待ちに待った、ムーティ指揮、独奏ジョジュア・ベルでベートーベンVn協奏曲。あまりに期待しすぎていたので、逆に不安だったが、流石ジョシュア・ベル、素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
第1楽章と第3楽章の自作のカデンツァ-ヴァイオリンでこんなことが出来るなんて!彼の指はどうなっているの?と思わず覗き込んでしまう。私が弾いている楽器も、確かヴァイオリンとか言ったような気がするけれど。。。人生は不条理だ!と叫びたくなる。
ジョシュア・ベルのテクニックは素晴らしい。へたれた音もほとんど無い。指を離した時に開放弦の音がするとか、そいうことが気になる程度だ。しかし、彼をこれほどに有名にしているのは、やはり「歌心」というか、その「セクシー」といってもよいメロディの歌い方にあるのではないか、と私は思っている。第3楽章の122小節目からのメロディは心の琴線が震えっぱなしである。特に142、144小節の装飾音など、苦しくなるほど美しい。
昔のチャイコフスキーVn協奏曲(2005年にDeccaからリリースされたもの、新しい2006年のBPOとのものではない)の色気に通じるものがあったように感じられて、最近、イージーリスニング系に走り、色気を感じない演奏が多いのかと心配になっていたので、とても嬉しかった。やはり、彼を有名にした演奏会を指揮したムーティとは相性が良いのだろうか。
Il est tresor du monde。4月のウィグモアホールでの演奏会が益々楽しみである。
後半はムーティ指揮で同じくベートーベン交響曲第3番「英雄」。数日前に亡くなり、明日お葬式というオーケストラの元団員(コントラバス奏者)に捧げられた。お気の毒ではあるけれど、ムーティ指揮の英雄を捧げられるなんて、なんてラッキーな人なのだろう!
ムーティは流石イタリア人だけあって格好良い。現代の帝王と呼ばれるそうだが、迫力も満点。殿(ドュトワ)と同じ「お前弾け」的な指揮なのだが、迫力が100倍くらい違う。スタイルも良いし、見ていて飽きない-ああ、後半はコーラス席から演奏を聴きたかった。。。
譜面を使っていることにはちょっと驚いた。指揮をする間は眼鏡を掛けていたはずなのに、曲が終わって挨拶に振り向くと、あら、もうない。邪魔なのか、おしゃれを気にしているのか?
それにしてもベートーベンって、本当に天才だと思う。素晴らしい曲だ。本当に今日の演奏を捧げられた元楽団員、羨ましい。。。