Que ma vie est belle!

私とは、美しいもの、美味しいもの、楽しいものの集合体。

世界の宝-ジョシュア・ベル、ベートーベンVn協奏曲@ロイヤルフェスティバルホール、ロンドン

2010-03-31 00:00:00 | コンサート

待ちに待った、ムーティ指揮、独奏ジョジュア・ベルでベートーベンVn協奏曲。あまりに期待しすぎていたので、逆に不安だったが、流石ジョシュア・ベル、素晴らしい演奏を聴かせてくれた。

第1楽章と第3楽章の自作のカデンツァ-ヴァイオリンでこんなことが出来るなんて!彼の指はどうなっているの?と思わず覗き込んでしまう。私が弾いている楽器も、確かヴァイオリンとか言ったような気がするけれど。。。人生は不条理だ!と叫びたくなる。

ジョシュア・ベルのテクニックは素晴らしい。へたれた音もほとんど無い。指を離した時に開放弦の音がするとか、そいうことが気になる程度だ。しかし、彼をこれほどに有名にしているのは、やはり「歌心」というか、その「セクシー」といってもよいメロディの歌い方にあるのではないか、と私は思っている。第3楽章の122小節目からのメロディは心の琴線が震えっぱなしである。特に142、144小節の装飾音など、苦しくなるほど美しい。

昔のチャイコフスキーVn協奏曲(2005年にDeccaからリリースされたもの、新しい2006年のBPOとのものではない)の色気に通じるものがあったように感じられて、最近、イージーリスニング系に走り、色気を感じない演奏が多いのかと心配になっていたので、とても嬉しかった。やはり、彼を有名にした演奏会を指揮したムーティとは相性が良いのだろうか。

Il est tresor du monde。4月のウィグモアホールでの演奏会が益々楽しみである。

後半はムーティ指揮で同じくベートーベン交響曲第3番「英雄」。数日前に亡くなり、明日お葬式というオーケストラの元団員(コントラバス奏者)に捧げられた。お気の毒ではあるけれど、ムーティ指揮の英雄を捧げられるなんて、なんてラッキーな人なのだろう!

ムーティは流石イタリア人だけあって格好良い。現代の帝王と呼ばれるそうだが、迫力も満点。殿(ドュトワ)と同じ「お前弾け」的な指揮なのだが、迫力が100倍くらい違う。スタイルも良いし、見ていて飽きない-ああ、後半はコーラス席から演奏を聴きたかった。。。

譜面を使っていることにはちょっと驚いた。指揮をする間は眼鏡を掛けていたはずなのに、曲が終わって挨拶に振り向くと、あら、もうない。邪魔なのか、おしゃれを気にしているのか?

それにしてもベートーベンって、本当に天才だと思う。素晴らしい曲だ。本当に今日の演奏を捧げられた元楽団員、羨ましい。。。


本当の豊かさ@ブルゴーニュ、フランス

2010-03-28 23:45:00 | フランス

友人の友人が住むブルゴーニュ地方の小さな村へ週末出掛けた。朝一番のユーロスターでパリへ入り、友人とGeorge Vで朝食、お昼にもう一人の友人と待ち合わせて、車でブルゴーニュに向かう。

お天気は晴れと曇りと雨を繰り返す感じ。高速道路に入ると、広々とした平野が広がり、雲が流れてゆくのが良く見える。晴れ間が覗いたと思うと、黒い雲と嵐がやってくる。でも暫くするとまた晴れ間が覗く-と言った具合。

友人宅に着くと、先客が。その方を含め5人で早速ランチ。烏賊のトマト煮、根セロリのステーキ、マッシュポテト。根セロリのステーキがとても美味しい。セロリは葉の部分は少々香りがきつすぎて、ポトフなどにしか使わないが、根セロリはほんのりセロリ特有の香りがして、食欲をそそる。合わせるワインは勿論シャブリ。蜂蜜の香りがするでしょ?といわれたが、私には日本酒と通じる味に思われた。

