Gustavo with LA Phil。サントリーホール第2夜。
マーラー:交響曲第9番 ニ長調
Gustavoのマーラー 9番は以前Gothenburg Symphonyとヨーテボリで演奏した時と、今回と同じくLAフィルとバービカンで演奏した時の2回を聴いているのでこれが3回目。全体の仕上がりとしては今回が一番細部にまで神経が行き届いていたように思う。
最初のホルンがちょっと高い?と相変わらず出だしは気になったものの、そのうち引き込まれていった。
第二楽章の舞曲、今日もGustavoは指揮台の上で踊る。
それぞれの楽章にマーラーはどんな思いを込めたのか。いつの時代を反映したのか。少し狂ったようなデフォルメされたような表現と思わなくもないが、しかし、あの時代のウィーンとは、そんな雰囲気を持っていたのではなかったか?
第四楽章の圧倒的な美しさ。少しも恥じらうことなく、その美しさを前面に押し出してくる。フローレスな演奏。それゆえに一つ間違うと生きる日々を肯定できなくなりそうな、そんな演奏に聴こえた。
最後の音が消えた後、Gustavoは祈るように動きを止め脱力をしない。真面目な日本の聴衆は固唾を飲んで指揮棒を持つ手が緩む瞬間を待っているし。もう、最後はほぼ我慢大会。リストの時代なら、失神者が出ても不思議ではない長さ。実際私も失神寸前であった。
Gustavoをはじめとして、演奏者、そして聴衆、お互い全てを出し切った感あり。不思議な演奏会だった。
Gustavo with LA Phil。一夜目の今日は
- J. アダムズ:Must the Devil Have All the Good Tunes? 〈日本初演〉
マーラー:交響曲第1番 ニ長調 「巨人」
アダムズ、これも暗譜なのね。すごいGustavo。ま、世界的指揮者と自分を比べる方がどうかしている。
後半は、マーラーの交響曲第1番。
第一楽章。出だしは、トランペットのありえない事故で始まった(あれは事故よね?)。バンダのトランペットよ、何があった?そしてバンダトランペットの音は、もう少しちゃんと聴こえても良かったのでは無いか?と頭の中をぐるぐるしてしまう。
しかし、その後の歌い方のなんと美しいことか。思ったよりテンポがゆっくりな気がする。前からこんな演奏だったかしらん?第一主題は滔々とした流れのようにゆったりと。そして第二主題からは持ち味のキレの良い演奏に。Gustavoが腕をぐるぐるさせるのに合わせてオケが加速する。あー、こういうオケが欲しいんですよね、佐藤先生!
第二楽章。低弦渾身のリズム。そしてワルツ。Gustavoは指揮台の上で踊っている。あら、ちょっと体の線が締まったんじゃないかしら?La valseを聴きたし。
第三楽章。ティンパニの憂鬱なリズムの上にコントラバスの独奏。昔、Gustavoがドイツだったかオーストリアだったか公開リハーサルで「Please, I’m hungry〜」とやって聴衆を沸かせた場面が蘇る。ロスフィルに説明をするときにあの話をしたのだろうか?
第四楽章。第三楽章の最後、くるくるくるくる、で、シンバルがばしゃ〜ん!弦さすが、プロは違うなー。あれがちゃんと弾けるんだ〜(当たり前)。リズム感が素晴らしい。指揮にぴったり合ってるし!Gustavoがどんなに揺らしても、腕をぐるぐるして加速しても、一糸乱れず付いてゆく。見習いたい。佐藤先生、本当にごめんなさい!
この、青春の真っ只中のような曲。しかし、明後日がマーラーの9番と知っている身としては、明後日には死んじゃうんだよ、君。。。みたいな。
大興奮の中で終わる、Gustavo & LA Phil第一日目。流石に明後日はこういう訳には行かんであろう。。。どうせなら、今日家人と来たかった。
Gustavo & LA Phil 2日目は、バーンスタイン&ベートーベン。
Leonard Bernstein
Chichester Psalms
Ludwig van Beethoven
Symphonie n° 9 "Hymne à la joie"
最初のバーンスタインを歌ったJohn Holidayの声が優しくてチャーミング。こんな声が出たらどんなに楽しいだろう?
