
ある日、WOWOWの番組表(毎月送られてくる冊子)を見ていたところ、
連続ドラマで「マークスの山」という作品がフィーチャーされていました。
「警察小説の最高峰」、「直木賞受賞」、「このミステリーがすごい!大賞受賞」
など、色々心惹かれる宣伝文句がありましたが、
一番惹かれたのはあらすじの「北岳で白骨化死体が発見された」というところ。
自分が登った山が舞台の話なら、是非読んでみたい
ということで早速アマゾンで注文。
ドラマの方も豪華キャストで面白そうだったので、
並行してみてみることにしました
登場人物が多いので、WOWOW冊子掲載の人物相関図がとても重宝して、
キャストの顔を思い浮かべながら読むと大分わかりやすくなりました
で、読んでみた感想。
思ってたより北岳やその他の山の出番が少なくて少々がっかり
でしたが、作品としてはとても面白かったです
最初は犯人像がわからないまま警察の視点で描かれていきますが、
そのうち犯人側の視点に変わって、
事件の全体像が明らかになるにつれ、ぐっと作品の世界に引き込まれて行きました。
ドラマ版は、やっぱりテレビ向けでドラマチックに仕立て上げられていて、
それはそれで面白かったですが、やっぱり原作の方が内容は濃かったです。
一番のカギとなる犯人水沢の狂気。
ドラマ版では幼少期から母親に虐待を受け、
母親に心中で殺されかけ、
さらにその母親をMARKSに殺されたことを知って、
復讐としてMARKSを追い詰めるという動機がありましたが、
原作ではそんなものはありません。
一番の犯行の動機は、
刑務所服役中にチンピラが楽しそうに自慢していた恐喝話。
1日で福沢諭吉を500枚手に入れたその男があまりにも楽しげに
ヒャハハと笑っていて、それなら自分も福沢諭吉を手に入れたら
暗い山から解放されて、楽しい気分になれるのではないか、
さらに福沢諭吉が1万枚もあれば、その男よりもっと楽しい気分を味わえるのでは、
という、本当に狂気から芽生えたものでした。
そのなんとも不条理な動機が、逆に作品の魅力になっていると思いましたが、
ドラマではちゃんと理由があって、同情を誘う設定まであってちょっと不完全燃焼。
あとはキャスティング。
犯人水沢から接触を受けた写真週刊誌の記者根来が女性に化けたばかりか、
背景設定など原作とかけ離れて準主役級の扱いになっていたり、
主人公合田の別れた奥さんが何度も登場して合田と接触していたり、
原作にはない女性色が強く加わっていましたが、
まあ原作どおりにすると硬質すぎて視聴率下がりそうだから仕方ないでしょうか。
作品の宣伝文句に「警察小説の最高峰」とありますが、
確かに細かな部分まで描かれていて、とてもリアリティがありました。
警察内部や検察との権力抗争。
上からの圧力で思うように捜査ができない刑事たちのフラストレーション。
読んでいて一緒にイライラさせられました(笑)
すごく硬質な文体&世界観で、てっきり作者の高村薫を男性だと思っていましたが、
姉妹編?のレディー・ジョーカーを購入したところ、
著者近影に写っていたのが女性だったのでとても驚きました
山の話も予想より少ないながらもちゃんと出てきて、
MARKSたちが登った北アルプスや南アルプスの山はもちろん、
そのルート上に実在する山小屋や表銀座等の登山ルートも描かれていて、
警察の事情と共に、しっかり取材したんだな~というのが窺えました。
因みにドラマ版で気になった北岳登頂シーンですが、
なんか登った時の雰囲気と違うよね、と母と話していたところ、
山頂の標識を見てやっぱり北岳でないことが判明。
私のブログに北岳山頂の標識2種類の写真を載せていますが、
そのどちらでもないタイプの標識でした。
インタビューでも標高2,300mの山で撮影したとあるので、
やっぱり日本第二位の標高を誇る北岳での撮影は無理だったようです。
でも登山の雰囲気はよく出ていました。
総じて、直木賞&このミス大賞受賞の納得の
とても読み応えのある作品で大満足でした
一度読んだだけではつかみ切れなかった部分もあるので、
日を置いて再読したいと思います
主人公合田が登場する姉妹作レディー・ジョーカーも購入して
現在読み途中なので、そちらも読了後に感想を載せます
↓↓
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マークスの山(上) 講談社文庫 |
高村 薫 | |
講談社 |
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マークスの山(下) 講談社文庫 |
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