれん。
だが、これが書かずにおられるかい!
流家。別名、流極楽スペース。
主催者は、もちろん、あゆかさん。
40を少しばかり越えているが、そんなことは気にならない
魅力的な女性である。
女は一生のうち、ある特定の時期、輝くことがあるというが、
あゆかさんには、これがまったく当てはまらない。
どうしてか?
そう、彼女は輝き続けているのである。
これは、彼女の持つ脂質だ。
あっ違った。
ワープロ、打ち間違えた。
脂質だ!
こりゃ、何だ。これが、
学習機能を持つというワープロの欠点か。
まったく同じ字ではないか!
確かに、最近のあゆかさんは、太り気味である。
それにしても、ワープロの風多弄の奴め、
あゆかさんの一番気にしている脂肪ばかりを
強調してディスプレイしやがって!
おい、風多弄や、いい加減にしいや!
{これだから、困るんだよね。
ごきぶりのゴキオーラのじぃさんめ。
ロクにマニュアルも読みもしないで、
私の所為ばかりにして。まったくもって疲れるよ。
それに、このワープロ、休人さんのモノだろ。
勝手に触りまわって、休人さんの大事なデータ消しても知らないぞ。
だいたい、休人さんもドン臭いが、ゴキオーラは、
それに輪をかけたようなお人だから、ボヤいても仕方ないか。
ここで、簡単にゴキオーラのじぃさんを紹介しておきましょう。
じぃさんは、自称3.5億歳の御大である。
体長は、20cmあまり。
ごきぶりというより兜虫と呼ぶ方が相応しい。
あのごきぶり特有のテカテカ油光りがないのがいい。
黒光りのする貫禄あるごきぶりでもある。
お嫁さんの名は、ゴキOさん。
旦那に似合わず、上品なお人だ。
彼女、この間まで、奈良県は明日香村にある雷丘で
神さまになる修業をしていたのだが、
今はそういう高望みも一服したのか、落ち着いて暮らしている。
二人の住みかは、流家の飼い犬・コロの小屋の中にある。
娘が一人いて名前はリーブという。
この子は、大峯山で修業中の恋人エンオッズ君を
女人禁制の結界門のところで、千数百年前から
待ち続けているというしおらしい女性である。
まあ、千数百年前と言っても、これは人間時間のことであって、
ごきぶり時間に直せば、ゴキ2~3年ということである。
ゴキ1年とは、人間界の500年に相当するようだ。
じぃさんは、この子の話になると目がとろんとしてしまう他には、食うことだけが、楽しみのようだ。冷蔵庫あさりが趣味のようでもある。しかしあゆかさんは大のごきぶり嫌いときているものだから、彼女は、彼の存在にまったく気づいていない。特技と言えば、じぃさんは、透明になることぐらいは出来るようである。
まあ、3.5億年もかければ、そんな術の一つくらいはマスターしていても不思議ではないか。あまりじぃさんの邪魔してもいけないから、ここはしばらく静観することにしよう。
でもな、じぃさん、故障させるような荒っぽい使い方せんといてや。それにしても、休人さん、どうしたんだろう。最近、全然相手にもしてくれない}
あゆかさんの連れ合いというのが、休人。ワシの友でもある。友だから、悪口を言うのはよそう。それにしても、あゆかさん、何であんな男と結婚したんかいなあ。
休人は、会社員である。別にこれといった取り柄もない男だ。手足の短いところは、ワシと同類。顔もどちらかと言えば、ぶ男に近い。二人の間には、3人の子供がいる。
長女は、マイカさん。長男は、休太郎君。二人とも高校生である。1年と3年。次男は、小学5年生の休次郎ちゃんである。3人の子供は、夫婦のどちらにも似ていない。ただ、3人並べれば姉弟と分かるようである。3人とも、子供っ気の抜けない子供たちのようだ。
さて、誰のことから始めればいいのか。この流ファミリー、全員が全員何かおかしい。何がどうなったのだろう。やはり、ここはワシの好みで、あゆかさんのことから始めることにしようか。
つづく
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
平成はじめの頃です。
* プロローグ
他でもない。ワシが守り神をしてやっている流家に
異変が起こりつつある。
これは、一体どうしたことなのか?