先客の方が帰られた後、夕飯と翌日用の買出しに出かける。2~3分で歩き終わってしまうHigh street(?)に肉屋、乾物屋、パン屋がある。パン屋のお姉さんは無愛想だがパンは美味しい。また、大きなパリブレストも購入。乾物屋のお兄さんはとてもいい人だった。肉屋のおじさんも、よそ者の私達にとても良くしてくれた。

買い物の途中で、Dance Macabre(死の舞踏)の壁画が残るという教会に立ち寄った。元々の歴史は11-12世紀に遡る、という由緒ある教会で、天井などは木の素朴な梁だった。地震の多い日本では、こんな建物は残れないだろう。

夕食は、肉屋で購入したFromage de tete、パテに続き白身魚をアイオリソースで。これに蒸したニンジン、蕪(のようなもの)、ジャガイモが付け合せ。シンプルで素材の味が堪能できる。ゲラントの塩がこれまた美味しい。この後はフランスであるから、勿論チーズ。シェーブル2種とブリ。デザートは先ほど購入したパリブレスト。

食事の後はワインを飲みながら、暖炉の前で延々とおしゃべり。これは翌日の朝食後、昼食後も続いて、音楽、インターネット(Facebook)、比較文化、地震・津波と社会、宗教、秘密結社、異国に暮らすこと、勿論ゴシップ、と果てしなく続いた。

朝食は、友人達はタルティーヌ、私はパリブレストの残り。そのままおしゃべりに突入し、暫くして昼食の準備にとりかかる。昼食は鶏のロースト。小ぶりの鶏肉を丸ごとハーブとともにロースト。塩とオリーブオイルをかけて頂いたら幸せな味だった。懐かしいマイユのフランボワーズビネガーがあったので、勝手にドレッシングをつくりサラダを供す。昼食は相当美味しくて、私も良く食べたし、いつもあまり食べない友人がお代わりをしていて微笑ましかった。

気がつくと時計は16時半。18時には出発しないといけないので、それまで散歩。雨が多く何が出来たわけではなかったけれど、友人と暖炉の前でおしゃべりをしたり、春が萌し始めた野原を歩いたり、これが本当の豊かさなのではないか、と思った週末だった。


Simon Trpceski (Pf), Robin Ticciati, LSO@バービカン、ロンドン

2010-03-26 00:30:00 | コンサート

Robin Ticciati指揮、LSOでシベリウス、TrpceskiのピアノによるグリーグPf協奏曲他を聴いた。

Ticciatiは1983年生まれというから、今年27歳という若いイギリス生まれのイタリア系指揮者である。新たな才能を発掘に!と出かけたが、少々期待が大きすぎたかもしれない。King Kristian IIでは、特に最後のバラードのあたり、指揮からみえてくるものと聴こえてくるものが異なるように感じられて、ちょっと違和感があった。

2曲目がグリーグのPf協奏曲だったが、ここでピアノを奈落から迫にのせて舞台に上げた。隣のおじさん、かなりユーモアのある人で、「演奏が悪かったら、レバーを引くと奏者が奈落に落ちるシステムなんだよ」と説明してくれる。

今回実は最前列、指揮者の斜め前の席だったが、ピアニストの手の動きが非常に良く見えて面白かった。Pf協奏曲をここから聴くのは相当楽しい。キーシンのような超一流のピアニストの演奏をこの席から聴いてみたいものである。

ところで演奏。残念ながら折角の「劇的Pf協奏曲」なのに、全然盛り上がれない。ミスタッチは少ないように思われたが、何かが違う。

会場からはブラボーも飛んでいた。隣のおじさんも「良かった、レバーを引く必要が無かったよ」といっていたが、私にしては「そして誰も居なくなった」レベルに思えていた。

今、ディヌ・リパッティによる同曲を聴きながらこれを書いている。勿論古い演奏で、元のテープの歪みによると思われる音の揺れもあるが、第2楽章の音の美しさといったら-これ以上何を望むというのだろう?