後半の第九は、昨日同様、速い、速い、速い。その速さ無理!Vn奏者もいっぱいいっぱいに見えるんですけど(自分の投影?)。第4楽章のセカンドヴァイオリンの重音、弓順はうちのオケと一緒、なんて思いながら観察。
ソリストたちは「どや!」な歌い方で、なんとなく気に入らず。しかし歌を歌う家人に聞いたら、第九を歌うと、どうしても「どや!」になるらしい。もっと謙虚に歌ってくれよ、一番すごいのはBeethovenだし。
第九のあとはスタンディングオベーション。見えないので我々も立つ。
終了後、友人とお茶。ソロでフルートを楽しむ友人に、オーケストラプレーヤーは歯車と一緒というような趣旨のことを言われて、納得できず。じゃあ、あのフルトベングラーのブラームス交響曲第1番の冒頭のティンパニの揺らぎはどうよ!と言ってみるが、あれは(&フルトベングラーは)素晴らしいけれど、と皆で弾くヴァイオリンは部品!みたいな。いや、そんなことはない、我々は指揮者と通じて、音楽を具現するのだと、昨日の曲ではないが、一般人はスコアみただけでは音楽を頭の中で再現できないではないか!と。
まあ、そんな話ができる友人のいることは、ありがたいことである。
Pollux (commande du Los Angeles Philharmonic, Barbican Centre Londres) (création française)
Edgar Varèse
Amériques
Dmitri Chostakovitch
Symphonie n° 5
ショスタコ(フランス語ではショスタコの綴りってCで始まるのね。。。)、早い。早い。早い。第四楽章、絶対にあんなに早く弾けない。fffからppに落としたときの、残響の美しさが、さすがPhilharmonie。
アンコールはワーグナー。フランスの聴衆がこんなにお行儀が良いなんて知らなかった。アンコールだし、指揮者が脱力するまでなんて待たないだろうな、と思っていたら、みんなちゃんと残響が消えて、指揮者が脱力するまで耳をそばだてて演奏を聴いていた。見直したよ、フランス人。
気がついたら夜11時を回っていた。素晴らしい演奏をありがとう!明日の第九も楽しみ!!
昨日に引き続き、Gustavo & VPO。今日の会場はGrimaldi Forum in Monte-Carlo。
大変に素晴らしい席を用意していただいたものの、到着してみると、昔の「市民文化会館」然としたホール。座席や絨毯もケバケバしていて、どれだけ吸音されるだろうかと心配になる。
集まる人々。今日のモナコはよく晴れて、暖かいのに、ロシアでも要らないのではないかと思うようなゴージャスな毛皮、耳から落ちるのではないかと心配になるような巨大な宝石でできたイヤリング、クロコダイルのエルメスのバッグ・ピアノ(音楽会だし!)。見ているだけで目の保養。
さて、演奏。昨日と同じプログラム。マーラーの交響曲第10番 Agadioとベルリオーズの幻想交響曲。
ヴィオラの静かなメロディーで始まる、「Adagio」。。。だから静かにしてほしいのに、咳の輪唱が始まる。しまいには、1st Vnのおにいさん思わず吹き出す。観客もブーイング。誰かの携帯の着信音、ピロピロピロ〜♪
ゲルマンの曲をラテンの国で聴くことが間違っているのか。こんなにいい曲で、こんなに素晴らしい演奏なのに。。。
後半の幻想交響曲。相変わらず咳の輪唱止まらず。もう、こういうものだと諦めるしかないのか。今度咳をしたら、断頭台に送ってやる!みんな一緒に幻想交響曲の登場人物にしてやる!!と思えてくる。
ホールを心配したけれど、昨日に比べて、管楽器の音もクリアに聞こえる。幻想交響曲って、ただ聞いても面白いけれど、今度ちゃんとスコアを見ながら聴こう。これまで、どれだけすっ飛ばして聴いていたのかと反省する。
舞台裏のオーボエやカリヨンも、昨日よりタイミングが合っている感じ(今日は舞台が少し広いからか、指揮の正面にカメラが備え付けてあるのが見えた。昨日は、録音用マイクは多数下がっていたけれど、カメラはなかった)。
今日も弦楽器を始めとする奏者のプロ意識は十分。この運動神経の良さというのだろうか、反射神経の良さというのだろうか、素晴らしい。こんな風に幻想交響曲を弾けたらどんなに素晴らしいだろう。ベルリオーズもびっくりではないか?彼の見た白昼夢が、目の前でより生き生きと展開する、どんな反応を示すだろう?
隣でスマホをいじっていた、土地の名士らしいおぢさま、曲が終わるなり、素晴らしい!とか言っているし。聴いてたんかい?と突っ込みたくなるが、ラテン人は器用なのかもしれないな。ブラボーの嵐と拍子から手拍子へ。
ウィーンではなかったアンコールは、バーンスタインのDivertimento for Symphonic Bandからワルツ。Gustavo & VPOはよくこれをアンコールに使う。。。いろいろ思いのつまった曲だけれど、そろそろ違った風に聴けるような気がしてきた。良い兆候だ。