ワシは、この異常な事態をわーぷろを使って記録することにした。
ワープロ。吾負櫓とも書く。もちろん、これはワシの当字なの。
ここで一つ、
ワシも文明の利器に負けたことにして、漕ぎいでることにしよう。
実際問題、キーを叩くのは骨が折れるわ。
文字の位置を覚えるにも一苦労だ。
艪三年に棹八年という諺もある。
辛抱、辛抱、何事も辛抱しなけりゃ、マスター出来ん。
ふーん、使ってみると、手書きよりは、はるかに楽だな。
しかしだ、こう便利なものが出来ると皆漢字を書けなくなるぞよ。
といっても、ギリシアの哲人、かのプラトンはんは、
人間が文字を発明したことによって記憶力が衰え頭が退化すると
嘆いていたような気がするなあ。
まあ画期的な文明に対しては、誰もが文句の一つも
つけたくなるのだろうよ。
これが何か言わずにおれないんだろうなあ。
一言こくのが、インテリのステータスシンボルとでも
錯覚を起こしているんだろうよ。
その点、ワシはインテリでも何でもない、単なる歳食ったごきぶり。
何でも叩いてやれだ。
こうしておけば、何かの役に立つかもしれないし、
クソの役に立たないかもしれん。
だが、これが書かずにおられるかい!
流家。別名、流極楽スペース。
主催者は、もちろん、あゆかさん。
40を少しばかり越えているが、そんなことは気にならない
魅力的な女性である。
女は一生のうち、ある特定の時期、輝くことがあるというが、
あゆかさんには、これがまったく当てはまらない。
どうしてか?
そう、彼女は輝き続けているのである。
これは、彼女の持つ脂質だ。
あっ違った。
ワープロ、打ち間違えた。
脂質だ!
こりゃ、何だ。これが、
学習機能を持つというワープロの欠点か。
まったく同じ字ではないか!
確かに、最近のあゆかさんは、太り気味である。
それにしても、ワープロの風多弄の奴め、
あゆかさんの一番気にしている脂肪ばかりを
強調してディスプレイしやがって!
おい、風多弄や、いい加減にしいや!
{これだから、困るんだよね。
ごきぶりのゴキオーラのじぃさんめ。
ロクにマニュアルも読みもしないで、
私の所為ばかりにして。まったくもって疲れるよ。
それに、このワープロ、休人さんのモノだろ。
勝手に触りまわって、休人さんの大事なデータ消しても知らないぞ。
だいたい、休人さんもドン臭いが、ゴキオーラは、
それに輪をかけたようなお人だから、ボヤいても仕方ないか。
ここで、簡単にゴキオーラのじぃさんを紹介しておきましょう。
じぃさんは、自称3.5億歳の御大である。
体長は、20cmあまり。
ごきぶりというより兜虫と呼ぶ方が相応しい。
あのごきぶり特有のテカテカ油光りがないのがいい。
黒光りのする貫禄あるごきぶりでもある。
お嫁さんの名は、ゴキOさん。
旦那に似合わず、上品なお人だ。
彼女、この間まで、奈良県は明日香村にある雷丘で
神さまになる修業をしていたのだが、
今はそういう高望みも一服したのか、落ち着いて暮らしている。
二人の住みかは、流家の飼い犬・コロの小屋の中にある。
娘が一人いて名前はリーブという。
この子は、大峯山で修業中の恋人エンオッズ君を
女人禁制の結界門のところで、千数百年前から
待ち続けているというしおらしい女性である。
まあ、千数百年前と言っても、これは人間時間のことであって、
ごきぶり時間に直せば、ゴキ2~3年ということである。
ゴキ1年とは、人間界の500年に相当するようだ。
じぃさんは、この子の話になると目がとろんとしてしまう他には、食うことだけが、楽しみのようだ。冷蔵庫あさりが趣味のようでもある。しかしあゆかさんは大のごきぶり嫌いときているものだから、彼女は、彼の存在にまったく気づいていない。特技と言えば、じぃさんは、透明になることぐらいは出来るようである。
まあ、3.5億年もかければ、そんな術の一つくらいはマスターしていても不思議ではないか。あまりじぃさんの邪魔してもいけないから、ここはしばらく静観することにしよう。
でもな、じぃさん、故障させるような荒っぽい使い方せんといてや。それにしても、休人さん、どうしたんだろう。最近、全然相手にもしてくれない}
あゆかさんの連れ合いというのが、休人。ワシの友でもある。友だから、悪口を言うのはよそう。それにしても、あゆかさん、何であんな男と結婚したんかいなあ。
休人は、会社員である。別にこれといった取り柄もない男だ。手足の短いところは、ワシと同類。顔もどちらかと言えば、ぶ男に近い。二人の間には、3人の子供がいる。
長女は、マイカさん。長男は、休太郎君。二人とも高校生である。1年と3年。次男は、小学5年生の休次郎ちゃんである。3人の子供は、夫婦のどちらにも似ていない。ただ、3人並べれば姉弟と分かるようである。3人とも、子供っ気の抜けない子供たちのようだ。
さて、誰のことから始めればいいのか。この流ファミリー、全員が全員何かおかしい。何がどうなったのだろう。やはり、ここはワシの好みで、あゆかさんのことから始めることにしようか。
つづく