ま、たまにはこういう不完全燃焼な演奏会があっても止むを得ないか。。。


マーティン・フロスト、クラリネット@ウィグモアホール、ロンドン

2010-03-23 23:30:00 | コンサート

ルツェルンからの帰り、ヒースローエクスプレスの中でファイナンシャルタイムスを読んでいたら、ウィグモアホールでのマーティン・フロストというクラリネット奏者の演奏会案内が出ていた。ルツェルンで上手なクラリネットを聴いたところだったし、写真も素敵だったので(動機不純)、軽い気持ちでチケットを取った。

「カリスマ的クラリネット奏者」とファイナンシャルタイムスには書いてあったけれど、そんな謳い文句はたいていのソリストが掲げるもの、と相当見くびっていた。

が、始まってびっくり。音が美しい。まるで無から無限大までの音が出せる。特に「無から」の部分が美しく、何かの音が聴こえる?と思っているうちにクラリネットの音が目の前に現れるのは何度聴いても圧巻。テクニックもすごい。長い指をピンと伸ばして、物凄い速さでそのまま指を曲げることなく動かしトリルを紡ぎだす。

「上手なクラリネット」の比ではない。クラリネットって、こういう楽器だったのだ!今まで聴いていたクラリネットって、一体何だったの?くらいの衝撃がある。

ピアソラの曲などは色気もたっぷり。終わったとたんに会場からため息が漏れた。また自作の曲(ハンガリーやクレズマー民謡を編曲したもの)は、彼自身の特徴を余すところ無く見せるために作られた曲。これはもうアンコールのノリで、最後の音が消えきらないうちに拍手と口笛とブラボーが飛んだ。

アンコールには、クラリネットを吹きながら歌を歌う、という不思議な試みや(会場からは笑いが漏れていた)、フロストがアヴェマリアのアルペジオを吹き、会場がメロディをハミングする、など、教育者としての一面も覗かせていた。

今日の演奏会ではさまざまなリズム(=ダンス)の曲が演奏されたこと、彼がスウェーデン人でスカンジナビアでの活動が盛んであることから、グスタボと組ませたい!とすぐに思ったのだが、果たして家に帰って彼のサイトを見てみると、2011年にグスタボ&ヨーテボリ交響楽団との演奏会が既に予定されていた。ま、皆考えることは同じなのである。絶対に聴きに行こう!と今から鼻息の荒い私である。


ドゥダメル&シモン・ボリバル・ユースオーケストラ@KKL、ルツェルン

2010-03-20 23:00:00 | Gustavo Dudamel

ルツェルン・フェスティバル、イースターコンサート第2日目。ドゥダメルとSBYOV。昨日のコンサートも決して悪くは無かったけれど、やはりこの組み合わせに勝るものはない。

 

1曲目はチャイコフスキー「フランチェスカ・ダ・リミニ」。この曲、彼らのCDにも入っているし、何度も聴いているのだけれど、あまり好きだと思ったことが無かった。しかし、こうして生で聴くと、素晴らしい。クラリネット、上手い、花丸をあげよう。

ああ、今日チャイコフスキーを招待できなかったのが残念だ。チャイコフスキーもこの演奏を聴いたら、自分の作った曲がどんなに素晴らしかったか改めて気づくのではないかしら(Wikiによれば「迫力のないつまらない作品」と後に述べた、とあるが、絶対に意見が変わったことだろう)。ドゥダメルが昨年4月にロンドンで「チャイコフスキーはベネズエラの作曲家」といったことを再び思い出す。

 

2曲目はおなじみ、アルプス交響曲(この1年、ドゥダメルの指揮で3回目だ)。ドゥダメルは本当に賢い人だと思う。アルプスのお膝元でアルプス交響曲。「お祭り」だけあって、おそらく普段クラシックを聴かない人も多いのだろう。カウベルが鳴ると、くすくす笑いが会場のあちらこちらから漏れる。オルガンが鳴ると、オルガン奏者の居る場所を指差す人が居る。こういう人達に、SBYOVの演奏は心に響くことだろう。

