夜、喉が渇いたので、ヘミングウェイバーを覗く。(相変わらず飲めもしないのに、ずうずうしく)カウンターに陣取り、バーテンダーさんと話をする。
彼曰く、フランスではバー文化はいま一つ理解されていないのだそうだ。ここ10年程は以前に比べるとカクテルに対する人気も出てきたけれど、お酒を混ぜて飲むことに対する抵抗は大きいらしい。確かに、某国の成金がボルドーの一級ワインをコーラで割ったという批判を聞いたことがあると言ったら、彼からは、なんと、あのロマネコンティ様をウォッカで割った人が居るという話を聞いて、流石に仰天した。
カクテルにはカクテルの美味しさがある、ということを日本人は良く理解しているし、良く勉強している、と言っていた。また、東京のバーで撮影したアイスボールでロックにしたスコッチウィスキーの写真を見せて、バーテンダーがこれを作るのだ、といったら酷く驚いていた。彼らにとっては、この球形の氷は機械で作るものらしい。ちなみにここヘミングウェイバーでも、奇妙なプラスチックの容器からアイスボールが生まれる瞬間を目撃した。
日本人は、細部にわたるこだわりがあり、本当に優れたものを見抜く努力を怠らない点が素晴らしい、と言ってくれた。私にとってはフランスこそ、ワイン、チーズといった食材から、フランス料理、菓子、皮革製品、ガラス器、陶器、銀器、絹織物、ファッションブランド、と数え上げたらきりがない程の分野において職人技が芸術の域に達しているSavoir faireの国なのだけれど。
ランチがかなり重かった私達は、8時過ぎてようやくBarにでも入ろうか、と言う気持ちになり、RitzのBar Hemingwayに向かった。Ritzと聞くと、構える方もいらっしゃるかもしれないが、このBarはかなりカジュアルだ。音楽も含めて。スピーカーはなかなか立派なものだけれど、クラシックな感じというよりはモダン。それから、チェイサーが洒落ている。お水にレモンを入れるのはよく見かけるけれど、ここはクランベリーのようなものが入っている。握りこぶし程度の少しずんぐりとしたグラスに水と氷と赤くて丸くてかわいらしいクランベリー、悪くないと思う。
ParisのBarではミニハンバーガーが人気なのだろうか。Park Hyatt Vendomeにもあった。私は生春巻きを注文。普通の生春巻きだけれど、巻いてある野菜の刻み方にRitzを感じる(?)。とても細くて綺麗な千切りだった。お酢の味は、日本のものとは違ったけれど、ヨーロッパの普通のワインビネガーとも少し違うような気がした(普段私の口には入らないような高級ビネガーだったのかしらん?)。
Bar Hemingwayは2つの場所から成り立っていて、一つは少し狭くてカウンターがメインでその周りにいくつかテーブルと椅子が置いてある、BarらしいBar(何と乏しい表現力)。もう一つは小さなカウンターとソファの席が余裕を持って置かれている、いかにもホテルのバー。狭いほうのバーは一杯で少々賑やか過ぎる気がしたので、もう一方に入ってみた。外国からのお客様(Ritzの滞在客?)が多いようだった。聞こえてくる言語は英語に少しフランス語が混ざる程度。あとは、若い男性の単独客を複数見かけた。彼らは待ち合わせか何かのように、暫く周囲を見回したりして、少しだけ滞在し、いつの間にやら消えていた。誰と、どこへ行ったのだろう。。。Barにいるとついつい自他の人生について思いをめぐらせてしまう。