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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
平成はじめの頃です。
朝は、6時すぎに起きて、高校生二人の弁当づくりに、朝食の用意。それから、皆を起こしに回って、連絡帳の書き込み、休次郎ちゃんの着替え、誰かのアイロンがけに、もう髪を振り乱して、悪戦苦闘している。
そんなあゆかさんを横目に、他の家族は見て見ぬフリ。己のマイペースで動いている。何しろ、1対4なものだから、あゆかさんは大変だ。皆が、自分の持ち分をわきまえて、己の領分をきっちりと片づければ、あゆかさんにも少しは余裕というものが出来るように思うのだが、なかなかうまく切り替えが出来ていないようだ。
親は、子供はいつまでも子供と思いこむクセが抜け切らないのだろう。あゆかさんも、ちょっぴり悪いのだ。子供にかまいすぎるものだから、子供たちは、あゆかさんに頼り切ってしまうのだ。
人間世界のことは、よくは分からないが、子供がある年令に達すれば、手を抜いて突放すようにしなければならないのではないだろうか? それを、小さい時と同じように扱っているから、余計に自分自身に苦しめるんだ。
4人を送り出せば、後がまた大変。みんなパジャマをあちこちに脱ぎっぱなしである。それらをたたんで、食卓の上をみれば、これまた、ゴミの山、顔負けの世界。
ワシ、よだれが落ちそう。汚れも気にせず、ささっとみんなの残り物の欠片を朝食がわりにかきこんで、布団あげに、掃除、洗濯、買物とつづく。
買物が、また、みんなの頼まれごとでいっぱい。スーパーの売り場をうろつくこと、しきりである。買物から帰れば、もう昼すぎ。夕食の残り物で軽い昼食をすませ、夕飯の下ごしらえをする。あゆかさんは内職している。
今の時代3人もの子供を育てるのは大変でもある。教育費もバカにならないようだ。
長女のマイカさんの塾の費用だけでも、一家5人の米代をはるかに上回っている。ちなみに、塾の月謝は、16,000円らしい。
年にすれば、約19万円。米は、年間約250kg購入しているようだから、1kg600円としても、15万円にすぎない。
キロ600円もするぜいたくな米など、めったに買っていないから、実質はもっと少ないはずだ。米代が3分の1になったとしても、10万円浮くだけである。浮いた10万円で、何を買うというのだろう。
まあ、物価が安くなるのに越したことはないが、集団で安くなってもらわなくては意味がないということに気づかないのだろうか。それにしても、おこぼれを頂戴していればいいんだから、これほど気楽な生活もあるまい。
あゆかさんは、家計の足しにと頑張っている。エレクトーンの教師の免状を持っているから、近所の子を集めて教えているのだ。
休人は、70歳まで住宅ローンをかかえる哀れな奴だ。何も、そんなにしてまで、家を買うこともあるまいにと思うのだが、買ったものは今更言っても始まるまい。奴が、この家を買わなければ、ワシの居心地良い住みかも無くなるので、これぐらいにしておこうか。
あゆかさんの一日の続き見ることにしよう。
内職の合間を縫って、夕食の準備をする。終わるのは、8時すぎ。それから、夕食の最後の仕上げにかかる。8時半に、やっと夕食が始まるここで、揃うのは、2~3人である。クラブ活動や、残業で、みんなが五月雨式に帰ってくる。
だいたい、夕食の終わりは、9時半から10時ぐらいになる。夕食の後片付け、アイロンがけ、風呂に入れば、11時すぎとなる。ばたん、きゅーで一日が終わる。
そんな生活を送っているうちに、顔には縦横斜めバツ印のシワが増え、頭にはまだら雪のような白髪が蔓延り、地肌が顔を覗かせる歯が傷み、目が衰え、腹はたるんで、尻は膨らむ。もちろん、膚は伸びきり、弛みっぱなし。
足首や首には、ずどん肉がまとわり付いて、病気の2つ・3つも持って、心は萎び、男と女の境界をも忘れ、太ってゆく。
人間なんて、女なんて、哀れなもんだな。当然、ストレスは溜りっぱなし。これではあゆかさんといえども黙ってはいられまい。
けれども手の施しようもないものには、女は黙る。これは、女に限らないか。ワシらごきぶり族とて同じことかな?