 

演奏者達が、自分の持てるすべてを出してドゥダメルの指揮に応えようとする様は、観ていて気持ちが良い。今日の木管は素晴らしかった。ホールの素晴らしさが花を添えていた。ベルリンのフィルハーモニーを髣髴とさせる残響感がある。金管の出だしは多少へたれていた部分も散見されたが、真剣な目で指揮を追い、髪を振り乱して演奏している彼ら-指揮者と演奏者の間のこの「信頼感」を見ているだけで、演奏会に来た意義を感じる。

 

演奏会の後、花束を持って楽屋を訪れた際、フェスティバル関係者がとても良くして下さった。ドゥダメルに、「今日の演奏会にチャイコフスキーとR.シュトラウスを招待したかったですね」というと、嬉しそうに微笑んでハグしてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 


アバド&シモン・ボリバル・ユースオーケストラ@KKL、ルツェルン

2010-03-20 00:30:00 | コンサート

ルツェルンのイースターコンサート、第一日目はアバド指揮、シモン・ボリバル・ユースオーケストラ。プロコフィエフ、ベルク、チャイコフスキー。

プロコフィエフはなかなか楽しかった。もともとお茶目な感じが好きな作曲家。ホールの素晴らしい響きも手伝って、音とは波動であり、エネルギーを持つものだと良くわかる。一方ベルクは、全くもってよくわからなかった。歌手の「叫び」の部分の楽譜がどうなっているのか見てみたい、とは思うが。

チャイコフスキーは交響曲第6番。想像通り、第3楽章が終わったところで拍手をする人が居た。いつもだと、「なぜここで拍手するかなぁ~、少しくらい予習してきてよ」と思ってしまうのだが、この熱演と、フェスティバルという性格上いつもクラシックを聴いている人ばかりが集まっているのではないことを勘案すると、止むを得ないかな、と、逆に「シーッ」とやっている人に対して、そんなことをしなくても、第4楽章は始まっているし、皆わかるのに、と思うのであった。

アバドとSBYOV-勿論、アバドは素晴らしい指揮者であるし、演奏をリードしているのは彼なのだけれど、エネルギーの流れ、という点ではSBYOV→アバドだと確信する。昨年彼をベルリンフィルで見たときには、病み上がりのおじいちゃん、だったが、今日はSBYOVからエネルギーをもらったからか、足が長くて格好良いし、彼の若い頃は相当凄かったのだろうと思って見ていた。

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ホテルと会場の間は湖を渡る船を利用した(画面右下の黒い建物がコンサート会場のKKL)。知り合った上流婦人達のフランス語会話を聞いていたら、皆昔からのアバドファンだということがわかった。昔のアバドは格好良かったのだろうなぁ。私も30年後くらいに、こんな風にドゥダメルの昔話をしたいものである(といっても、彼は30年経っても還暦を迎える前だから昔を懐かしまれてもいやがるだろうが)。


パレス・ルツェルン&Jasper@ルツェルン、スイス

2010-03-19 17:00:00 | ホテル

スイスには湖畔に美しい街々が点在する。ルツェルンもその一つ。チューリッヒから電車でも車でも約1時間。今回の宿泊先パレス・ルツェルンは以前インターラーケンで泊ったヴィクトリア・ユングフラウグループに属し、またThe Leading Hotels of the Worldのメンバーでもある。

お天気が大変よく、部屋の準備ができるまでテラスでスパークリングウォーターなどをいただくが、暑い。日焼け間違いなしである。ああ、ノースリーブの夏服でもよいではないか、という暑さ。しかし、日陰はひんやりしているので、夕方は寒くなるだろう。

