ヤニック・ネゼ=セガン指揮、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ピアノ独奏:アルド・チッコリーニ。2009年5月27日。ロンドン、ロイヤルフェスティバルホールにて。
Mendelssohn: Symphony 4 in A (Italian)
Rachmaninov: Concerto 2 in C minor for piano and orchestra
Dvorak: Symphoy 7 in D minor
Yannick Nezet-Seguin: Conductor
Aldo Ciccolini: Piano
London Philharmonic Orchestra
ラフマニノフになって、ピアニストが舞台に現れた。84歳、とは聴いていたけれど。隣の隣のおじさんが小声で、
Oh my God!
確かに。何しろ、足元の覚束ない御爺さんが登場したのである。
これで、あのラフマニノフの2番を弾くのか?
本当に?
本当だ。
ピアノの先生が「力を抜け」と言うように、おそらく力は不要なのだろう。84歳ですでに足が不自由にもかかわらず、何と美しい音か。
勿論、重音パッセージの早い部分や低音には問題が無いわけではないが、84歳でこれだけのことが出来るなんて、信じ難い。思わず背筋が伸びる。
第三楽章の最後、ピアノとオケがffになると涙がこぼれそうになった。彼は若い時、もっと上手かったはずだ。彼の技術曲線は下降して現在ここにある。私がこれから40年と少し努力したら、技術曲線が上昇し、彼の曲線と交わるだろうか?(無理だ、間違いなく)
後半を無視して、サインでも貰いに行きたかったが、友人はドボ7が好きらしく(後から知ったが)、結局おとなしく後半を聴いた。聴かなくても良かった、と思った。
ところが、友人とCD交換をして、帰ろうとすると、友人が「チッコリーニ」。
目の前に、背の高い男性に縋って歩く白髪の小さな御爺さん。
厚かましくもお願いしてしまった。
握手していただいた手は、とても柔らかかった。