しかし、あゆかさんは、根が明るいものだから、今までは、おかしくなるような気配は感じられなかった。実に、よくやると、ワシも感心して見ていたのだ。ぷっつんするのが遅すぎたくらいだ。
少々なら、ワシも見逃してあげてもいいのだが、このままでは、この家庭はめちゃくちゃになる。いや、もうこれは崩壊していると言ってもいい。
早く、元の家庭に戻してやりたい。しかしどうすればいいのだろう。
つづく
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
平成はじめの頃です。
朝は、6時すぎに起きて、高校生二人の弁当づくりに、朝食の用意。それから、皆を起こしに回って、連絡帳の書き込み、休次郎ちゃんの着替え、誰かのアイロンがけに、もう髪を振り乱して、悪戦苦闘している。
そんなあゆかさんを横目に、他の家族は見て見ぬフリ。己のマイペースで動いている。何しろ、1対4なものだから、あゆかさんは大変だ。皆が、自分の持ち分をわきまえて、己の領分をきっちりと片づければ、あゆかさんにも少しは余裕というものが出来るように思うのだが、なかなかうまく切り替えが出来ていないようだ。
親は、子供はいつまでも子供と思いこむクセが抜け切らないのだろう。あゆかさんも、ちょっぴり悪いのだ。子供にかまいすぎるものだから、子供たちは、あゆかさんに頼り切ってしまうのだ。
人間世界のことは、よくは分からないが、子供がある年令に達すれば、手を抜いて突放すようにしなければならないのではないだろうか? それを、小さい時と同じように扱っているから、余計に自分自身に苦しめるんだ。
4人を送り出せば、後がまた大変。みんなパジャマをあちこちに脱ぎっぱなしである。それらをたたんで、食卓の上をみれば、これまた、ゴミの山、顔負けの世界。
ワシ、よだれが落ちそう。汚れも気にせず、ささっとみんなの残り物の欠片を朝食がわりにかきこんで、布団あげに、掃除、洗濯、買物とつづく。
買物が、また、みんなの頼まれごとでいっぱい。スーパーの売り場をうろつくこと、しきりである。買物から帰れば、もう昼すぎ。夕食の残り物で軽い昼食をすませ、夕飯の下ごしらえをする。あゆかさんは内職している。
今の時代3人もの子供を育てるのは大変でもある。教育費もバカにならないようだ。
長女のマイカさんの塾の費用だけでも、一家5人の米代をはるかに上回っている。ちなみに、塾の月謝は、16,000円らしい。
年にすれば、約19万円。米は、年間約250kg購入しているようだから、1kg600円としても、15万円にすぎない。
キロ600円もするぜいたくな米など、めったに買っていないから、実質はもっと少ないはずだ。米代が3分の1になったとしても、10万円浮くだけである。浮いた10万円で、何を買うというのだろう。
まあ、物価が安くなるのに越したことはないが、集団で安くなってもらわなくては意味がないということに気づかないのだろうか。それにしても、おこぼれを頂戴していればいいんだから、これほど気楽な生活もあるまい。
あゆかさんは、家計の足しにと頑張っている。エレクトーンの教師の免状を持っているから、近所の子を集めて教えているのだ。
休人は、70歳まで住宅ローンをかかえる哀れな奴だ。何も、そんなにしてまで、家を買うこともあるまいにと思うのだが、買ったものは今更言っても始まるまい。奴が、この家を買わなければ、ワシの居心地良い住みかも無くなるので、これぐらいにしておこうか。
あゆかさんの一日の続き見ることにしよう。
内職の合間を縫って、夕食の準備をする。終わるのは、8時すぎ。それから、夕食の最後の仕上げにかかる。8時半に、やっと夕食が始まるここで、揃うのは、2~3人である。クラブ活動や、残業で、みんなが五月雨式に帰ってくる。
だいたい、夕食の終わりは、9時半から10時ぐらいになる。夕食の後片付け、アイロンがけ、風呂に入れば、11時すぎとなる。ばたん、きゅーで一日が終わる。
そんな生活を送っているうちに、顔には縦横斜めバツ印のシワが増え、頭にはまだら雪のような白髪が蔓延り、地肌が顔を覗かせる歯が傷み、目が衰え、腹はたるんで、尻は膨らむ。もちろん、膚は伸びきり、弛みっぱなし。
足首や首には、ずどん肉がまとわり付いて、病気の2つ・3つも持って、心は萎び、男と女の境界をも忘れ、太ってゆく。
人間なんて、女なんて、哀れなもんだな。当然、ストレスは溜りっぱなし。これではあゆかさんといえども黙ってはいられまい。
けれども手の施しようもないものには、女は黙る。これは、女に限らないか。ワシらごきぶり族とて同じことかな?
しかし、あゆかさんは、根が明るいものだから、今までは、おかしくなるような気配は感じられなかった。実に、よくやると、ワシも感心して見ていたのだ。ぷっつんするのが遅すぎたくらいだ。
少々なら、ワシも見逃してあげてもいいのだが、このままでは、この家庭はめちゃくちゃになる。いや、もうこれは崩壊していると言ってもいい。
早く、元の家庭に戻してやりたい。しかしどうすればいいのだろう。
つづく