部屋は、今回もUpgradeとのことで、湖側のジュニアスイート。スイスは本当に風光明媚な街が沢山ある。

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外は相当に暑いが、部屋の中はひんやり。

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ホテルのメインレストランJasperはミシュラン1つ星を持つ。ヨーロッパのミシュラン星付は、時々がっかりすることもあるので、少々警戒するも、予定上今日昼食を食べておきたい、と思い予約をする。予約の時間を少し遅れて到着すると、お客が1組しかいない-ちょっといやな予感である。

6品~9品というコースと、ビジネスランチがある、というので、迷わずビジネスランチを選択。前菜にほうれん草のスープ、メインはSea bassのナスリゾット添え。アレルギーのことを伝えながら、大丈夫かなぁ、と心配になる。時々「胡椒アレルギーなんです」というと、味が全く無い料理を運んでくる店があるのだ。

さて、こうして始まったランチ。アミューズブーシュはサーモンとアスパラガスのマリネ。プレゼンテーションも美しい。味も申し分ない。期待してよいのだろうか。お腹が空いているからだろうか?

ほうれん草のスープ。酷いお店にゆくとスープは貧しさ120%というものが出てきたりするが、なかなかどうして。見た目が美しいだけでなく、美味しい。一瞬「ベーコンで出汁を取っている?」と思い質問すると、スモークオイルだという。スモークの香りを、スモークしたベーコンの味と取り違えたのだと納得。

メインのシーバス、茄子のリゾット添え。出てきたときに、これは!と思った。単純にフライパンでソテーしただけなのだが、それが非常に綺麗なのである。オムレツがきちんと出来ている店では料理が美味しい、と確信できるのと同じ確信だったと思う。魚も非常に鮮度が高く質の良いものだ。日本の一つ星のお店で食べるのと同じかあるいはそれ以上。リゾットもお米はしっかりアルデンテ、細く切られたライムの皮が入り、スパイスが丁度良い塩梅で使われ、洗練された地中海風料理である。

シェフはイタリア人なのかと尋ねてみたら、ドイツ人なのだそうだ。ま、才能に恵まれた人は人種を問わず居るということだ。それにしても嬉しい驚きのランチであった。

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天使と悪魔-ティル・フェルナー@ウィグモアホール、ロンドン

2010-03-19 00:30:00 | コンサート

パリ-ルツェルンのお遊びウィークに中1日ロンドンへ戻った理由は、ティル・フェルナーのベートーベンソナタシリーズがあったから。今回は9番、10番、8番「悲愴」、11番、26番「告別」。

10番がとても良い出来。天使ティルが鍵盤の上で優しく美しい音楽を軽やかに奏でる。第2楽章の終わり方がとても印象的で、思わず会場から拍手が。いつもは「ええい、曲の途中で拍手するな!」と思うのだが、これは拍手が出てもやむをえないか、という感じ。

有名な8番、出だしのAndanteは非常にゆっくり。一方、Allegroになるところからは「速度違反」なくらい早くなった。ちょっと指が追いつかないか?と思わなくもなかったが、意図は読み取れる感じがした。10番がティルの中の天使の部分ならば、ここは彼の中に住まう悪魔が音符の間から見えてくるかのようであった。

8番の中でも特に有名な第2楽章。まるでビリー・ジョエルの「This night」を歌っているのではないか?と思うような唇の動き。この前半の10番と8番が素晴らしい出来だった。

ペダリングに特徴があるような気がした。刷り込まれているバックハウスとはかなり違う。ウィグモアホールにあるピアノのうち古いスタインウェイを使用したのは、響きすぎて音がぼけるウィグモアホールの欠点をカバーするためだったのか。どういう意図でこちらを使ったのだろう。次回の最後のソナタではどちらのピアノを使うのだろう。また、場所によって音符と音符の間に間を置くのも面白い。それで音楽が途切れることがないように感じるのは、その「間」が必然というように思えるからなのだろう。日本画の中の空白のように。

今回の天使と悪魔の同居を聴いて、益々彼にシューベルトの遺作ソナタを弾いて欲しくなった。ま、その前に6月のベートーベンの最後のソナタ3曲の演奏会があるので、まずはそれを心待ちにしよう。

会場からの暖かい拍手に応えて、ソナタ20番をアンコールに。ソナチネアルバムに載る易しい曲ではあるけれど、まさか繰り返しも含めて全曲弾くとは。彼の本領はこういう優しい曲に現れるような気がする。見た目もとても優しい感じだからそう思うのか?でも、なぜかショパンやシューマンとかいうのではない、3B系が合っていると思ってしまうのは不思議。


ラインの黄金@オペラバスティーユ、パリ

2010-03-17 00:30:00 | オペラ

友人との待ち合わせが夜の10時となったため、何か演奏会でも、と調べてみるとオペラバスティーユで「ラインの黄金」が。ワーグナーのオペラとしては短くて、丁度10時前頃に終わるのも良い、と軽い気持ちで行ってみた。

大変な人気で、席を購入したとき最後の2席の1つだった。前から3列目、中央より少し下手。思っていたよりずっと舞台も見やすく、勿論歌手の表情も良く見えるが字幕が見づらいのが難点。

演出は非常に現代的。ラインの乙女達の衣装(?)はなかなか刺激的。神話の世界にあっても、建築現場で働く若者達は労働者風だ。

黄金を巡る争いは、なかなかすさまじい。指輪を奪うために、アルベリヒは指を切断され、ファーゾルトは金の延べ棒で頭をカチ割られ。欲望がとどまるところを知らないのは、人間の世界だけではない(なんて、神話の世界を借りて人間の世界を語っているに過ぎないが)。

誰かの歌が非常に上手いわけでも、演出が非常に美しいわけでもないが、全体としてまとまっていてよい出来だったように思う。「ラインの黄金」はあくまでもイントロダクション。この後、どんな演出になってゆくのか、結局シリーズ全部を見たくなってしまう。ああ、日本に比べれば半分程度とはいえ単価の高いオペラはやめよう、と思ったばかりだったのに。相変わらず意思の弱い私である。


ホテル・フーケッツ・バリエール@パリ

2010-03-16 20:00:00 | パリ

今回のパリの宿泊先は、フーケッツ・バリエール。スパでのトリートメントと朝食がついて?606だったので、リッツの朝食付き?600も考えたが、とりあえず経験まで泊ってみることにした。

到着すると、マネージャが挨拶に来る。また、チェックインは部屋で、バトラーが来て行う。と書くと大層に聞こえるかもしれないが、まあ、新しいホテルの試み、というレベルで、どうということはなかった。

お部屋はジュニアスイートにアップグレード。6階(日本でいうところの7階)の窓からは、エッフェル塔も見える。

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浴室がなかなか。TVもついているし(鏡の中に移っている黒い四角い部分)、シャワールームは別にあり、かなり広い。しかし、今回朝3時までリッツで飲み、朝は8時から友人と朝ごはんを食べる約束をしていて、少しも部屋に居なかった。残念!

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トリートメントはアロマか指圧(?)といわれていたが、数日前から顔の皮膚が乾燥していたことを伝えると、フェイシャルのモイスチャライジングコースに変更してくれた。これはありがたかった。残念ながら大好きなスチームルームは改装中で使えず。。。

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ルームシューズがかわいい。また、クリーニングのサービスも高いけれど迅速で質が高い。流石、パリ。

次も泊るか、といわれると-パークハイアットやここのような、かゆいところまで手が届くサービスを目指します、設備は近代的です、駅近で便利です、は悪くはない。それでもなぜかリッツを-いつもパーフェクトからはかなり遠いサービスを提供する-リッツを私は選んでしまう気がする。朝ごはんが美味しいからだろうか?

多分それだけではない何かがあそこにはある。不思議だ。